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【考えよう!探究・SDGs】イギリスのEU脱退 英語を巡る議論

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2020年1月、イギリスが欧州連合(EU)から脱退した。これを機に、EUの公用語の1つである「英語」が、事実上の共通言語としてEU内で使われていることを巡る議論が巻き起こった。

EUは「言語は文化遺産」と捉え、多言語主義を尊重している。その主義を象徴するかのように、EUには24の公用語があり、公式文書の多くは24の言語に翻訳される。ただ、会議や非公式資料、記者会見などはその限りではなく、多様な議論が行われる議会は英語のみで行われる(EU加盟国は27か国。EUの公用語の数よりも加盟国の数のほうが多いのは、いくつかの言語が2つ以上の国で使われているため)。

EUの公用語については、以下のルールがある。
●EU加盟国は自国の公用語をEUの公用語として申請できる
●ただし、申請できるのは自国で第一公用語として制定している言語

EU加盟国で英語を自国の公用語にしている国はマルタとアイルランドの2か国である。ただ、両国は英語が第一公用語ではない(マルタはマルタ語、アイルランドはアイルランド語)。英語が公用語であるイギリスがEUを脱退したいま、EUに英語を公用語として申請した加盟国は存在しないことになる。そのため、英語を実質的な共通言語として使い続けることに警鐘が鳴らされているのだ。

主な理由に以下の点が挙げられている。
●EU圏内での英語のネイティブスピーカーはわずか1%程度にとどまること
●英語の得意不得意が交渉に影響を及ぼす可能性があること
●商業的な言語として認知されている英語を使えば、自ずと会議や交渉が商業的な視点に傾く懸念があること

言語を文化遺産と捉えるEUに加盟しているからこそ、加盟国は自らの言語に強いアイデンティティを見出しているはずだ。その加盟国がEU内で英語を使うもどかしさもあるだろう。一方、イギリスが脱退しなければ、EU内の共通言語として英語を使っていることに疑問をもたなかったかもしれない。改めて英語が一国の言語の枠を超えて、世界共通のコミュニケーションツールであると証明されたといえるのではないだろうか。

*今後、進路ナビニュースを通して、探究活動の一環として、社会や地域の課題解決をしていくためのテーマを発信していきます。
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