探究 筆者:橋本光央 更新日: 2020年7月30日
コラム
♪♪ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか、ニ・ニ・ニーチェかサルトルか、
みんな悩んで大きくなった
野坂昭如さんが歌ったCMソングでも有名なソクラテスは、
「吟味されざる生に、生きる価値なし」という言葉を残しています。
でも、これは日本語にするより、
The unexamined life is not worth living. のままのほうが
理解しやすいかもしれません。
確かに「マニアル人間」「指示待ち族」になってしまうと、
自分では何も考えないロボットと同じですから。
ところで、学習指導要領の改訂により、
2022年度から高等学校の『総合的な学習の時間』は、
『総合的な探究の時間』に変更されます。
これは、
「生徒が主体的に課題を設定し情報の収集や整理・分析をして
まとめる能力を育てる」授業なのですが、
これは、まさに
The unexamined life is not worth living.です。
こんなことは紀元前から言われてきたことなのに、
何を今さらとも思えます。
でも、どうして今ごろになって、
「探究」なのかというと、
現在の日本では自分では何も考えられず、
ただ「前例に従うだけ」だったり、
「マニュアルがなければ動けない人間」が
多くなってしまったからではないでしょうか。
そう言えば「不測の事態」に上手く対応できず、
右往左往している人を、最近よくテレビで見かけますが……
また、ソクラテスは、
「生きるために食べよ、食べるために生きるな」という言葉も残しています。
これは「人間の生きる目的は、
日々の生活・生命を維持していくことではなく、
やりたいことをやってよりよく生きていくことだ」という意味ですが、
マニュアルがなければ動けないロボットになってしまうと……
だから、人には「知りたい欲求」「好奇心」「探求心」
等が必要なのです。
そして、「それを満たす努力」をすることによって、
よりよく生きることができるのです。
その力を育てるためにも、
「総合的な探究の時間」では
形式的に授業をこなすだけで終わることがないようにしなければなりません。
生徒たちにThou shouldst eat to live; not live to eat.の心を育み、
♪♪みんな悩んで大きく、なってほしいと思っています。
【橋本光央プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫(https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/)にて作品を無料公開中。