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なぜ宿題をやる必要があるのですか 筆者:橋本光央

コラム

将棋の藤井聡太棋聖の快進撃が続いています。
昨年(2019年)はトップ棋士との対局が増えたこともあり、
少し勝率を下げていましたが、
今回のコロナ禍において自宅待機を強いられている間も
勉強を続けていたとのことで、
非常事態宣言解除後に一層強くなって戻ってきました。
そして、最年少タイトル獲得の記録を
30年ぶりに塗り替えた後の記者会見で、
色紙に「探究」の文字を記して、
さらなる成長を誓ったことも印象的でした。
そんな藤井棋聖は中学時代、担任に
「授業をきちんと聞いているのに、
なぜ宿題をやる必要があるのですか」
と質問したことがあるそうです。

宿題(に限らず、勉強)は、自分のためにするものです。
だから、例えば
「10問の宿題が出されたときに、
分かっている8問だけを解答して、
分からない2問はやっていかない」
という生徒はもっての外です。
課題の8割をこなしているのだから
「宿題をする」という意味においては
及第点かもしれませんが、
こんな作業に意味はありません。
というのも、できた8割の問題は
すでに理解できているのだから、
実はどうでもいいのです。
大切なのは、
まだ理解ができていなかった残りの2問です。
それができるようになることが、
「宿題をする=勉強する」ということなのです。
ところが、実際には、
「できない問題はやっていかない」
という生徒が大勢います。

藤井棋聖は中学時代の担任に質問した後、
先生からの
「授業の中では理解が十分でないところもあるので、
十分になるように宿題を出している」
という説明に納得したそうですが、
この「納得した」というところが素晴らしいのです。
おそらく、それで「勉強の本質」に気が付いた、
ということなのでしょう。
そして、それがコロナ禍における勉強に
つながっているのかもしれません。
宿題を出す側としても、
第二・第三の藤井君を育てるために、
それが生徒にとって単なる
「提出のための作業」になってしまわないよう、
勉強の本質に注意して出さなければなりません。

【橋本光央プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫(https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/)にて作品を無料公開中。

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