【進路コラム】「ナビ嫌い」筆者・橋本光央 更新日: 2021年10月30日
高校生のための進路ナビニュース
学生時代から30代くらいまで、私はドライブが好きでした。
だから休みがあると、いつも車を走らせていました。
でも、当時はカーナビなんてありません。
頼りは地図と道路標識のみです。
旅先は知らない道ばかりなので、いつもドキドキでした。
特に思い出に残っているのは、
はじめて一人で行った北海道です。
国道336号線を走っていたところ、道が悪くなり、
目の前に沼が広がってきたんです。
でも、国道が途切れているなんて思いもしなかったので、
「雨が降って、浅い水たまりになっているのかな」
くらいに思って、走り続けたところドボン。
沼に入り込んで、車が動かなくなってしまいました。
仕方がないので、車を置いたまま歩いて戻り、
最初に見つけた民家(牧場を営まれていた)に、
飛び込んで助けを求めました。
すると「ときどき、そんなやつがおるわ」
と笑いながらトラクターを走らせて、
沼から車を引っ張りあげてくださいました。
もう、感謝感謝でした。
あとで地図で確認したところ、
小さな文字で「夏場通行禁止」と書かれており、
よくよく見ると国道が1ミリくらい途切れていました。
いまも、私は旅先で車を走らせています。
でも、ナビが教えてくれるままに目的地に向かっています。
到着時間まで教えてもらえるので、とても安心です。
だけど、面白くないのも事実です。
というのも、車の運転が
単なる「移動手段」となってしまったからです。
昔、ドライブをしていたときは、
先がどうなっているのか分からないドキドキ感が
楽しかったのに、今では……。
最近の日本人は、
「結果が分かっていること」しかしなくなりました。
旅行のときにも事前にチェックをして、
旅先ではそれを確認するだけ。
不慮の事故が起こることがないので、
安心感をもって旅行することができます。
これは、旅行に限ったことではありません。
仕事も勉強も何もかも、
「できる」と分かっていることしかしなくなりました。
だから、失敗をしなくなったのですが……。
でも、私は思います。
「結果が分からないからこそ、面白い」、
「結果を得るために頑張るから楽しいんだ」と。
「こうすればこうなる」という線路の上を走っていれば、
安心・安全、効率的に最短の道で目的地に着くことでしょう。
でも、決してそれ以上のものを得ることはできないのです。
私は、先のことが分からない楽しさが好きです。
だから、結果が分からないからこそ、
それに対して努力する面白さを、
生徒たちには伝えていきたいと思っています。
みんな頑張れ!
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
日本SF作家クラブ公式ホームページやweb光文社文庫Yomebaにて
作品を無料公開中。
『人体縮小薬』橋本喬木|日本SF作家クラブ
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