大学・短期大学・専門学校で学べることの違い
まずは、大学・短大・専門学校で学べることの違いをご紹介します。
大学とは
大学は、学術的・理論的な学問を
学ぶとともに、幅広い教養を身に
つけるための教育を行う教育機関
です。
大学での学びの基礎となる教養課程では、入学した学部・学科に関する学問のみに留まらず、さまざまな学問の基礎知識を学ぶことも可能。他学部履修制度を持つ大学であれば、専門外の学問を入門レベル以上に学べる場合もあります。
高校までとは違い、自分の興味に合わせて自分好みの時間割を作っていけるのも大学の特徴の一つ。必修科目(必ず履修しなければならない科目)により、ある程度制限はされるものの、学生の目的やライフスタイルに合わせて、自由に学生生活のスケジュールを決めることができます。ただ、中にはそのせいで、自己管理ができずに怠けてしまう人も……。
ゼミ活動、研究活動、サークル活動など、自主性と協調性が必要とされる活動も多く、社会人としての基礎力を身につけることができます。
短期大学
短期大学は、大学と同じように幅広い教養を身につけるだけでなく、職業や実際の生活に役立つ能力も育成する教育機関です。
読んで字のごとく「短期」の「大学」で、短期間のうちに、教養科目と並行して専門科目や実学的な科目を学ぶことになるため、大学よりも学生生活が忙しくなりがちです。また、大学に比べて実習時間が多く、机に向かっての勉強とともに、実際に体を使っての実習によっても知識や技術を覚えていくため、卒業と同時に即戦力として働ける力を身につけられます。
大学と専門学校の良いところをあわせ持つ短期大学は、短期集中で資格を取得し、卒業と同時にその資格を活かして活躍したいという人にはうってつけの学校かもしれません。
専門学校
専門学校は、「専修学校専門課程※」のことで、主に職業教育を行う高等教育機関です。
ある特定の職業に必要とされる知識・技術、資格を身につけるための学科・カリキュラムが用意され、卒業後は学んだことを生かした職業選択が行われます。
専門学校の最大の特長は、実習の多さです。卒業と同時に即戦力として働ける能力を身に付けるため、「身体で覚えること」が重視されているのです。実習時間が多い専門学校では、欠席や遅刻・早退は禁物。一日でも休んでしまうと、他の学生と比べてかなりの遅れを取ってしまうことになります。
このように厳しい面もありますが、専門学校には、夢を叶えるための勉強を十分にできる環境が整っていますので、将来の目標がはっきりと決まっている人にはおすすめです。
専門学校は、その学科の関連する職業がどの産業形態に属するかによって、「工業」「商業実務」「医療」「衛生」「文化・教養」「教育・社会福祉」「服飾・家政」「農業」の8つの系統・分野に分類されます。
※専修学校には「専門課程(専門学校)」の他、中学校卒業者以上を対象とした「高等課程(高等専修学校)」と、入学者の学歴・年齢を問わない「一般課程」があります。
「認可校」の専門学校はさまざまな特典が得られる
専門学校には、「認可校」と「無認可校」があります(進路ナビ上では「無認可校」を専門教育機関と呼びます)。奨学金制度の利用を考えている方や、調理師や保育士をめざしている方は、認可校か無認可校かが重要となる場合もあるため、二者の違いをしっかり理解しておきましょう。
なお、認可校に認定されるためには、講師の人数や設備など、さまざまな基準をクリアし都道府県知事の認可を受ける必要があります。
認可を受けた専門学校を選ぶことで、以下のような特典を得られます。
認可校の特典
学生割引を利用できる
専門学校の学生は、学割が使えるため、通学定期の購入時などの出費を抑えられます。
公的な奨学金を利用できる
専門学校の学生は、日本学生支援機構の奨学金など、公的な奨学金制度を利用できます。
国家資格上の特典がある
専門学校では、卒業と同時に無試験での国家資格の取得や、受験資格付与、国家試験の一部免除などの特典が得られます。
学校倒産時などに行政上の救済処置があります。
専門学校が経営破綻してしまった場合、在籍中の学生に対する救済措置として、受け皿となる他の専門学校を探すよう指導が行われます。
学歴として履歴書に記入できます。
専門学校卒業は、学歴となるため、履歴書に記入することができます。
職業紹介事業の届出ができます。
専門学校は、職業紹介事業を行えるため、就職サポート体制を充実させることができます。
一方、無認可校では、以下のようなデメリットがあるため注意が必要です。
無認可校のデメリット
- 電車やバス、公的機関で学割を使えない
- 奨学金を利用できない
- 国家資格上の特典がある
- 国家資格の優遇がない(調理師・保育士などは注意)
- 学歴に記載できない(高卒扱いとなる)
- 講師の人数や設備に不足がある場合がある
専門学校は認可校のほうがよい?
