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【考えよう!探究・SDGs】全米女子OP 国籍を考えるきっかけに

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ゴルフの全米女子オープンで笹生優花選手(19)が優勝を果たした。日本国内で注目を集めている彼女は日本人の父とフィリピン人の母を持つ。両国の国籍を保有し、この大会はフィリピンの選手として出場していた。東京五輪もフィリピン代表として出場する予定だ。

日本は一人にひとつの国籍しか認めない「国籍唯一の原則」を掲げている。同様の国は世界でも50か国程度と少数派です。いまではヨーロッパの主要国やアメリカなど、147か国が二重国籍を認めている。

「国籍唯一の原則」が世界の主流だった時代もある。戦時下では徴兵のために都合がよかったからだ。日本はくわえて、納税やパスポートの扱いといった点も、この原則を維持する理由にしている。

国際化が進むにつれて世界のスタンダードは変わった。笹生選手が国籍をもつフィリピンも二重国籍を容認している国のひとつである。国外で働き国内に送金してくれる国民は経済的に重要な存在であるとともに、本人やその家族にもメリットが大きいというのがその理由だ。

「国籍唯一の原則」を掲げる日本にも二重国籍の人はいる。正式な統計はないが、1985年以降に国際結婚した人の子どもが二重国籍になった前提で100万人程度いる推計だ。これは日本の「血統主義」とアメリカなどの「出生地主義」が関係している。血統主義は親の血統と同じ国籍を子どもが取得すること。出生地主義は血統にかかわらず出生した国の国籍が得られること。そのため、日本人夫婦の子どもがアメリカで生まれると両国の国籍をもつことになる。

日本の国籍法では、二重国籍をもつ人は22歳までにどちらかの国籍を選択しなければならない。22歳としているのは、成人してから2年間を熟考期間とするためだ。成人年齢が18歳になる2022年4月からは、国籍の選択時期も20歳までに早まる。笹生選手もいずれ国籍を選択することになる。

「国籍唯一の原則」の理由である兵役は、日本にはない。税金は居住国で納めるルールになっている。スポーツの世界ではそれぞれの競技で国籍と代表の扱いを定めている。

2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ。日本代表はさまざまなルーツをもつ多国籍の選手で構成されたチームだった。彼らがまさに「One Team」となってスクラムを組む姿は、多くの人の心を動かした。そこに選手の国籍は関係なかった。

「国籍唯一の原則」がもつ意義はなにか。個人のアイデンティティを決めるものはなにか。国籍とはなにかの議論が必要である。

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
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