進路ナビニュース

【考えよう!探究・SDGs】トランスジェンダーのオリンピア 出場を巡る議論

高校生のための進路ナビニュース

東京オリンピックの開催が間近に迫るなか、あるトランスジェンダーアスリートの出場を巡って議論が巻き起こっている。

当事者はニュージーランド出身の重量挙げ選手ローレル・ハバード(43)だ。ハバード選手は1978年に男性として生を受けた。男子選手として国内のジュニア記録をもつほどの活躍をみせていたが、自身の性別への違和感から20代で引退。性別適合手術を受けたのち、30代後半に女性として競技復帰した。

国際オリンピック委員会(IOC)は2004年、性別適合手術を受けた選手に対し、新たな性別でのオリンピック参加を認めた。2015年からは手術を必須とせず、性ホルモンのテストステロン値などを出場要件に定めている。ハバード選手はこの基準を満たしているため、国際大会にも出場している。この度、東京オリンピックの出場権も獲得した。

「新時代の到来」「歴史的快挙」と、ハバード選手の出場を後押しする声がある一方で、「不公平」だと反対する意見もある。それは、トランスジェンダーやアイデンティティに対するものではなく、男性と女性の運動能力のちがい、身体的優位性に対してのものだ。

ベルギーのアンナ・バンベリンゲン選手は、ハバード選手と同じ階級の重量挙げ選手だ。彼女は、これまで性別的に男性として生まれ、男性として生きてきた人が女子スポーツに参加すれば、その身体的特徴がどれだけ優位に働くかは明らかだと主張する。同時に、ハバード選手が女性として出場することで、人生を変えるチャンスを失うアスリートもいると語る。

オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」のひとつとして、性的指向を含む「いかなる種類の差別」も禁じているが、競技における公平さもまた重要なのは言うまでもない。

ハバード選手がオリンピックに出場して競技する姿を世界はどうみるのか。メダルを獲得した場合、世界はどのように反応するのか。心と体の性が一致しない選手を男女どちらの区分で競技させることが公平なのか。

オリンピックという世界的イベントであるがゆえに、大きな議論になることが予想される。

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
【SDGs】に関連した他のニュースも読む

TOP