「思い込み」 筆者・橋本光央 更新日: 2021年3月11日
いままで私は、
「的を得た」は間違った表現だと思い込んでいました。
「的は得るものではなく、射るものだ」って。
ところが、これは正しい表現だったのです。
というのも「要領を得た」という表現があるように、
「得る」には「上手く捉える」という意味があるからです。
そして「的」にも「物事の核心」という意味があるので、
「的を得た」は「物事の核心を捉えた」という意味だからです。
実際、2013年に刊行された『三省堂国語辞典』第7版では
「1982年の第3版にて『的を得る』は『的を射る』の誤りとしたが、
これを撤回し、おわび申し上げます」と、訂正しています。
ちなみに「的を射た」は、
「物事の核心を突く鋭い言動」に使うもので、
微妙にニュアンスが違っていたのです。
日本語は難しい。
ところで、思い込みって恐ろしいですね。
自信満々で間違えたことをしてしまいますから。
おそらく多くの人がそれで失敗し、
痛い目にあっているのではないでしょうか。
では、なぜそうなるかというと、人には自尊心があり、
自分が正しいんだと意地を張ってしまう“心”があるからです。
そして、一度「正しい」と思い込んだら、
もう「自分が間違っているかもしれない」とは思えない。
「オレが、オレが」という心が邪魔をして、
他人の意見なんて耳に入ってこない。
そう、「思い込み」とは「他人の話を聞かない」ということなのです。
では間違った思い込みを正すにはどうすればいいか、
それは「素直になること」です。
松下幸之助さんもおっしゃっています。
「素直な心で見るということが極めて大事だ」と。
自分の乏しい知識と経験だけをもって
「オレが一番」と思ってしまう人は、
それ以上の成長が望めません。
自分より凄い人がいることを認め、
素直にその話を受け止め、吸収し、学び、
自分のものにしようと努力をすることから、
より一層の成長が始まるのですから。
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫https://yomeba-web.jp/archive/archive-works/
にて作品を無料公開中。