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【考えよう!探究・SDGs】「復興」とは 巨大防潮堤が守るもの

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東北地方を中心に2万2,000人あまりの死者を出した東日本大震災。
あれから10年が経ったいまも、被災地では「復興」に向けた努力が続けられている。
東日本大震災でとくに被害を大きくしたのが津波だ。
最大波高※1 10メートル以上、最大遡(そ)上(じょう)高(こう)※2 40メートルに及んだ津波は、すべてを流した。

過去以上の津波がこないとも限らない。
この悲劇を繰り返さないよう、復興工事の際に国が推し進めたのは防潮堤の建設だった。
総事業費約1兆円をかけた大規模工事。
岩手県・宮城県・福島県の3県で建設される防潮堤の高さは最大15.5メートル。
約600か所に及び、総延長は400キロメートル(東京-大阪間と同じ)になる。

防潮堤には津波の被害をおさえる効果がある。
津波を一時的にせき止めたことで難を逃れた人は少なくない。

海辺の景色は一変した。
高い防潮堤に囲まれ、内側から海を臨むことができなくなった地域。
地域住民がいなくなり、防潮堤の背後に人家が一軒もない地域。
海と分断され、仕事や生活を奪われた人々。

高い防潮堤を前にして、塀の中で生活しているような感覚だという人がいる。
そこにかつての集落の姿はなく、地域に根づいていた文化やコミュニティはなくなった。

新たな防潮堤で津波は防げるかもしれない。
街は新しくなったかもしれない。

それが「復興」なのか。
人や地域の営みにも視線を落とし、「復興」が意味するものを考えたい。

※1 波高:波の谷から山までの垂直距離
※2 遡上高:津波が陸に駆け上がった際の最大到達高度

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
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