ケーキやタルト、ムース、クッキーなど様々な洋菓子を作るパティシエ。お菓子やお菓子作りが好きで、将来はパティシエになりたいと考えている学生さんもいるのではないでしょうか。この記事ではパティシエを目指す学生さんに向けて、パティシエになる方法やパティシエの仕事内容、向いている人の特徴などを解説します。ぜひ進路選択の参考にしてみてくださいね。
パティシエになる方法を紹介
パティシエになるために必要な資格はありません。資格がなくても、現場で修行を積み、スキルを身につけることでパティシエとして働くことは可能です。
ただ「製菓衛生師」や「菓子製造技能士」などの専門的な資格を持っていると、一定レベルの知識・技術があることを証明できます。就職や転職、独立する際にも、資格があることでパティシエとしての信頼感が増し、有利になるでしょう。
また必須の資格がないということは、完全に実力で評価される世界だということ。お菓子やお菓子作りについての知識を身につけ、技術を磨くことでパティシエへの道が開けます。
パティシエになるための技術を磨くためには主に下記の3つの方法があります。
- 製菓専門学校や大学の製菓学科に通う
- ホテルや洋菓子店で修行する
- 独学で学ぶ
それぞれどんなルートでパティシエを目指すことになるのか、詳しく解説します。
製菓専門学校や大学の製菓学科に通う
パティシエを目指すには、製菓専門学校や大学の製菓学科に通う方法が一般的です。専門学校や大学に通うことで、パティシエになるために必要な知識や技術を基礎から学ぶことができます。学校によっては洋菓子の調理技術だけでなく、商品開発力や独立に向けてのマネジメント力など、将来のキャリアを見据えたスキルを身に付けることもできるでしょう。海外留学やプロ講師による指導を取り入れている学校もあります。しっかりとしたカリキュラムに沿って、パティシエに必要な知識・技術を学びたい人におすすめの方法です。
また専門学校や大学では、就職時に有利な「製菓衛生師」や「菓子製造技能士」といった専門資格の取得サポートを実施しているところもあります。それぞれの資格について詳しく紹介します。
製菓衛生師の資格を取得するには
製菓衛生師とは、製菓衛生師法で定められた国家資格です。資格を取得することで、製菓技術や衛生学や食品添加物に関する専門知識があることを証明できます。パティシエだけではなく、和菓子職人やパン職人も取得する資格です。
受験資格は「菓子製造業で2年以上の実務経験を積んだ方」もしくは「都道府県知事が指定する養成施設で1年以上学んだ方」と定められています。試験科目は、衛生法規、公衆衛生学、食品学などがあり、全て筆記試験。全科目の合計得点が満点の6割以上かつ、各試験科目の得点がその試験科目の平均点の半分を下回らない場合に合格となります。
お菓子作りのスキルだけでなく、食品衛生についてなど調理の土台となる知識を身に付けることができます。
菓子製造技能士の資格を取得するには
菓子製造技能士も、製菓に関する知識・技術を証明できる国家資格です。和菓子製造と洋菓子製造の2分野に分かれており、1級試験と2級試験があります。それぞれ学科試験と実技試験が課され、実技試験は60点以上・学科試験は65点以上で合格となります。
2級試験を受験するには2年間の実務経験が必要ですが、厚生労働大臣が指定した製菓専門学校の卒業生は実務経験なしでも受験できます。また1級試験を受けるには7年の実務経験が必要ですが、2級に合格していれば、2年の実務経験で受験が可能です。
製菓技術を学べる専門学校や大学に通うことで、菓子製造技能士検定の受験に必要な実務経験年数を短縮できるでしょう。
ホテルや洋菓子店で修行する
高校卒業後、洋菓子店やホテルなどで実務経験を積みながらパティシエを目指すのも一つの方法です。未経験で就職するため、材料の用意や器具の片づけなど見習い仕事から始めることが一般的。先輩パティシエの仕事を見て学び、用具の名前や使い方、効率的な作業の進め方などを学んでいきます。働きながらお菓子作りのスキルを身に付けられるため、実践的力を養うことができるでしょう。職場によって必要な知識・技術が異なるため、自分がどんなパティシエになりたいかを考えて就職先を選ぶことが大切です。
独学で学ぶ
パティシエには必須となる資格や学歴はないため、独学で目指すことも可能です。お菓子をたくさん作ってクオリティを向上させたり、洋菓子店をめぐって商品や接客をチェックしたりすることで、パティシエとしての基礎力を身に付けていけるでしょう。独学は学校に通わない分、時間を自由に使って勉強に励めることや、学費がかからない点がメリットです。ただプロからの評価が得られないので、自分に何が足りないかを見つけにくいデメリットもあります。また調理器具を揃えることは大変ですし、モチベーションを保つことも難しいといった課題もあります。
