前回(2026年8月27日掲載)は、富山市のコンパクト・シティ構想では、
学校配置計画はどう考えられているかという課題を提起し、稿を閉じた。
今回は引き続き富山市の学校再編計画に絞り込み考察を深めよう。
前回論じたように、富山市は1996(平成8)年に旧富山市が中核市に移行し、
2005(平成17)年に富山市、大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村の
7町村が合併され成り立っている。さらに、2005(平成17)年度以降、
今日までの動きを見ると、2012年にコンパクト・シティ構想の導入、
2020(令和2)年に「富山市立小・中学校の適正規模・適正配置に関する基本方針」の策定と、
富山市全体を対象にした総合的再編計画が打ち出されている。
富山市の学校再編構想としては次の3点が柱となっていることは前回触れた。
・学校規模適正化
・望ましい通学距離・通学時間の維持
・学校統合、通学区域の変更・弾力化、学校の分離新設などの政策オプション導入
以上の柱でもっとも重視されているのは「学校規模の適正化」であることは、
早期に検討すべき学校が、「複式学級が存在する学校」と「全学年が単学級である学校」
とされることからも明らかである。
第2の柱の「望ましい通学距離・通学時間の維持」は、学校統廃合の副作用として
児童生徒の通学距離が延びることへの対策と見ることができる。なお、前回、
「富山市の場合、通学時間については『おおむね1時間という要件には触れず』」
と記述したが若干の注釈が必要である。これは富山市の学校適正規模・適正配置答申には
通学時間に関する記述が欠けている、という意味ではなく、適正通学時間1時間の記述は、
学校統廃合等に道を開くために導入されている、という筆者の見方を示したものである。
富山市も文科省が定める基準に準拠して、通常の徒歩通学による場合、
小学校4キロ、中学校6キロを上限値として設定しているが、
交通機関等を利用する場合には徒歩通学の上限を超えることを許容している。
その場合通学時間が1時間程度に達することもあるという、
徒歩通学の場合の例外措置として導入されている。
やや舌足らずの記述であったことをお詫びしたい。
富山市の答申では、「審議会の結論としては、児童生徒の歩く速度や通学の実態を踏まえると、
通学時間は30~40分以内を目安とすることが望ましいと考える。
またスクールバス・公共交通機関を利用した場合には、自宅から学校まで
おおむね1時間以内を通学時間の目安とすることが望ましいと考える」としている。
しかし、「通学時間」の観念を導入し、通学時間については「おおむね1時間以内」とすると、
小学生の通学距離4キロ、ないし中学生の通学距離6キロ以内という
通学圏域は拡大することになる。
では、児童生徒の成長発達段階や旧村等のコミュニティの区割りとの関係では、
徒歩通学による通学圏域を優先するのか、あるいは通学時間の要件を優先し、
通学時間1時間の圏域を考えるのか。
この点についての実証研究は未だ数少ないのが現状であり、
スクールバス、スクール・タクシー、スクール・ボート等の多様な交通機関の活用と
通学圏域の広がりとの関係をどう考えるかについては、今後に俟つところが大きい。
次回は、引き続き児童生徒の通学形態、通学圏域と関連づけながら、
富山市の学校配置計画について考察を進める。
その際には、新富山市の学校配置計画で取り扱いがもっとも困難と考えられる
二つの旧村の事例を取り上げ、どのような対応策が考えられているか探ることにしたい。
二つの村の概要(平成12年度国勢調査)
・山田村:人口2037人、面積40.92平方キロメートル、
学校:山田小学校、山田中学校、0~14歳人口 253人
・細入村:人口1923人、面積40.24平方キロメートル、
学校:神通碧小学校、楡原中学校(合築校舎)、0~14歳人口 223人
【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
東京学芸大、国立教育政策研究所、文教大学等を経由し、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
この間、各地の教育委員会の学校づくり等に携わるほか、
教職員対象の各種研修会講師も務める。
詳細は、次のプロフィール参照。
https://bunkyo.repo.nii.ac.jp/records/7687
