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【進路コラム】「見えにくくなった就活」 筆者・法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎

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新年度を迎えて、学生たちが一挙に
キャンパスに戻ってきた印象を受けている。

新型コロナウイルスの感染状況は、
もちろん気を許せない状態が続いている。
しかし、大学は、
対面授業を積極的に実施するという方針で新年度にのぞんだ。
また、今年に関しては、
学内でのサークル等の勧誘活動を認めたことも大きい。
ガイダンス期間には、新入生だけではなく、
上級生たちもかなり集まり、
キャンパスは久方ぶりの賑わいを見せていたように思う。

こうした意味で、キャンパスは、少しずつではあるが、
コロナ以前の状態に戻ろうとしている。
しかし、そうした気配がいっこうに感じられないのが、
就活である。
2019年までであれば、4月のこの時期には、
キャリアセンターや企業説明会の会場(教室)などに
就活ルックに身を包んだ学生たちが大勢集まっていた。
しかし、今はそんな姿を見かけることはない。

こと就活に関しては、説明会にしても面接にしても、
最終段階を除いては、
すべてオンラインで実施するというスタイルが、
この2年間ですっかり定着した。
それを元に戻そうとする動きは、およそ感じられない。
採用する企業側にとっては、今のやり方のほうが手間がかからず、
効率的・合理的ということなのだろうか。

一方で、就職情報会社によれば、4月1日時点での
2023年卒の学生の内定保有率は、38%にのぼり、
昨年の同じ時期を10%も上回ったという報道もあった。
モニターを活用したサンプル調査なので、
どれだけ実態を反映しているのかは定かではない。
しかし、早期化がいっそう進み、
しかもそれが、水面下で進行していることは間違いない。

就活が見えにくくなってきている。
メディアも含めて大騒ぎしなくなったのは、
いいことなのかもしれない。
しかし、それは同時に、
困っている学生の姿も見えにくいということを意味する。
学生たちのキャリア支援に従事する立場としては、
穏やかな気持ちにはなれない。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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