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チャイルド 筆者:橋本光央

コラム

「子」を英訳すると「child」です。
中学生でも知っている簡単な単語です。
でも、「子」と「チャイルド」って、
なんとなく違うような気がします。

たとえば、日本には
「親会社・子会社」「親分・子分」という言葉もあるように、
つい「親―子」に「主―従」の関係をイメージしてしまいがちです。
でも、英語には「child company」という言葉はなく、
「subsidiary:補助されている」を使います。
また、親分・子分ではなく「a boss and follower」なのです。
つまり、欧米には「親―子」に「主―従」という
イメージはないということです。

これは、儒教を尊ぶ東洋では
「子は親に従うもの」という考えが強いのに対し、
欧米においては「親は子をフォローしてあげるもの」
という感覚があるからです。
その影響もあり、
日本では教育に「先生と生徒に主従関係」を求める傾向があり、
「子供の主権」を認めていないように思います。
そのため、先生に対して従順な生徒が
「良い生徒」として評価され、
逆に自分の意見を主張する生徒は……。

ところで、近ごろ世の中には
「グローバル」という言葉が広まってきました。
そして、学校においても
「生徒自らが課題を設定し、……進めていく」という
「探究学習」が重要視されています。
これは、自ら考え・行動し・力を発揮できる
人材を育てることが目的なのですが、
こんな時代だからこそ、教える側としては
「個の力を伸ばす教育」をしなければならないのです。
だって、押さえつけられて育った生徒は、
自主性を伸ばせないからです。
だから、世界に通じる人材を育成するため、
先生は生徒を「子」ではなく「Child」として、
つまり「フォローして伸ばしていく存在」として
向かい合っていく必要があると考えます。

AIが発達し、そして奇しくもコロナ禍によって
オンライン教育が実践されはじめました。
この傾向は今後ますます強まっていくことでしょう。
そんな時代だからこそ、
先生は単に「教える人」ではなく、
「導く人」もしくは「引き出す人」としての役割が
重要になっていきます。
そう言えば、「教育する」というeducateの原義は
「能力を導き出す」なのです。

【橋本光央プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫にて作品を無料公開中。

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