認可を受けていないということだけで、教育機関としての良し
悪しは一概にいえません。専門学校同様、しっかりとしたカリ
キュラムを持ち、高い就職実績をあげている学校もあるからで
す。
また認可を受けると教育内容に縛りが生じるため、自由なカリ
キュラムで運営するためあえて認可を受けない学校もあります
。認可校と無認可校どちらに入学したほうがよいかについては
、専門学校のHPや進路情報サイトの情報をもとに比較する必
要があります。
専門学校の情報を得たい場合は、
進路ナビを活用してみましょう
専門学校を探す
比較してみよう
次に、以下10の項目において、大学・短期大学・専門学校の違いを一覧でご紹介します。
教育内容
大学
学術的な研究を行う
- 実践よりも理論重視の傾向
- 教養教育などにより幅広い知識と視野を養成
- 一般教養科目が卒業単位の4割程度
- 講義のほか、演習・実習・ゼミナールなど多彩
- 英語やその他の外国語も学べる
短期大学
幅広い教養を身につけるとともに、職業や実際生活に役立つ能力を育成
専門学校
実践的・実務的な教育
- 専門教育が授業時間の大半を占める
- 職業と密接に関連した教育を行い、即戦力を育成
- 専門教育が授業の約8割
大学の場合、基本的に「研究をおこなう機関」であることが
他の学校と大きく異なります。専門分野についての研究を基
本とし、そのために必要な教養や専門知識を幅広く身につけ
ていきます。
一般教養では、興味のある分野を自由に学ぶこともでき、英
語などの外国語も目的・レベルに応じて学べます。
短期大学でも大学同様、一般教養科目が卒業単位の4割程度
に設定されており、幅広い教養と専門分野に関する知識を短期
間で学ぶことができます。修業年限が2年間であるため(医
療・看護系は3年の短大もある)、比較的タイトなスケジュー
ルで学んでいきます。
一方、専門学校の教育内容は専門性の高さと実践的な内容が
特徴で、狭く深く専門分野の知識や技術を学びます。
大学、短大ともに、授業時間は90分が一般的で、専門学校は
45分程度となっています。
学校数
大学803校のうち学費が安い国公立大学が184校、短期大学では公立が14校、専門学校は国公立が14校となっています。
修業年数
大学
4年間
- 医学系、歯学系、獣医学系、薬学系は6年間
(薬学系は4年制課程もあり)
専門学校
1~4年間
- 専門学校によって1~4年間と幅広い
- 最も多いのは2年
修業年数は、大学は4年間が基本で、医療系では6年間の修業年数が必要な学校もあります。短期大学は2年間が基本、医療系だと3年制の短大もあります。一方、専門学校は修業年数が1~4年とバラつきがあり、2年間が多くなっています。
卒業までにかかる学費
大学
- 国公立:約250万円
- 私立文系:約390万円
- 私立理系:約540万円
- 私立芸術系:約620万円
- 医歯系:約2,350万円(6年間)
文系より理系の方が、学費が高い傾向があり、とりわけ医歯系はさらにお金がかかる
専門学校
1~4年間
- 工業分野:約220万円
- 農業分野:約300万円
- 医療分野:約330万円(3年)
- 衛生分野:約270万円
- 教育福祉分野:約190万円
- 商業実務分野:約220万円
- 服飾家政分野:約210万円
- 文化教養分野:約210万円
専門学校の場合、かかる学費は分野によっても変わる
参考:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
「公立短期大学授業料等について」
東京都専修学校各種学校協会調査研究事業部「令和2年度学生・生徒納付金調査」
大学の場合、国公立は比較的学費がかからず、逆に私立大学は倍近い費用がかかります。私立大学のなかでも文系と理系でかかる費用が異なり、理系のほうが高くなっています。さらに、6年制の医療系や歯科系の私立大学は、2,000万円を超える多額の費用がかかります。
短期大学は通う年数が少ないぶん、大学の半額ほどの学費で済みます。看護系の場合、学費は230万円ほどと、他の分野よりも高くなる傾向があります。また、地域に根ざした短期大学の場合、他県民だと入学金が割高になることがあります。
そして、専門学校は分野によって費用が異なり、特別な実習や高額な設備が必要な分野の場合、学費も高くなります。
学費が不安な方は、以下のページから奨学金・優待制度のある学校をぜひ調べてみてください。
奨学金制度を探す
入学方法
大学
主に実施されているのは一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜
- 大学入学共通テスト利用入試を導入する私立大学が増えている
- 地方入試や試験日選択制入試など入試方式が多様化
短期大学
主に実施されているのは一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜
- 推薦入試で入学する比率が高い
- 大学入学共通テスト利用入試も導入されている
専門学校
主に実施されているのは一般入試、推薦入試
- 近年、AO入試を導入する専門学校が増加
- 多くの学校が書類審査+面接で選考
- 定員を満たせば出願期間内でも募集を締め切る場合もある
入試の形態としては、「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」「AO入試」の4つがあります。
