ホテル業や旅行業をはじめ、観光にまつわるビジネスや文化など、「観光」について研究する観光学。旅行が好きだったり、国内外の文化に興味をもったりしている学生さんの中には、高校卒業後に観光学を学びたいと考えている人もいるのではないでしょうか。「観光学を学ぶにはどんな学校に進学すれば良い?」「観光学を学ぶことでどんな職業に就けるの?」と悩んでいる人もいるかもしれませんね。本記事では観光学とはどんな学問なのかをはじめ、観光学と関連する職業や資格、観光学に向いている人の特徴、観光業を学ぶための進路選択の方法について解説します。ぜひ将来の進路選びの参考にしてみてくださいね。
観光学とはどのような学問か?
観光学とは、観光を通して地域と観光客の交流を生み出し、地域を活性化させるための研究を行う学問のことです。
「観光学」と聞くと、旅行業やホテル経営など観光産業について学ぶイメージをする方が多いかと思います。もちろん観光にまつわる経済学や経営学、実務スキルも観光学の一部です。しかし観光学で取り扱う学びの範囲はもっと広く、社会学や商学、語学、地理学、人類学、心理学など様々な学問の観点から観光について研究していきます。観光の実態を調査する中では、実際に観光地やテーマパーク、ホテルなどへ足を運んで実習を行うこともあるでしょう。近年は観光地を見て回るだけでの観光から、積極的に参加する体験型の観光へと観光客のニーズは変化しています。このように観光にまつわる時代の流れを読み取る力を養うことも重要です。
観光学の学習の進め方
あらゆる学問の観点から観光について研究する観光学。学びの範囲が広いため、実際にどのように学習を進めていくのかイメージし難いかもしれません。
観光学では、初めは「観光産業」や「地域と観光」、「文化と観光」など、観光についての知識を幅広く学びます。まずは観光について手広く学ぶことで、「観光するとはどういうことなのか」「どうして人は観光するのか」など、専門的な視点で観光にまつわる事象を分析する力を身に付けることができます。観光学ではフィールドワークも重視されるため、専門的な視点で観光を分析するスキルは重要です。観光に関する幅広い知識を得た後は、観光に関する経済学や商学、文化学、語学など細かい分野の学習を進めます。その後、観光開発や観光経営、地域再生などより専門的な学びに入ります。
観光学を学ぶことで取得できる資格
観光学に関連する資格にはどんなものがあるのか、気になりますよね。観光学を学ぶことで取得できる主な資格を5つまとめました。
資格名 | 詳細 |
---|---|
旅行業務取扱管理者 | 旅行商品を販売する際に必要な国家資格 |
夜景観光士検定 | 全国各地の夜景に関する知識が問われる検定 |
全国観光特産士検定 | 全国の観光文化や特産品、伝統文化など幅広い知識を問われる検定 |
旅行地理検定 | 旅行先の地理や観光情報に関する知識を問われる検定 |
世界遺産検定 | 世界遺産に関する知識を問われる検定 |
上記のような資格があれば、観光に関する専門的な知識があることの証明になります。
例えばツアープランナーを目指す場合、旅行業務取扱管理者や夜景観光士検定の資格があれば就職で有利に働くこともあるでしょう。旅行会社への就職を考えている人は、このような資格を取得しておくのもおすすめです。
観光学を学ぶことで目指せる主な就職先5つ
ここでは観光学を学ぶことで目指せる就職先について紹介します。実は観光学を学んだ人の就職先は様々で、観光業界以外の仕事に就く人も少なくありません。
観光学を学んだ人が目指せる主な就職先は下記の5つです。
- ツアーコンダクター
- ホテルスタッフ
- ブライダルコーディネーター
- テーマパーのスタッフ
- グランドスタッフ
それぞれどんな仕事なのか、詳しく解説します。
1. ツアーコンダクター
ツアーコンダクターとは、団体旅行に同行して旅行を取り仕切る仕事のこと。「添乗員」とも呼ばれます。ツアー参加者が旅行を楽しめるように、観光先での移動手段や宿泊先の手配、スケジュール調整、現地の案内など、様々な業務をこなします。ツアーコンダクターになれば、観光学で学んだ様々な知識を活かしながら働くことができるでしょう。旅行中は交通機関の遅延や参加者の体調不良など想定外のトラブルが発生することも。あらゆる状況に対応できるよう、柔軟に動ける人が向いています。また海外旅行に同行する際には語学力も必要です。
2. ホテルスタッフ
ホテルのスタッフの仕事は受付業務をはじめ、レストランスタッフやドアマン、コンシェルジュ、バーテンダーなど多岐にわたります。いずれも接客業にあたるため、丁寧な言葉遣いや立ち振る舞いなどホスピタリティ精神が欠かせません。ツアー参加者をもてなすツアーコンダクターと宿泊客をもてなすホテルマンには通ずる部分もあるでしょう。観光地のホテルで働くことで、観光学で学んだ知識を活かせる場面も多いはずです。
3. ブライダルコーディネーター
ブライダルコーディネーターとは、結婚式の会場設定や招待状の手配、式当日の進行などを担当する仕事のことです。新郎新婦の希望をヒアリングしながら適切な提案を行い、一生に一度の晴れ舞台をプロデュースします。お客様を喜ばせるために尽力する点では観光業と重なる部分もあり、おもてなしの心が求められます。またブライダルコーディネーターになるには接客スキルだけでなく、美容やファッションに関する知識も欠かせません。
