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大学をめぐる最近の動向について 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

日本学術会議の会員候補者の任命拒否問題、
中曽根康弘元首相葬儀に関する国立大学に対する通知、
東京大学や筑波大学の学長選出をめぐる混乱など、
大学をめぐっては、最近、
耳目を驚かすようなさまざまな事態が起こっている。
事態は進行中であり、
また、多くの情報が拡散している。
中には、虚偽の情報を含むことも明らかにされている。
それぞれの当事者の言い分はあろうが、
大学(アカデミア)と社会(大学外)との分断が、
ますます深まっていることが懸念される。

学術会議の問題について言えば、
政府の説明が不十分であることは、
大学だけでなく、社会の側からも
各種の世論調査などでも明らかになっている。
しかし、この問題だけでなく、
先にあげたような問題について、
大学外ではどの程度理解されているのだろうか。

学長選出については、2004年の国立大学法人化以降、
学長は従来の主要な選出方法である
大学構成員による投票から、
学長選考会議による選出方法に変わった。
東京大学では、
総長選考会議において従来と異なる選出方法が取られた。
教員による投票は、いわゆる「意向投票」になり、
開票結果が、最終結果にならない。
最終的には、その最多得票獲得者が選出されたものの、
白票が251票(有効投票総数1,851票)と
大量に生み出された。
筑波大学では、
いわゆる意向投票における最多得票者が、
学長選考会議では選出されなかった。

こうした例はこれまでもいくつかの大学で見られたが、
今回のことで大学内の亀裂が
学外にあらわになったことが重大な問題だ。
こうしたことが大学に対する
社会の信頼を低下させることを懸念する。
大学が十分説明責任を果たすことが求められる。
東京大学は、総長選出のプロセスについて、
検証委員会を設けて検証するとのことである。
検証結果の発表を待ちたい。

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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