外国人労働者支援へ 大手コンビニチェーンの取り組み 更新日: 2021年7月26日
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大手コンビニエンスストアチェーンが自社店舗で働く外国人の支援に乗り出す。同社は外国人労働者の勤怠実績などを証明するデータベースを構築。就労実績や今後の収入を証明することで、日本で長く安心して働ける環境づくりを後押しする。IT技術など、将来の就職に役立つ技能の習得も支援。先進国で生産年齢人口の減少が進むなか、外国人材の確保が急務となっているためだ。
同社店舗ではベトナム、ネパール、中国からの留学生を中心に約3万7千人が働いている。4年前と比べて7割ほど増え、いまでは店舗運営に欠かせない存在になっている。業界全体では約6万2千人に及ぶ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年の新規入国留学生は前年比で6割減少。2022年度には留学生の従業員が業界で1万人ほど減少すると予測される。そこで、今後も人材を確保し続けるために本格的な支援が必要だと判断した。
同社は外国人労働者の生活面や人生設計の支援を行う一般社団法人を設立。求人情報や外国人向け家賃保証などを手掛ける5つの外部企業・団体が参加する。国籍やパスポート番号、留学先や店舗での就業状況、保有資格などを登録したデータベースをもとに支援を行っていく。
データベースには従業員本人の同意を得たうえで、金融機関や不動産業者などがアクセスできるようになる。留学生は日本人に比べてクレジットカードの発行や住居の確保に難しさを抱えるため、登録された情報で就労実績や今後の収入を証明することで、契約が円滑に進むようにする。従業員が国内で引っ越した場合、本人がデータベース上の連絡先や転居先を登録すれば、近隣店舗での仕事を紹介することも可能だ。
コロナ禍は留学生の就職市場にも影響を及ぼしている。観光業やサービス業がそろって採用活動を縮小した。ディスコ(東京・文京)の調査によると、2020年7月時点の内定率は31.5%で前年より約9ポイント低かった。
そこで同社は、就職に役立つスキルの習得による日本でのキャリア設計もサポート。全国展開する専門学校と連携し、プログラミングなどのIT技術や簿記などの講座を紹介する。従業員向けに独自の講座を用意したり、企業のインターンシップの仲介をしたり、様々なサービスを検討しているという。
日本の生産年齢人口は2015年までの20年間で約1千万人も減少した。政府は人材不足対策として外国人労働者の受け入れにシフトして、2019年には新たな在留資格「特定技能」を新設。飲食料品製造や農業などの14分野で長期間働けるようになった。しかし、特定技能制度の下で働く外国人労働者は2021年3月末時点で約2万2千人で、思うように広がっていない。
先進国間において外国人労働者の確保は将来の経済成長を左右する死活問題だ。すでに日本で働いている外国人のサポート体制を充実させることで生活や将来の不安を和らげることができれば、日本で学ぼうとする留学生をはじめ、多様な人材を呼び込むことができる。