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「人をつくる教育を考える―江戸時代の事例から(その8)」 筆者・内藤徹雄

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このシリーズではこれまで、
江戸時代に各地に存在した藩校それぞれの特徴について
採り上げてきました。
今年3月の(その2)では、
埼玉県行田市(忍藩)で開催された、
藩校サミットについてご紹介しました。
今年11月にはコロナ禍で1年延期になった、
第18回藩校サミットが栃木県壬生町で開催されます。

藩校サミットとは、
江戸時代の高い教育水準が日本の近代化に大きく貢献したことから、
藩校の理念や伝統を現代に活かそうという試みの
歴史的イベントです。
この活動は東京の湯島聖堂を拠点に、
漢字文化の普及活動を行っている漢字文化振興協会の主唱で、
毎年各地で開催されています。

さて、蘭学の町としても知られる壬生は、
江戸時代半ば以降160年にわたり、
壬生藩(鳥居氏3万石)の城下町で、
歴代藩主の奨励によって、
藩校学習館を中心に学問の盛んな土地柄でした。
11月20日(土)に開催の藩校サミットは、
「鳥居家三君に見る人づくりの精神」をテーマとして、
壬生城跡に建つ城址公園ホールで行われます。

藩校の儒学教育の伝統を汲んで、
現在、壬生町では論語を教育に取り入れる試みが行われています。
町内の小学生は論語の語句を抜粋しまとめた、
『壬生論語古義抄』の素読を実践し、
ほとんどの子供たちは暗唱できるまでになっています。
素読とは、意味内容は後回しで、
音読し暗唱することから学び始める方法です。
音読と暗唱を通して論語の言葉が自然に身につき、
成長とともに意味内容を理解するようになる素読教育は、
時代を問わず通用する優れた教育方法であると思います。
また、幼い頃から論語を学ぶことは知育のみならず、
徳育面でも有用な教育効果が得られると考えられます。

壬生町では、一昨年秋に「藩校サミット」に向けて、
ギネス世界記録に挑戦する「町民千人の論語大朗誦大会」が
城址公園ホールで開かれました。
33歳から93歳までの町民が一丸となって論語を高らかに朗誦し、
審査の結果、
「同時に孔子の言葉を暗唱した最多人数」として
ギネス記録を樹立しました。
来月開催の藩校サミットでは、
参加者全体による論語の朗誦がおこなわれる予定です。
ご関心のある方は、
第18回全国藩校サミット壬生大会実行委員会事務局(壬生町立歴史民俗資料館内)、
電話0282-82-8544までお問い合わせください。

【プロフィール】
1944年 福井県生まれ。
東京外国語大学スペイン語科(国際関係課程)卒業。
太陽神戸銀行、さくら銀行(現、三井住友銀行)で
20年あまり国際金融業務に携わる。
その後、さくら総合研究所(現、日本総合研究所)エコノミストを経て、
名古屋文理大学教授、共栄大学教授・副学長、
神奈川大学客員教授を歴任。
専門は国際経済、国際金融。
現在、学校法人中央学院常務理事、共栄大学名誉教授、
松実教育総合研究所理事。

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