高校生就活開始が近づくと就職講演で
「離職率」にも触れてほしいと依頼されることがある。
求人票には直近3年間の採用者数と採用者中の離職者数の記載があり、
高校生は当然この数字を見る。それをどのように受け止めればよいのか、
その辺が講演を依頼してくださった先生方のねらいではないかと私は考えている。
「求人票の見方」と組み合わせる場合が多いのはそのためだろう。
若者の早期離職が話題になることが多い昨今、高校生やその保護者が
求人票の離職者数が少ない企業は良い企業、多い企業は悪い企業と
考えてしまうのは仕方がないかもしれない。
しかし先生方はその判断を必ずしも良いとは思わないからこそ、
「講演では離職率についても触れてほしい」という要望を出されるのだろう。
私自身も教員時代には求人票の離職者数だけで
企業の良し悪しを判断しないように、と生徒たちに言っていた。
この場合の離職率は「新規学卒者の就職後3年未満の離職率」のことで
一般には「早期離職率」と言っている。
試しにネットで「早期離職」を検索したら
AIが「定年前の退職で……」と答えてきた。
一部のAI君はまだ早期離職と早期退職の区別がつけられないらしい。
かつては中卒、高卒、大卒の早期離職率が「七・五・三」と言われていた。
これを理由に高卒就職に消極的、
いや否定的な教員に残念ながら何度も出会った。
現在この数字は中卒54.1%、高卒37.9%、大卒33.8%で
およそ「五・四・三」になっている(令和6年厚労省雇用動向調査)。
大卒はあまり変わらないが中卒と高卒は減少し、大卒と高卒の差も縮んだ。
しかし、この統計で高卒の業種別離職率を見ると、
最少の電気ガス水道業14.7%から最大の飲食宿泊業64.7%までは
4倍以上の差がある上に企業規模による差も大きい。
単に求人票の採用数と離職数から求めた「離職率」だけで
個々の企業の評価はできないし、各企業の早期離職防止の努力は分からない。
例えばある企業で4割程度の早期離職があった場合、
その企業が前出の飲食宿泊業ならば早期離職は業界では少ない方と
言えそうだが、製造業(3年未満の離職率28.6%)であれば
離職がかなり多いことになる。しかしその企業の従業員数が
50人程度(同45.2%)だったら評価は異なるだろう。
統計は慎重に利用しないと数字に振り回されることになる。
私は教員時代、離職者数を気にする生徒には
同規模同業の他社と比べるくらいのことはするように勧めた。
そして職場見学時にチャンスがあれば
離職理由や離職対策を質問するようにも指導した。
どの企業にも長年勤務している高卒社員はたくさんいるはずだ。
やりたい仕事に就くチャンスを一つの数値にとらわれて逃すことはない。
【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

