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【進路コラム】「円周率ってご存知ですか」筆者・橋本光央

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突然ですが、π(パイ)ってご存知ですか。
π=3.1415926……。そう、皆さんご存知、円周率です。
では、円周率の求め方はご存知ですか。 

数学が得意な方なら既知のことだと思いますが、
簡単に説明すると、
●円周は、円に内接する多角形の周の長さより長く、
 円に接する多角形の周の長さより短い。
●多角形の周の長さは正確に計算できる。
●円周の長さは、外接多角形の周長と内接多角形の周長の間にある。
●この多角形の角の数を増やしていくと限りなく円に近づいていくので、
 円周の長さの近似値が求められる。
●この円周の長さと直径から円周率が求められる。
というワケです。
ちなみに、多角形の角数を無限にすると、
外接多角形と内接多角形が無限に近づくのですが、
決して重なることはありません。
だから円周率は無限なのです。

ここで、今や伝説と言われている試験問題を紹介します。
それは、2003年に実施された東京大学の数学です。
「円周率は3.05より大きいことを証明せよ。」

前段を読まれた方ならお分かりだと思うのですが、
「円に内接する正八角形の外周を、
余弦定理を使って計算(計算は省略)し、
円の直径と比較すると3.061…になります。これで、Q.E.D.」です。
でも、入試会場でいきなりこんな問題を見たらびっくりするでしょう。
たいていの受験生にとって円周率は3.14が当たり前です。
何の疑問も持っていないのに、
いきなり「それを証明しろ」って言われても、
どうしていいやら「?」、さぞやパニックに陥ったことでしょう。
まさに考える問題、今でいうところの「探究」の問題です。
でも、この問題は二度と使えません。
というのも、次にこの問題を見たところで、
単なる易しい問題に過ぎないから。

探究学習とは、
「自ら問いを立てて、それに対して答えていく学習」です。
そして「それを入試問題に取り入れる」ように、
文部科学省が頑張っていますが……。
どんなに頑張ってそういう問題を作ったところで、
問題は使いまわしができません。
なぜなら、2回目からは単なる知識問題になってしまうからです。
だから、たくさんの問題を作らないといけないのですが、
そんなに簡単に作れるものではありません。
なぜなら伝説の試験問題なのですから。
今や声高に「新しい教育」が叫ばれていますが、
今年の共通テストの問題を見ても、
やはりその場で考えて答えを導きだす問題を試験に取り入れるのは、
難しいのではないかと思います。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
2月15日刊行される光文社文庫『ショートショートの宝箱?』
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/
に天野大空『文豪コイコイ』が掲載されています。

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