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オンライン教育と学納金 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

コラム

コロナ禍の中で、
オンライン教育を実施している大学が多くなっている。
一部の授業を含めれば、
ほとんどの大学で何らかのオンライン授業を
実施しているという調査結果もある。
これに関連して、
授業料の返還を求める動きが出ている。
オンライン授業では教育の質が落ちる、
また、大学の施設や設備を使えない、
あるいは教職員や学生同士の交流などの
キャンパスライフを送ることができないというのが
その主な理由のようだ。

この問題を考えるためには、
そもそも授業料とは何かを考える必要がある。
授業料は、大学の教育に対する対価である。
この意味では、授業は実施しているので、
授業料は返還しないとしている大学がほとんどだ。
これに対して、
オンライン授業は教育の質が落ちる
という主張の根拠は弱い。
もっとも通信制の場合、
授業料が安いところが多いことも事実だ。

他方、学納金には私立大学の場合、
授業料以外に施設整備費・実習費などの名目で
徴収されるものがある。
確かに施設・設備は使用していないのだから、
この返還を求めることは根拠がありそうだ。
しかし、多くの大学では、
4年間の使用料を
1年(半年)ごとに等分に徴収しているため、
返還しないとしている。
ただし、学期中まったく施設が使えず
実習が行われなければ、
返還の根拠はあることになる。

これまで、買い手市場が続いていた時代に、
学納金は、大学側の都合で設定されてきた。
日本以外の国ではあまりみかけない
高額の入学金もそのひとつだ。
これは師匠に対する御礼である
束脩(そくしゅう)の伝統から来ていると言われる。
かつて入学しないのに
前納した初年度納付金を返還しないのは
おかしいといって起こされた授業料返還訴訟では、
授業をしていない(入学していないから当然だ)以上、
授業料は返還しなければならないが、
入学金は大学と学生の契約金にあたるので、
返還しなくてもよいとされた。
コロナ禍は、大学の問題を多く浮き彫りにした。
授業料の返還問題は、そのひとつと言える。

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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