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「全国学生調査から」 筆者・小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

2019年秋に行われた文部科学省の全国学生調査は、
本調査を前に、試行第1回として実施され、
大学515校、約11万人の学生が参加した。
調査項目は、大学の授業内容、大学での経験、
学習時間を含む生活時間などとなっている。

本調査では、
大学学部別に調査結果を公表することになっている。
大学学部別の調査結果は、
これまで偏差値が重要な基準となっていた大学選びに際して、
新たな参考となる情報を提供できることが期待されている。
しかし、大学学部別に調査結果を公表することは、
大きな影響を与えることでもあり、
3回の試行を繰り返して調査を練り上げてから
本調査が実施されることになった。
今年度は11月頃に第2回が実施される予定で、
現在、第1回の結果にもとづき、準備が進められている。
筆者も第1回試行から委員として、その改定作業に取り組んでいる。

試行とはいえ、多くのことが明らかにされた。
そのひとつは、
大学生は授業には多く出席する(1週16時間以上が49%)。
しかし、
授業の予習、復習、課題にあてる時間は少ない
(1週5時間以下が67%)。
さらに、
授業以外の学習時間はさらに少ない(1週5時間以下が73%)。
これらは、以前から他の調査でも明らかにされてきたことである。
しかし、大学側の努力にもかかわらず、
2019年まで状況はほとんど変わっていなかったことになる。

コロナ禍によって学生生活は大きく様変わりした。
昨年9月のこのメールマガジンで紹介したように、
学生はオンライン授業で課題を多く課せられ、
自宅での学習時間が増えている。
来年度の調査は、今年度の1年生、
つまりコロナ禍の中で、学生生活を始めた学生を対象としている。
彼らが、これまでの学生とどのように異なるか。
日本の大学の将来を考える上でも、
たいへん重要な調査になる。
調査の概要や現在の検討状況は、
以下からダウンロードできる。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/chousa/1421136.htm

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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