進路ナビニュース

「友達を作るとは?」 筆者・小林英明(元都立高校進路指導主任・ 多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与)

学級担任のときの春、
クラス替え後の面談で、女子生徒が友達のいない不安を訴えた。
普段から落ち着いた大人っぽい発言や行動が見られるので、
確かに話の合う生徒は少ないかもしれない。
問題が深刻化する前に対応する必要があるので現状を確認。

私「今まで校内やクラスで話ができる人はいなかったのかな」
生徒「挨拶したり、授業やクラスのことを話したりする人は
何人かいますが、何でも親しく話せる人はいません」

状況が予想と違う。
何か困っているか尋ねると、
「今は特にありませんが、
友達がいないのはいけないことみたいなので……」と言う。
この生徒の問題は、
「友達がいないこと」ではなく、
「いないことを負い目に感じていること」だ。
しかも孤立してはいない。
ちょっと乱暴だがこの生徒なら通じると思い、私はこう言った。
「困っていなければ、いまは友達がいなくてもいいんじゃないか。
友達は作ろうとしてできるものじゃない。
もし困ることが起きたら力になるよ」

秋の修学旅行、
彼女は仲良しになった無口でおとなしい女子と自由行動に出かけた。
その後、二人はそれぞれ別の短大の保育科に進学した。
卒業後しばらくして街中で偶然出会ったとき、
「面談で先生から友達がいなくたっていいじゃないか、
と言われて気が楽になった」と言った。
仲良しの彼女とは時々会っていると続けた。
結局は友達、しかも親友ができた。

私の高校生時代はもちろん、
私の新人時代の生徒も積極的に
「友達を作る努力」などしてはいなかった。
集団の中で必要なコミュニケーションを取るうちに、
気の合わない者とは距離を置き、
気の合う者は近づいて「友達」となり、
その中から「親友」が生まれたものだ。

一方、最近の若者たちは
入学時、入社時等新しい集団に加わったとき、
早く友達を作ろうと躍起になり、
友達獲得に出遅れることを恐れる。
友達作り支援をするなら、
出遅れてしまったときの不安を取り除くことも含め、
自分のペースでの友達作りを支えることが大切だろう。

【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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