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「東日本大震災からの教育復興」筆者・葉養正明

高校生のための進路ナビニュース

3か月すると東日本大震災から11年。
今年3月「あれから10年」を取り上げる各種メディアは、
港や道路、鉄道、建造物等の町の外形の復旧にこぞって注目してきた。
しかし、「被災」は人々の暮らし全体に及ぶもので、
鉄道、道路、河川、港、建造物等のまちの骨格、
あるいは経済等の復旧にとどまらず、
地域コミュニティ、人々の日々の生活や学習の復旧復興、
あるいは、心の世界の安寧の取り戻し等も含んでいる。
では、子育て・教育分野の復旧や復興、
あるいは、被災した子どもや家庭の生活や学習の復旧や復興は
「あれから10年」どう進んできたか。

筆者も加わったソーシャル・キャピタル研究のグループで、
大震災発生前(2007年)岩手県宮古市で
市立中学生対象の生活/学習環境の調査(科研費)を実施していたが、
宮古市も含む東日本沿岸部は2011年に大震災に見舞われた。
被害の大きさもあって、諸外国の支援も受けながら、
政府あげての震災復旧復興政策が打ち出された。
当時国立教育政策研究所に在職していた筆者は、
文科省による文教施設の被災や復興の実態調査や
学校再建等の業務に参加させていただいた。

その折、震災前に実施した中学生対象調査を
追跡調査として実施することを思いつき、
中学生の住まい等に関する設問を加えるだけにして、
ほぼ一回目の質問紙をそのまま活用し、
2013年に調査を実施した(科研費)。
さらにその後、2016年には震災後の復旧復興過程追跡のため、
三回目の調査を実施している(文教大競争的資金)。

以上の一連の調査から、
岩手県宮古市の場合の「あれから10年」が
教育分野でどうであったのかについての
いくつかの知見を得ることができた。
今年3月に「あれから10年」を特集した、
各種メディアの報道を教育面から補う知見である。
しかし、かなり大きなデータになるので、
本メールマガジンでは3回に分けることにし、
今回はその一端を示すにとどめる。

【プロフィール】
教育学専攻。
大学教員として43年間過ごし、現在は東京学芸大名誉教授、
国立教育政策研究所名誉所員、埼玉学園大学大学院客員教授。
社会変動の中の「学校と地域社会」を主テーマにしてきた。
国や地方の各種審議機関の委員等をつとめてきた。
単著は、『人口減少社会の公立小中学校の設計
―東日本大震災からの教育復興の技術』(協同出版)、
『小学校通学区域制度の研究―区割の構造と計画』(多賀出版)、
『よみがえれ公立学校』(紫峰書房)その他。

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