大学・短大では大学入学共通テスト+学校独自の試験(学力テストのほか、実技や小論文など)で合否を判定する方法が一般的です(一般選抜、総合型選抜)。
高校の成績がよい、部活動の実績があるといった人は、学力試験のない学校推薦型選抜を受けられるケースもあります。
専門学校では、学力以外の人間性ややる気を重視した「AO入試(書類審査と面接)」による入試を導入している学校も多いです。
入学方法について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
卒業までに必要な単位数、授業時間数
大学
124単位以上
- 医学または歯学に関する学科は6年以上の在籍と188単位以上の取得が必要
- 薬学に関する学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものは、6年以上の在籍と186単位以上の取得が必要
大学・短期大学は単位制となっており、必要単位を取ることで卒業できる仕組です。必要単位のほか、学部や学科によって必ず取らなければならない必修科目が決まっています。
逆に専門学校は単位制ではなく、800時間以上、授業に参加することで卒業できます。
学位・称号
専門学校
- 修業年限が2年以上で総授業時間数が1,700時間以上の課程を卒業すると「専門士」の称号が与えられる
- 修業年限が4年以上で総授業時間数が3,400時間以上の課程を卒業すると「高度専門士」の称号が与えられる
大学・短期大学は単位制となっており、必要単位を取ることで卒業できる仕組です。必要単位のほか、学部や学科によって必ず取らなければならない必修科目が決まっています。
逆に専門学校は単位制ではなく、800時間以上、授業に参加することで卒業できます。
メリット
大学
- 学科の枠を越えて、幅広く履修できる
- 教養科目の選択肢が多い
- 図書館や設備が充実している
- 留学制度が充実している
- 設備・制度が充実している
- 比較的自由な時間が多い
- 長期の休みが取れるので、やりたいことに挑戦しやすい
短期大学
- 学費が安い
- 短期集中で勉強し、早く卒業できる
- 少人数のため、支援が手厚い
- 県内だと入学金が安くなることがある
- 地元に就職しやすい
専門学校
- 志望分野について専門的に学べる
- 就職後に役立つ実習が多い
- 資格試験の対策が充実している
- 専門分野のプロから学べる機会が多い
- 志望業界の人脈を作りやすい
- 短期間で効率的に資格取得をめざせる
時間面でゆとりがあるのは大学であり、興味のある分野を、時間をかけて幅広く学べます。自由に活動できる時間を確保しやすいため、留学や今しかできない挑戦にも挑める点はメリットでしょう。
将来の選択肢を広げ、現時点では気付いていない新たな可能性を見出すことができるかもしれません。
短期大学は費用面が大きなメリットです。また地元に根ざした学校のため、地元企業とのつながりから就職に有利になる場合があります。
専門学校のメリットは、就職につながる実用的な知識と技術を実技ベースで身につけられる点です。資格取得や業界への就職支援のサポートが充実している学校も多く、専門職をめざす学生にはメリットの大きい学校といえます。
デメリット
大学
- 自分でスケジュール管理ができないと、生活リズムが破綻する
- 4年間を通して計画的に履修しないと、就職活動などに影響が出る
- 自主的に学ぶ姿勢がないと、何も身につかない
- 学費が高い
短期大学
- 2年間ですべて学ぶので、4年制大学よりも忙しい(空き時間が少ない)
- 4大卒以上しか募集していない企業には就職できない
- 学べる科目に限りがある
専門学校
- 専門分野の授業がほとんどで、教養科目が少ない
- 入学後に「向いていない」と感じると、進路変更が難しい
- 大学ほどの自由がない
大学のデメリットは、自己管理と計画性が必要な点です。履修する科目はすべて自分でスケジューリングしていくため、計画性なく過ごしてしまうと留年などの心配があります。
学べる範囲は広いですが、自主的に学ぶ姿勢がなければ身につくものも少なくなってしまいます。
短期大学は大学に比べて学べる科目が少なく、スケジュールが忙しい点がデメリットです。就職の際は「4大卒以上」が募集条件の企業には応募できません。就職後の給与も大卒より少なくなる傾向があります。
専門学校は専門知識を深められますが、もしも入学後に向いていないと感じても進路変更は難しい点がデメリットです。また教養科目が少ないため、大卒・短大卒と比べると幅広い教養は身につけにくくなります。
卒業後の進路
大学
就職
- 専攻の系統・分野と関連のある職業に限らず、さまざまな業界に就職就職について融通が利く
進学
短期大学
就職
- 専攻の系統・分野の専門職(教育と医療等)と一般職に分かれる
卒業後の就職先については、在学中に幅広い分野について学べる大学は就職先もさまざまな業界に分かれる傾向があります。対して、短期大学や専門学校は、学校で学んだ専門分野に関連する職業に就職する割合が多くなります。
卒業後の進路として、就職のほか、大学院への進学や、大学への編入学といった道もあります。
短期大学や専門学校から大学に編入学することにより、大学卒業資格やより高いレベルの資格取得をめざすことができます。より高度な学問を学びたくなったり、進路変更を望むようになったりした場合に有効な選択です。
編入学や卒業後の就職に役立つ情報をチェックしよう!
