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「朝日新聞 無償化に対する大学の評価」 筆者・小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

朝日新聞と河合塾の共同調査である、
「ひらく日本の大学」(昨年9~11月、国公私立大学631校が回答)によると、
安倍政権で評価が最も高かった政策は、
低所得世帯向けの高等教育無償化(修学支援新制度)であり、
「大いに評価する」と「評価する」を合わせると69%にのぼった
(朝日新聞 2020年12月15日)。
具体的な回答としては、
「経済面の理由から進学を諦めていた若者を支援することができる」(鹿児島大学)、
「学生の支援策についてはかなり前進している」(東北地方の私立大)など、
成果として挙げる大学があった。
その一方で、短期間で制度設計し、
要件を満たさない大学や専門学校が対象外になるなどしたため、
「政策自体は評価できるが、導入時の混乱をなくすための説明が必要だった」
(関東地方の公立大)との回答もあったという。

筆者の側聞するところでも、
大学や専門学校の学生支援の担当者は、
2020年度からの新制度に加えて、
今回のコロナ禍に対する学生支援が次々と打ち出され、
相当混乱するとともに担当者の負担も大きかった。
施策に関しては、
こうした目に見えないところで時間とコストがかかっていることを、
考慮することが必要ではないか。

他方、「理念は合理的でも制度設計が不十分だったり、
掲げた目的と成果の間に因果関係があるのか疑問だったりする政策も散見された
(関西の私立大)」という。
制度設計の問題点については、
本メールマガジンでも繰り返して指摘してきた。
このため、3年後の制度の見直しに向けて、
奨学金の効果検証が必要となる。
しかし、このための予算措置はほとんど取られていない。
これが、エビデンスに基づく政策の重要な問題点だ。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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