パティシエの仕事を紹介
パティシエは、ケーキやタルト、アイスクリームなど洋菓子を作る専門職。メインの仕事はお菓子を作ることですが、詳しい業務内容は勤務先によって異なります。
ここでは下記4つの職場別に具体的な仕事内容を紹介します。
- 洋菓子店
- ホテル
- レストラン
- 製菓メーカー
パティシエとして、将来どんな職場で働きたいかを考えるきっかけにしてくださいね。
洋菓子店
洋菓子店で働くパティシエの仕事は、ケーキを中心にシュークリームやマドレーヌなど様々な種類の洋菓子を作ること。店舗の規模によって具体的な仕事内容は異なります。大規模なパティスリーではスタッフが多く、製造量も多いためお菓子作りの工程ごとに分業されていることが一般的です。一方、小規模なお店では生地作りからデコレーションまで一人のパティシエが担当することが多く、時には接客や販売をすることも珍しくありません。洋菓子店は、早朝から仕込み作業を行うため、朝が早いのが特徴です。
ホテル
ホテルで働くパティシエはペストリー部門に所属し、ホテル内のレストランやカフェ、宴会場で提供されるデザートを作ります。婚礼を行っているホテルであれば新郎新婦のリクエストに沿ってウェディングケーキを製造することもあるでしょう。ホテルでは多数のパティシエが働いており、生地担当・オーブン担当など役割を分担して作業を行います。時には数百人単位のお客様にお出しするスイーツを作ることもあるので、効率的にお菓子を作るスキルが身に付くでしょう。またホテル内で働く様々な人と連携しながら業務にあたるので、コミュニケーション力も養われます。
レストラン
レストランのパティシエは店内で提供する食事のスイーツ担当です。お店の雰囲気や価格帯によって提供するスイーツは異なります。例えば、高級レストランではコース料理のデザートを作ることがパティシエの仕事です。レストランは洋菓子店とは違いお客様がその場でスイーツを召し上がるため、盛り付け技術も必要。レストランで働くパティシエは、お菓子作りの技術だけでなく、見た目の華やかさを演出できる盛り付けのセンスも求められます。またお店によってはスイーツだけではなく、通常の料理の補助やホールなどを任されることもあります。
製菓メーカー
パティシエの中には、製菓メーカーで働く人もいます。洋菓子メーカーでは、お菓子作りそのものよりも、製菓技術や知識を活かしながら新商品の開発や製造、商品改良を行う仕事がメインになります。自分のアイデアがヒット商品につながることもあるでしょう。顧客の嗜好やトレンドに沿った商品開発ができるスキルが求められます。
パティシエのキャリアアップ
パティシエの活躍の場は、洋菓子店やホテル、レストランなど幅広いことが分かりました。実はパティシエは就職先だけでなく、将来的なキャリアプランの選択肢も多岐にわたる職業です。
パティシエのキャリアプランとしては、下記のようなものが考えられます。
- 一つの職場で継続して働き、役職者を目指す
- 自分のお店を持つ
- 実績を上げて有名人になる
- スイーツ開発のコンサルタントになる
パティシエとしてキャリアアップしていくためには、製菓スキルを磨いたり、専門資格を取得したり、海外で修行したりと努力を重ねることが重要です。
「将来自分はどんなパティシエになりたいか」といった長期的なキャリアプランを考えておくことで、就職後も仕事へのモチベーションを高く保つことができるでしょう。
パティシエの仕事の将来性について
近年はAI技術の進歩により、様々な業界でデジタル化が進んでいます。またコンビニやスーパーでハイクオリティなスイーツを手軽に購入できるなど、洋菓子店のライバルが増えています。このような理由から、パティシエの仕事に将来性があるのか気になっている学生さんもいるかもしれません。
結論からいえば、パティシエの仕事は将来性があると考えられます。パティシエの仕事には成形やカットなど機械化できる作業もありますが、焼き加減の調整や仕上がりの確認、繊細な盛り付けなど「人」にしかできない作業も多くあります。そのため、パティシエの仕事全てがAIにとって代わられる心配はほとんどないといえるでしょう。パティシエとしてのスキルを磨き、自分だけのオリジナルレシピや他にはないアイデアを活かしてお菓子を作ることで、コンビニなどの大量生産スイーツとの差別化を図ることができます。
AIや競合の増加など変化が激しい時代ですが、「機械にできない作業ができる」「オリジナリティーあふれるスイーツが作れる」など製菓職人としての腕を磨くことで、今後も長く活躍できるパティシエになれるでしょう。
パティシエの給料と年収相場は?
