広告や出版物、商品のパッケージなどのデザインを制作する「グラフィックデザイナー」。将来の進路について考えている学生さんの中には、グラフィックデザイナーの仕事に興味をもっている人もいるでしょう。しかし「グラフィックデザイナーになるにはどんな勉強をすれば良いの?」「大学と専門学校どっちに進学するべき?」とお悩みの人もいるかもしれませんね。本記事ではグラフィックデザイナーに関する基礎知識や身に付けるべきスキル、グラフィックデザイナーを目指せる進学先を解説します。グラフィックデザイナーの仕事に関心のある学生さんはぜひ参考にしてみてください。
グラフィックデザイナーになるために必要なスキル3つ
グラフィックデザイナーは、広告や出版物、商品パッケージなど平面デザインを制作する専門職。クライアントからの依頼をもとに、魅力的な色、構図などを考えて視覚的に表現するクリエイティブな仕事です。グラフィックデザイナーとして働くためには、下記のような専門的なスキルを身に付けておくことが必要です。
- デザインスキル
- 制作で使用するソフトのスキル
- ヒアリングスキル
これらはグラフィックデザイナーになるためには必須のスキルですが、いずれも努力次第で身に付けることができます。それぞれのスキルについて、詳しく解説します。
1. デザインスキル
デザインスキルは、グラフィックデザイナーの基本スキルです。グラフィックデザイナーはクライアントの要望に沿ったデザインを制作することが仕事。例えば新商品のパッケージのデザインでは、商品をより魅力的に伝えるデザインを考えなければなりません。啓蒙ポスターのデザインでは、メッセージが伝わりやすい設計が求められるでしょう。レイアウトや色彩に関する知識を身に付けておくことで、あらゆる目的に応じたデザイン制作ができるようになります。色彩においては、色に関する知識や技能を幅広く学べる色彩検定を受けてみるのもおすすめです。
2. 制作で使用するソフトのスキル
グラフィックデザイナーにはデザイン制作で使用するソフトのスキルも必須です。基本的にグラフィックデザイナーはPCソフトを使用して広告や商品パッケージなどのデザインを制作します。
グラフィックデザイナーが使用する主なソフトを下記にまとめました。
ソフト名 | 用途 |
---|---|
Illustrator | イラストを制作したり文字のレイアウトをしたりできる |
Photoshop | 画像の編集ができる |
InDesign | 複数のページがある印刷物を制作できる |
このようなソフトを使いこなせるようになることはグラフィックデザイナーへの第一歩といえるでしょう。また、紹介したソフトに関連する資格には下記のようなものがあります。
- アドビ認定エキスパート(ACE)
- Illustratorクリエイター能力認定試験
- Photoshopクリエイター能力認定試験
ソフトスキルを身に付けた上でこのような認定試験を受けておくと、ソフトを使用できる証明にもなりますよ。
3. ヒアリングスキル
グラフィックデザイナーには、クライアントの要望を聞き出すヒアリングスキルも必要です。グラフィックデザイナーはクライアントがどのようなデザインを希望しているのかを聞き、意図を汲み取った上で制作を行います。クライアントに満足してもらえるデザインを制作するためには、クライアントが求めているものを聞き出し、正しく理解するヒアリングスキルが欠かせません。また、グラフィックデザイナーは一人で仕事をするわけではないので、コミュニケーション力も求められます。
グラフィックデザイナーの主な仕事内容3つ
主に平面デザインの作成を行うグラフィックデザイナー。グラフィックデザイナーに興味があるけど、具体的にどんな仕事をするのか知らない学生さんも多いのではないでしょうか。グラフィックデザイナーが行うデザイン制作の仕事には下記のようなものがあります。
- ブランドアイデンティティのデザイン
- 広告とプロモーション素材のデザイン
- 出版物のデザイン
- パッケージデザイン
- ウェブサイトとモバイルアプリのデザイン
グラフィックデザイナーは企画から製作まで幅広い業務を担当し、作業分担は企業によっても異なります。ここでは一般的なグラフィックデザイナーの仕事内容について、詳しく紹介します。
1. 依頼者と打ち合わせ
クライアントから依頼を受けたら、まずはどのようなデザインにしたいのかについて打ち合わせを行います。打ち合わせでヒアリングする内容は、デザインを制作する目的やコンセプト、ターゲット層、予算、納期など。クライアントから聞いた要望をもとにラフ(おおまかなイメージ)を作成し、問題なければ実際の制作に移ります。最初のヒアリングで要望を聞き出せないとクライアントの望むデザインを制作できず、後々修正が増えることも。クライアントに言われた通りに作るだけでなく、デザイナーとしての専門知識を活かした提案を行うことも大切です。