就職に有利なのはどの教育機関なの?
ここまで、大学・短期大学・専門学校の違いについてご紹介しました。
では、実際のところ、就職に有利なのはどの校種なのでしょうか。答えは、一概には言えません。
ただ、求人のなかには、応募条件に「大学卒業以上」とある場合があり、そうした企業には大学を卒業した人しか就職できません。よって、就職先の選択肢が多いという点で、大学卒は就職に有利といえます。
また、応募条件に学歴が明記されていなくても、大手企業の総合職などはいまだに学歴を重視した採用をする傾向があります。医師や薬剤師は、そもそも大学の医学部や薬学部を卒業しないと国家資格を取得できません。
一方で、専門性重視の職業に就き、現場で活躍したいという場合には、専門学校を卒業することが就職の近道になります。理容・美容、看護、自動車整備、IT、調理・製菓などの分野では、専門学校卒の人が多く活躍しています。
さらに大学と比べ、短期大学や専門学校の方が、就職サポートが手厚いのが特徴的です。業界の情報が学校に集まってきやすい面もあり、そうした点においては就職に有利といえるでしょう。
特に専門学校は、その業界の人事担当者とパイプができていることが多く、直接的な就職活動が可能です。そのため、目指す業界が決まっている人にとっては、大学に行くよりも効率よく夢に近づけます。
要は、自分がどのような仕事に就きたいのかを意識して、その道が開ける進学先を選ぶことが大切です。
それぞれの教育機関に向いている人の特徴とは?
次に、大学・短期大学・専門大学それぞれに向いている人の特徴をご紹介します。進学先の校種を迷ってしまう方は、ぜひ参考にしてください。
- 就職先の幅を増やしたい人
- 大企業に就職したい人
- 入学にかけられる費用に余裕がある人
- 時間をかけて深く勉強・研究したい人
- 幅広い分野の知識を身につけたい人
大学は短期大学や専門学校と比べて費用はかかりますが、「大卒」というある種の資格を入手できるため、大手企業への就職の際は有利にはたらきます。将来やりたいことが決まっていない人も、好きな分野を幅広く学ぶなかで新たな道を見つけられる可能性があります。
- 幅広い分野の知識を身につけたい人
- 経済的負担を抑えて進学したい人
- 地元で進学や就職をしたい人
- 教員免許を取りたい人
短期大学は他の校種と比べて学費が安いため、費用が心配な人でも進学しやすい学校です。地元に根ざしているため、地元での就職を考えている方にも短期大学が向いているといえます。
専門学校では原則、教員免許が取れないため、小・中・高の教員免許(二種)を取りたい人も短期大学を選ぶといいでしょう。
- 就きたい職業が決まっている人
- 手に職をつけたい人
- なるべく早く社会に出たい人
- 学力に不安がある人
本的に、なりたい職種が決まっている人は、専門学校が向いているといえます。休日数も少なく集中的に学んでいくため、短期間で手に職をつけ社会で活躍できます。
また美容系や調理系などの専門学校は学力テストを必要としないAO入試が一般的なため、学力に不安がある人でも入りやすいといえます。
ただし、看護・医療など一部の分野の専門学校は学力も必要なため、学校にあわせた受験対策が必要です。
学校を調べてみよう!