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「私の好きな言葉・座右の銘(その10)」 筆者・城所卓雄

「一引き二才三学問」
本格言は、出世には、
まず第1に上司や縁故者の引き立て、
第2に才能、第3に学問の順に、
必要なものを例示していると理解されています。

筆者は、この格言の項目には理解を示しますが、
その順位には若干の異論があり、
まずは第1に才能、第2に学問、
第3に上司や縁故者の引き立てになるかと考えます。
その理由は、筆者の大学生時代の体験からです。

若い頃、自らの学習の必要性を痛感していました。
そこで、外国語の学習に加え、
国際法や国際経済学を熱心に学びました。
こうした日々の取り組みは、
当時の指導教官に大いに評価されました。
高評価は、指導教官と学生との関係性を、
深めるきっかけにもなりました。

筆者は、外務省に入省し、
外務本省や在外公館で合計43年間の勤務を経験しました。
外交官としての外国語の駆使、
政治・経済・文化などの
専門分野の知識の駆使は当然のことでしたが、
次のような人事を根回ししてもらえた上司の存在がありました。

具体的には、
○在モンゴル大使館が来年開館されるので、
ぜひそこに転勤してほしい
(注:34年後、3回目の勤務で大使として赴任)、
○在モンゴル大使館勤務の次は、
外交の最前線である在米国大使館に転勤し
外交官の活動の幅を拡げるように
(注:結果的には、ワシントン大使館の二等書記官、
在サンフランシスコ総領事館の領事、
在シカゴ総領事館の首席領事と計7年間勤務)、
○大学生時代にロシア語を学習していたので、
次のポストは、在レニングラード総領事館の
首席領事として転勤してほしい
(注:21年後、2回目の勤務で総領事として赴任
(注:この間、地名がレニングラードより
サンクトペテルブルクに変更)、
などを引き出してくれた上司数名に出会えました。

そして、外交官として50歳を過ぎた頃、
これまで素晴らしい上司に恵まれた体験を活かしつつ、
これからは若い外交官の将来のために、
特に自分の部下のためには、
次のポストを配慮すべきだという認識を持つようになりました。
実際そのような人事異動を実現することができました。

本格言に近い英語表記は見当たらないのですが、
あえて作成すれば、
「First a caring boss, second a talented person,
third an educated person.」
になるかと思います。

【プロフィール】
1969年、外務省入省、
在サンクトペテルブルク総領事を経て、
駐モンゴル大使を最後に、2011年11月外務省を退職。
東大の非常勤講師、名大の参与・客員教授・特任教授を経て、
現在、名大の非常勤講師。
モンゴル国立大学より
名誉経済博士号および名誉外交学博士号を授与、
モンゴル国立教育大学ならびに同医科大学より名誉教授、
同科学技術大学より顧問教授などの称号を授与。
2012年より、ライセンスアカデミーの学術顧問。
2020年、外交功労賞として瑞宝中綬章を受章。

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