進路ナビニュース

【考えよう!探究・SDGs】再生エネ設備をめぐる問題 それぞれの立場で

高校生のための進路ナビニュース

地球温暖化防止に向けて、脱炭素社会の実現が求められている。
そこで、二酸化炭素を排出する化石燃料に依存しない電力の確保に向けて、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの利用拡大を政府も進めている。

そのためには発電設備の設置が必要になるが、こうした施設の建築に対して条例で規制をかける自治体が増えている。経済産業省の調べでは、規制条例を定めた自治体はここ5年で5倍に増え、2020年3月時点で134の自治体に上る。全国の自治体の1割ほどに及ぶ。

規制をかける主な理由は、再生可能エネルギー施設に関連する事故や景観の悪化を防ぐためだ。実際に、「斜面に設置された太陽光パネルが大雨で崩落した」「太陽光発電設備の敷地内で雑草が生い茂っている」といった苦情が、地域住民から寄せられている事例もある。

たとえば、茨城県つくば市では土砂災害警戒区域などで再生可能エネルギー施設の設置を禁じている。
兵庫県や和歌山県は、一定規模以上の施設の設置には事業計画の提出を求めている。埼玉県川島町と大分県由布市では、景観を守る観点から、設置抑制区域を指定する条例を定めた。長野県上田市は、設置にあたり住民説明会を開催、さらに事業に関する協定を市長と結ばなければならない。

災害の発生・拡大や地域の魅力を守るための自治体の施策である。

一方、政府は2030年度に2013年度比で温暖化ガスの排出量を46%削減する目標を掲げ、電源に占める再生可能エネルギーの割合を36~38%に引き上げる方針だ。

脱炭素社会の実現は世界各国の課題である。

環境問題やSDGsに対する意識が高まるなか、再生可能エネルギーによる発電には賛成の人も多いだろう。ただ、この問題にかかわらず、いざ自分自身に直接的な影響が生じる範囲に話が及ぶと、拒否反応を生じるケースもある。現に、こうした施設が地域住民に歓迎されず、迷惑施設化している現状がある。

一つのことを実現するために、政府、自治体、設置者、住民など、それぞれの立場に目線を落として考えなければ、みなが納得のいく解決策は導き出せない。世の中にはこうした問題がたくさんある。社会を構成する一人の人間として、自分事として考える必要があるだろう。

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
【SDGs】に関連した他のニュースも読む

TOP