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【考えよう!探究・SDGs】ハエにみる自然と人間

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病気を媒介したり、排泄物にたかったり、部屋や食べ物の周りを飛び回るハエ。身近にいる虫で人間から疎まれる存在の代表格だろう。自分の部屋を飛び回っていようものなら、この虫の存在意義は果たして、と思うこともある。ただ、調べてみると、その小さなハエであっても私たちの想像できないところで生態系の維持に貢献している。

ヌカカと呼ばれるハエがいる。漢字では「糠蚊」と書き「糠(ぬか)のように小さな蚊」であることが名前の由来で、体長は1~1.5mmと小さい。吸血されると非常に強いかゆみを引き起こす、やっかいな存在である。ちなみに、蚊はハエの仲間である。

しかし、ヌカカを必要とする植物がある。カカオだ。中央アメリカから南アメリカの熱帯地域を原産とする植物で、規則的な降雨と排水のよい土壌、湿潤な気候でのみ育つ。3cmほどの小さな白い花をつけ、果実はチョコレートやココアの原料となる。

ヌカカはカカオの花粉の媒介者である。小さな体で小さなカカオの花に入り込み受粉を助けているのだ。つまり、ヌカカが生態系に存在していなければ、カカオの木にも影響が及ぶ。カカオ豆の生産で生計を立てている人はその分の収入を失う。私たちはチョコレートを食べられなくなる。

ハエは多様な環境に適応する生き物であるため、人々の生活にも関わりが生じる。誤解している人もいるかもしれないが、多くのハエは人間に実害を及ぼすことはない。むしろ、利益をもたらしてくれるハエも存在する。自然は実にうまくその生態系が維持されるような仕組みになっている。人間はそこから恩恵を受けているのだから、まさに共生すべき存在なはずだ。人間の視点だけで自然環境をみるのは、地球規模で考えれば偏った視点である。

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
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