2. デザインの制作
打ち合わせの内容をもとにデザインの制作を行います。上述したIllustrator、Photoshop、InDesignなどのソフトを使用して様々な加工を行い、デザインしていきます。イラストや写真、文章などが必要な場合はイラストレーターやフォトグラファー、ライターとチームを組んで作業を行うことも。デザイン制作では、ヒアリングで聞き出したクライアントの求めるものを作り出すことが重要です。イメージのすり合わせを行うため、色やレイアウトが異なる複数のデザインパターンを用意するケースも少なくありません。
3. デザインの修正
デザインが完成すればクライアントに提出し、チェックしてもらいます。その際、イメージと異なる点や気になる点を指摘された場合は適宜修正を行います。指摘された箇所を修正し、修正した箇所を確認してもらうという作業を繰り返し、納品します。修正や内容変更が発生する可能性を考えた上で、納期などのスケジュール調整をしておくことが大切です。
グラフィックデザイナーが目指す就職先
次に、グラフィックデザイナーが大学や専門学校卒業後にどんなところに就職できるのかを紹介します。グラフィックデザイナーとして働ける就職先は下記のように多岐にわたります。
- 出版社
- 広告制作プロダクション
- 編集プロダクション
- デザイン事務所
- フリーランス
就職先によって仕事内容が異なります。例えば出版社では雑誌やカタログなどのデザインを手がけることがメイン、広告制作プロダクションでは広告関連の仕事に携わることが主な仕事です。一般的に中小企業よりも大手企業のほうが就職難易度は高め。まずは中小企業で経験を積み、キャリアアップしていくグラフィックデザイナーもいます。デザインに必要なスキルを身に付ければ、フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動することも可能です。自分がどんなデザインを手がけたいか、どんなキャリアを積みたいかを考えて就職先を選ぶと良いでしょう。
グラフィックデザイナーの将来性
出版業界の不況が叫ばれる現在、グラフィックデザイナーの将来性に不安を感じている学生さんもいるかもしれません。紙媒体からWebへ移行しつつあるため、書籍や雑誌等のデザイン制作に関するグラフィックデザイナーの仕事は年々減少傾向にあります。しかし、グラフィックデザイナー自体が不要になっているという訳ではありません。近年はネット市場が拡大する中で、Web関係のデザイン制作の需要が増加しています。実際、企業が広告を出す際には、商品パッケージやポスターとともに自社サイトやWeb広告も連動させて行うことが多くなっています。グラフィックデザインはWebデザインとの親和性が高いため、これからグラフィックデザイナーを目指すのであれば紙媒体のデザインだけでなくWeb関係のデザインスキルも身に付けておくことで、将来的に幅広く活躍できる人材になれるでしょう。
グラフィックデザイナーの年収相場
将来の職業を考える際に、気になるのは給料事情ですよね。令和5年賃金構造基本統計調査によると、グラフィックデザイナーの平均年収は509万円でした。令和4年分民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の平均年収は458万円だったので、グラフィックデザイナーの年収は一般的なサラリーマンより高くなっています。ただ、実際の年収は就職先の規模などによっても異なり、大手企業では1,000万円近い収入を得ているグラフィックデザイナーもいます。フリーランスとして活動する場合、独立直後は平均を下回ることも多いですが、スキルを身に付けて実績を積むことで会社員を超える年収を目指すことも可能です。
参考:グラフィックデザイナー – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
参考:令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁
グラフィックデザイナーに向いている人の主な特徴3つ
グラフィックデザイナーとして長く働き続けるためには、仕事の適性を確認しておくことが大切です。自分はグラフィックデザイナーの仕事に向いているの?と悩んでいる方は参考にしてみてください。グラフィックデザイナーに向いている人の特徴は下記の3つです。
- デザインセンスがありアイディアが豊富な人
- 常にトレンドを意識している人
- 相手の意図を汲み取るのが上手い人
