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【進路コラム】「進化論」筆者・橋本光央

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「天動説が打ち壊されて、
地球が宇宙の中心でなかった事を
無理に合点せしめられた時よりも、
進化論を知り、星雲説を想像する現代の吾等は……」
と、夏目漱石が『思い出す事など』の中に記しているように、
今では地動説も進化論も我々の常識となっています。

ところが、アメリカには
「猿から進化をして人間が生まれたなんてうそだ」
と言って信じない人が多いそうです。
また、未だに『地球平面説』を唱えている人もいるようで、
「『NASA』はヘブライ語で『騙す』という意味がある。
つまりNASAが発信する映像はうそで、全部CGだ」
などと言っています。
そういえば、「有人火星探査はでっち上げで、
極秘裏に地球のスタジオで撮影した」という設定の
『カプリコン・1』という映画がありました。

では、彼らがなぜ科学に反した
「とんでも学説」を主張するのかというと、
自尊心があるからです。
と言うのも、
とんでも学説を主張する人の中には少なからず、
社会生活をする中において、
「自分の評価が低い」「不当な評価をされている」
と思っている人がいるようです。
しかし、実社会では認められない人でも、
虚栄の世界で声高に意見を主張することによって、
存在感を示すことができます。
閉ざされたサークルの中で、尊敬される存在になれるのです。

それは「お山の大将」「井の中の蛙」に過ぎないかもしれません。
でも、小さなグループの中であっても、
一目置かれることによって自尊心は充たされます。
彼らにとって自尊心は大切なのです。
だから一番大切な自尊心を死守するために、
とんでも非常識に邁進してしまうのです。

そのため、そんな人にいくら説明しても無駄なことです。
彼らは自尊心をズタズタにされることを恐れているので、
自分の考えに同調する人以外の言葉に
耳を貸そうとしないからです。
確かに自尊心は大切です。
しかし、それが過ぎると
「傲慢」「尊大」「虚栄心」に変わってしまうのです。

ところで、「進化論を信じない」「地球平面説」は、
極端な話かもしれませんが、
視野が狭く、自分の考えに固執するあまり、
周囲の人の意見を受け入れられなかったり、
欠点を改善できない人って、意外と多いのではないでしょうか。
でも、もし「進化論」を信じることができるなら、
自らも「進化の道」を歩みたいものです。
なぜなら、成功する人というのは
「間違いを指摘された時にそれを素直に受け入れ、
自分のものとして実行できる人」なのだから。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
日本SF作家クラブ公式ホームページやweb光文社文庫Yomebaにて
作品を無料公開中。
『キャッチボール』https://sfwj.fanbox.cc/posts/2236364

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