「高卒採用は昔から『ジョブ型』?」 筆者・小林英明(元都立高校進路指導主任・ 多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与) 更新日: 2021年1月14日
読者の皆様、
2021年も昨年同様、
本コラムをご愛読のほどよろしくお願いします。
さて、経団連の中西宏明会長の
「一つの会社でキャリアを積んでいく
日本型の雇用を見直すべき」という提言が契機となり、
日本社会では伝統的な「メンバーシップ型雇用」から
欧米型の「ジョブ型雇用」にシフトしようという
大企業の動きが見られるようだ。
「ジョブ型」と聞くと私は高卒採用の形を連想する。
もともとこの言葉は「ジョブ型雇用」として使われるが、
これを「ジョブ型採用」と言い換えてみると
まさに高校生の就職である。
高校生の就活は、
一般的に「どんな仕事をしたいか」から始まる。
販売なのか製造なのか、
販売なら何を売るのか、どんな業態なのか、
指導する教員は、
志望企業よりも志望職種に重点を置いて
進路面談を始めるのが常である。
どのような仕事をしたいのか、
その方向性を考えてから企業の選択にかかる。
このような形になるのは、
高卒者が就く仕事の多くが
「スタッフ職(オフィス)」ではなく、
「ライン職(現場)」であることが大きな理由であり、
ここが大卒、特に文系の就職活動と大きく違う点である。
厳密にいえば「ジョブ型雇用」は、
募集する職務の知識や経験を採用時に求めるものなので、
高卒採用とは異なる。
しかし、職種を明確にした求人票を出し、
高校生もその職で働くことを希望して応募する点を見れば、
これも一つの「ジョブ型」であろう。
そこで誤解を避けるため「ジョブ型雇用」ではなく
「ジョブ型採用」の表現を使ったわけである。
この「ジョブ型採用」で就職を目指す高校生には、
大学生のような「企業研究」よりも
「職業研究」や「業界研究」のほうが重要になる。
また、専門学校進学希望者は当然として、
大学進学を考える高校生にとっても
「職業理解」は学問分野の選択時に大きな意味を持つ。
高校生は将来の仕事を小学生のように「夢」としてではなく、
「現実」として見なければならない。
彼らには進学、就職に関わらず、
できるだけ早い時期からさまざまな職業について
理解を深める指導が必要だろう。
【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。