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「第九」(受験生の皆さんへ) 筆者・橋本光央

「ジャジャジャジャーン」
と言えばベートーベンの交響曲第5番。
そして、これが「運命の扉を叩く音」に聞こえるから
『運命』と名付けられた、と言われています。

ところが、この「ジャジャジャジャーン」には
秘密があるのです。
というのも、ベートーベンは耳が悪かったことに関係します。
それで、ちょうど5番を書いていた頃に耳鳴りが酷かったため、
太宰が『トカトントン』を、芥川が『歯車』を書いたのと同じように、
ベートーベンも耳鳴りを譜面に書き記したのです、
「ジャジャジャジャーン」と。
その後ますます耳の調子が悪くなり、
交響曲第9番、いわゆる『第九』を書いた頃には、
ほとんど聞こえなくなっていたそうです。

その『第九』ですが、副題に『合唱』と付されており、
第4楽章に詩人シラーの『歓喜に寄す』が用いられています。
そして、実はここにも秘密があるのです。
というのも、元々シラーは「歓喜」ではなく
「自由に寄す」と書いていたからです。
どういうことかと言うと、
この時代はフランス革命の影響が
欧州全土に広がっていた時期で、
貴族から自由を勝ち取ることを目指して戦っていた時代だからです。
なので、シラーは最初『Freiheit(自由)』と書いていたのですが、
当局から睨まれることを恐れ、
つづりの似ている『Freude(歓び)』に書き改めて発表したのです。

その証拠に、1989年、ベルリンの壁が崩壊したことを記念して
開催された第九演奏会(指揮はバーンスタイン)では、
FreudeをFreiheitに変更して歌われています。
ベートーベンも、そんなことは百も承知。
それを理解した上で、『第九』を書いたのです。
貴族の支配から自由を勝ち取るよう、願いを込めて。
だから曲の中で、
ソプラノ歌手でさえ悲鳴をあげるほどの高音を求めています。
耳の聞こえなくなっていたベートーベンだからこそ、
歌手に遠慮することなく、
人間の極限を求めたといえましょう。
自由を勝ち取るために、
血を吐く思いで戦う「決意」を示すために。
どうです、
まさに「ジャジャジャジャーンな真実」だと思いませんか。

ところで、日本では年末になると、
あちらこちらから『第九』の合唱が聞こえてきます。
歌が聞こえてきたら、ベートーベンの決意同様、
自身の志を確かなものにしてください。
特に受験生の皆さん、
運命の扉を開き、新たな世界へと飛び出していく、
あなた自身の決意を!

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫https://yomeba-web.jp/ss/ss-tc/
にて作品を無料公開中。