前回(2026年5月28日掲載)、1978年のバッキ判決によって、
入学者選抜のクォータ制は違憲とされたが、人種などを考慮した選抜は合憲となり、
アファーマティブ・アクションにとって曖昧な判決であったことを紹介した。
これを受けて、その後の大学入学者選抜では、クォータ制はほぼなくなり、
それに替わって、マイノリティへの優遇措置が継続した。
しかし、次にこの優遇措置が大きな争点となった。
例えば、1992年にテキサス大学ロースクールでバッキと同じ様に、
S.J.ホップウッド(Hopwood)が白人であることが
選抜で不利になったとの訴訟を起こした。
同大学院では、白人とその他のマイノリティは別々の選考を行なっていた。
この裁判では、控訴審では違憲判決が出たものの、最高裁は上告を受理しなかった。
つまり、最高裁レベルで判断が示されなかったが、違憲とされたのである。
これに対して、2003年にミシガン大学に関する最高裁判決である、
グラッター対ボリンジャー(Grutter v. Bollinger)判決は、
教育上の多様性(diversity)を目的とした人種考慮は合憲とした。
このため、多様性は、アファーマティブ・アクションにとって、
最も重要な根拠となったのである。
しかし、同年に同じミシガン大学の入学者選抜に関する、
もう一つの最高裁判決がなされた。
ミシガン大学では、ポイント制により、合否を決定し、
マイノリティには自動的に20ポイントが加算された。
この制度は、グラッツ対ボリンジャー(Gratz v. Bollinger)最高裁判決で違憲とされた。
なおボリンジャーは当時のミシガン大学総長である。
このようにアファーマティブ・アクションをめぐる判決は紆余曲折を辿る。
このようなケースとして、さらに複雑な問題を提起したのが、
次回紹介するカリフォルニア大学のケースである。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。
