【進路コラム】「予定調和」筆者・橋本光央 更新日: 2021年6月27日
高校生のための進路ナビニュース
誰が考えても「そうなるだろう」と思うことが、
予想通りの結果となることを『予定調和』と言います。
『水戸黄門』と言えばイメージし易いと思いますが、
ドラマや小説によくあることです。
ですが現実は違います、
予想を裏切る結果が訪れることも多いのです。
特にスポーツでは。
劇的な幕切れが訪れるかもしれないし、
凡戦で終わるかもしれない。
つまり、予想通りの結果にならないから面白いのです。
ところが最近の日本人は、
スポーツにまで最後に「感動ありき」の
予定調和を求めているように感じます。
よく「結果は必ずついてくる」と言われます、
「だから頑張れ」と。
ただ、この考え方の根本には、
予定調和思想があるのではないでしょうか。
そのため、単純に「頑張った→できる」
という図式になってしまうのです。
しかし、この「頑張ったら何でもできる」というのは、
精神論に他なりません。
まるで「心頭滅却すれば火もまた涼し」と同じです。
もしかすると、そういう考えが
日本のコロナ対策につながっているのでは。
つまり、「国民一人ひとりが頑張って自粛すれば、
コロナは収まる」と。
でも、結果は……。
予定調和はドラマの中で起きることで、
実際は上手くいかないことのほうが多いのです。
だから「頑張ったらコロナは終息するだろう」ではなく
「終息しないかもしれない」、
いや「終息しなかった場合にどうすればいいか」まで
考えておかなければならないのです。
そういえば自動車の免許更新の教習で、
『だろう運転は事故のもと。
かもしれない運転で安全運転』と教えられます。
「多分○○にはならないだろう」と
自分に都合よく考えるのではなく、
「もしかすると、いきなり前の車が止まるかもしれない」
というように、あらかじめ何かが起きた場合のことを
念頭において運転しなさい、と。
スポーツは、最後に感動するから素晴らしいのではありません。
時には、残念な幕切れ、虚しい結末、
無念や悔しさもあります。
いくら頑張っても思い通りにいかないことが多々あります。
でも、それも大切なのです。
そして、それを乗り越えることも。
いつの頃から日本という国は、
予定調和思想に囚われるようになってしまったのでしょう。
今回のコロナ禍を契機として、
生徒たちに、上手くいかなかった時に
「それを乗り越える強さ」を教えていかなければなりません。
そして、我々自身も!
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
日本SF作家クラブ公式ホームページやweb光文社文庫Yomebaにて
作品を無料公開中。
『キャッチボール』https://sfwj.fanbox.cc/posts/2236364