パティシエになるとお給料はどのくらいもらえるの?と気になっている学生さんもいるでしょう。
厚生労働省が毎年行っている令和4年賃金構造基本統計調査によると、パティシエの平均年収は約345万円でした。国税庁が発表している令和4年分民間給与実態統計調査結果によると日本の平均年収は458万円のため、パティシエの給料は平均より低い傾向であることが分かります。
ただしパティシエは、学歴で給料の差がつくことない実力主義の世界。スキルを上げるためには自主的にトレーニングを積んだり、海外留学で本場の知識や技術を学んだりと、知識や経験を磨くことが求められます。それ次第で収入を伸ばすことは十分可能です。他にも転職や独立など、収入を上げる手段は数多くあります。
パティシエになった後も志を高く持ち、コツコツ努力することで、年収アップを実現することができるでしょう。
参考:洋菓子製造、パティシエ – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
参考:令和4年分民間給与実態統計調査結果について | 国税庁企画課データ活用推進室
パティシエに向いている人の特徴
これまでは、パティシエになる方法や仕事内容や将来性、年収について解説してきました。ここでは、パティシエに向いている人の特徴について、下記の6つを解説していきます。
- お菓子もお菓子作りも好き
- 「正確さ」「丁寧さ」などを妥協せずコツコツ続けられる
- 心と体の健康管理を怠らない
- 美的センスを磨いていける
- お菓子作りへの探求心がある
- おもてなしの心をもっている
それぞれ順番に詳しくみていきましょう。
お菓子もお菓子作りも好き
「お菓子を食べることが好き」「お菓子作りが楽しい」など、「お菓子が好き」という気持ちはパティシエに最も必要な要素です。プロのパティシエには、お菓子作りに関する専門的な知識や技術が求められます。お菓子が好きで、お菓子に対する興味が尽きない人であれば、知識や技術の習得も楽しいと感じられるでしょう。パティシエとして働き続けていく中でも、お菓子作りへの情熱や夢は大きなモチベーションになります。
「正確さ」「丁寧さ」などを妥協せずコツコツ続けられる
地味な作業も毎日コツコツと続けられる人はパティシエの適性があるでしょう。生地の焼き加減や砂糖の分量など、お菓子作りの工程には正確さが求められます。何となく自己判断でやってしまうと失敗したり、衛生的な問題が発生したりしてしまうリスクもあります。同じ商品を大量に生産する際も、一つひとつ丁寧に仕上げる必要があり、妥協は許されません。地味な作業でも真剣に向き合い、正確かつ丁寧に取り組む姿勢が大切です。
心と体の健康管理を怠らない
パティシエは朝早くから夜遅くまで基本的に立ちっぱなしで働きます。時には重い食材や器具を運ぶことがあり、想像以上に体力が必要な仕事です。また、職場によっては一日中同じ商品を作り続けることもあり、長時間の単純作業をこなせる忍耐強さも求められます。見習いのうちは上司から叱られることもあるため、注意されても挫けず壁に立ち向かう根性も大切です。心身ともにタフで、忙しい中でも健康管理をきちんと行える人はパティシエに向いているでしょう。
美的センスを磨いていける
盛り付けや飾り付けなどのセンスもパティシエになるためには重要な要素です。評価されるパティシエになるには、味だけでなくスイーツを美しく盛り付けられる美的センスも求められます。美的センスや芸術的な感性は学校の勉強で身に付けられるものではなく、本人の感性やこれまで培ってきたものが反映されます。パティシエとして活躍するためには、普段から美しいものに触れたり、芸術に親しむ経験をしたりとセンスや感性を磨く努力を重ねることが大切です。
お菓子作りへの探究心がある
お菓子作りはとても繊細な作業です。材料の分量を少し変えるだけでも出来上がりに違いが出てきます。良いお菓子を作り続けるパティシエは、工程に少しずつ変化を加えながらレシピを研究し続けています。何度も試行錯誤を繰り返していくことで、唯一無二のオリジナリティーあふれるスイーツを作り出せるのです。起きている変化に対して「何故?」「どうして?」という探求心や好奇心もてる人は、パティシエの仕事を楽しむことができるでしょう。
おもてなしの心をもっている
おもてなしの心をもっている人もパティシエに向いているでしょう。就職先によっては、まずは販売員からスタートするケースもあります。そのためパティシエにも笑顔や挨拶、言葉遣いなど基本的な接客力が求められます。またパティシエが作るお菓子は、お客様の大切な人へのプレゼントだったり、自分へのご褒美だったりと特別なものであることが多いです。「どうしたら喜んでもらえるだろう」と相手の立場になって考えられる人は、パティシエの適性があるといえるでしょう。
パティシエを目指せる学校の選び方
パティシエは、自分の作ったお菓子でたくさんの人を笑顔にできる夢のある仕事です。独学でも目指すことはできますが、専門学校や大学で基礎を学ぶことで、効率的に知識や技術を身に付けることができるでしょう。
「進路ナビ」では、パティシエを目指せる専門学校や大学を紹介しています。しかし各学校で具体的にどんなことを学べるのかは、カリキュラムを詳しく調べる必要があります。「進路ナビ」の学校検索機能を使って資料請求すると、各校のパンフレットを取り寄せることが可能です。
また「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという方も、ぜひご活用ください。