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
1. デザインセンスがありアイディアが豊富な人
デザインセンスはグラフィックデザイナーに欠かせない要素です。プロとしてデザインを制作する以上、高度なデザインセンスが求められます。また、たくさんの仕事をこなしていくには、センスに加えてアイディアが豊富な人が向いているといえるでしょう。クライアントの要望を汲んだ上で他にはないオリジナリティ溢れるデザインを作成できる人は、グラフィックデザイナーとして活躍できるはずです。デザインセンスは経験を積むことで磨くことが十分可能なので、初心者だからといって諦める必要はありません。
2. 常にトレンドを意識している人
世の中の流行に敏感で、常にトレンドを意識している人もグラフィックデザイナーに向いています。クライアントの中には、より多くの人から注目を集めるためにトレンドを重視したデザインを求めるところも少なくありません。流行りを押さえたデザインは集客や売上にも大きく影響してくるでしょう。トレンドは移り変わりが早く、常にアンテナを張ってチェックしていく必要があります。日頃からSNSやテレビなどを見てトレンドを把握する習慣のある人は、グラフィックデザイナーの適性があるといえるでしょう。
3. 相手の意図を汲み取るのが上手い人
そもそもグラフィックデザイナーは、自分が描きたいデザインだけを作成する仕事ではありません。クライアントから依頼を受けて、「相手の希望に沿ったデザイン」を制作する必要があります。そのためクライアントとの打ち合わせの中で「どんなデザインが求められているか」を正確に把握するスキルはグラフィックデザイナーに必要不可欠。相手の意図を汲み取るのが上手い人はグラフィックデザイナーとして活躍できるでしょう。
グラフィックデザイナーを目指す人の進学先2つ
グラフィックデザイナーになるために必須の資格や学歴はありませんが、デザインに関する知識や技術、創造力がないと会社に就職することは難しいでしょう。そのため、高校卒業後は大学や専門学校でデザインを専門的に学んでから就職するルートが主流となっています。グラフィックデザイナーを目指す進学先の候補は、大きく分けて下記の2つがあります。
- デザインを学べる大学・短期大学に進学する
- デザインを学べる専門学校に進学する
それぞれ具体的にどんな進学先を選べば良いのか、詳しく解説します。
1. デザインを学べる大学・短期大学に進学する
デザインについて学べる大学・短期大学を探す場合は、下記の学科がある学校を探すと良いでしょう。
大学 | ・デザイン学科 ・芸術学科 ・グラフィックデザイン学科 ・生活造形学科 など |
短期大学 | ・美術学科 ・造形芸術学科 など |
グラフィックデザイナーを目指す人が大学や短期大学に進学する際は、美術系の学校を選ぶのが一般的です。一般の大学でもグラフィックデザイン科などデザインについて学べる学科を設置しているところもあります。なお、大手の広告会社や一部のデザイン事務所ではグラフィックデザインを総合的に学んだ大卒の人が採用されやすい傾向にあるようです。
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ひとつの番組やステージなどを一貫して制作していくノウハウはもちろん、劇場設備の取り扱い方に至るまで、基礎から段階的に学ぶことができます。プロ仕様の機材やスタジオを使い、体験的に学べる演習が充実しているのも特長で、現場で求められる本物の力を実践しながら養えます。また、ライブ配信のスキルも修得可能です。
②CG・イラスト・アニメコース
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デッサンや立体造形のように、実際に自分の手を動かしながら学んでいくことで、アーティストやデザイナーに代表される
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2. デザインを学べる専門学校に進学する
デザインを学べる専門学校に進学する場合は下記の学科がある学校を探すと良いでしょう。
専門学校 | ・グラフィックデザイン科 ・グラフィック学科 ・ビジュアルデザイン科 など |
専門学校では1年次から実際に仕事をするときを想定したソフトの使い方などの実践的スキルを身に付けます。就職後に即戦力になれるよう、短期間で集中的に勉強したい人には専門学校がおすすめです。なお、専門学校によっては大学と同じように3〜4年かけてじっくりデザインを学べる学校もあります。
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