4. テーマパークスタッフ
テーマパークスタッフは、チケットやグッズの販売、アトラクションの案内、施設の管理といった様々な業務を担当します。テーマパークを訪れた人に楽しんでもらえるよう、イベントの企画や運営をすることも。来場者に楽しんでもらえるよう工夫する点では、ツアーコンダクターなどの観光業と通ずる部分もあるでしょう。テーマパークスタッフの業務は接客が中心ですが、清掃や保守管理など来場者と直接関わらない裏方の仕事もあります。
5. グランドスタッフ
グランドスタッフは、飛行機に搭乗する前の空港内でサービスを提供する仕事。飛行機のチケット発券や搭乗手続き、荷物の受付、搭乗の案内・誘導など様々な業務を行います。快適な空の旅を提供するためにはおもてなしの心をもって仕事を行うことが大切。空港は旅行者が大勢利用するため、観光業で学んだ知識やスキルを活かせる場面もあるでしょう。グランドスタッフとして良いサービスを提供するためには担当業務以外にも空港内のあらゆることを把握しておく必要があります。
観光学を活かした仕事をするのに向いている人の特徴3つ
観光学は経済や文化、歴史、語学など様々な観点から観光について研究する学問。そのため旅行が好きな人だけが専攻する学問ではありません。
観光学を学ぶことや、観光学を活かした職業に向いている人の特徴は下記の3つです。
- 日本の文化や歴史に興味関心のある人
- 人と会話するのが得意な人
- 新しい発見を探すのが好きな人
学び始めてから後悔しないためにも、自分は観光学に向いているのか、適性を知っておくと安心です。それぞれの特徴について、詳しく解説します。
1. 日本の文化や歴史に興味関心のある人
将来ツアーコンダクターになったり観光案内所で働いたりと観光業に携わる際には、観光客に日本の文化や歴史を伝える場面が必ず出てきます。相手に分かりやすく伝えるためには、まずは自分自身が文化や歴史について深い知識があることが重要です。旅行が好きなだけでなく、日本の文化や歴史に興味がある人や、文化や歴史を伝える活動をしたい人も観光学の仕事に適性があるといえるでしょう。
2. 人と会話するのが得意な人
人と会話するのが得意な人は観光関係の仕事に向いています。旅行会社やツアーコンダクターなど、観光業の仕事は人と直接接する機会が非常に多いです。実際に観光客と関わって案内したり、観光に関する情報を発信する役割を担ったりすることもよくあります。そのためどんな人とでも積極的にコミュニケーションを取れる人や人と話すことが得意な人にぴったりです。また外国語を使う仕事も多いため、語学力があると就職先の選択肢も増えるでしょう。
3. 新しい発見を探すのが好きな人
新しい発見を探すのが好きな人も観光学に向いているといえるでしょう。観光業に就職すると、旅行者としての立場ではなく、観光の案内や情報提供をする側に回ることになります。そのため、常に学ぶ姿勢をもち、知識をアップデートしていくことを楽しめる人は観光関連の仕事の適性があります。また日本の観光業はインバウンドも重視しているため、海外の人と関わることも多くあります。日本以外の人と交流することで、今までにない新しい文化や価値観を知れるかもしれません。
観光学と関連性のある学問は複数ある
観光学では観光地の名称や地域の特産品を学ぶだけでなく、地域の活性化や産業の発展などあらゆる方向から「観光」という現象について分析していきます。そのため観光学と関連性のある学問は多岐にわたります。
例えば、観光にまつわる産業について研究したい場合は経営学やマーケティングなどの知識がいりますし、地域の活性化を考えたいのであれば都市計画や都市工学、地理学などについて学ぶ必要があります。また文化に興味があるのなら歴史学や人類学、社会学が役に立つでしょう。
勉強したい分野や興味のある領域に応じて、様々な学問を組み合わせながら観光について学んでいくのが観光学なのです。
観光学を学びたい人が目指す進学先
高校卒業後は観光学を学びたいけど、どんな進路を選べば良いの?と悩んでいる学生さんもいるかと思います。
観光学を学ぶには、下記のいずれかの進路を選ぶと良いでしょう。
- 大学や短期大学で観光学について学ぶ
- 専門学校で観光学について学ぶ
それぞれどんな学科・コースに進学すれば良いのか、詳しく紹介します。
大学や短期大学で観光学について学ぶ
大学や短期大学で観光学を学ぶ場合は、下記の学科がある学校を探しましょう。
大学
- 観光学科
- 観光産業学科
- 国際観光学科
- 観光文化学科
- 英語学科
- 国際文化学科 など
短期大学
- 英語科
- 国際コミュニケーション学科
- 国際文化学科
- 観光学科 など
観光学を学べる学科名は、進学する学校によって異なります。観光学科や観光産業学科など学科名に観光がついているところだけでなく、文化や外国語について学べる学科でも観光について学ぶことができます。自分はどのような視点から観光について学びたいかを考えて、進学する学科を選ぶと良いですね。
専門学校で観光学について学ぶ
専門学校で観光学を学びたい人は、下記の学科がある学校を探すと良いでしょう。
- 英語科
- 旅行学科
- 国際観光学科 など
専門学校でも観光学を学ぶことはできますが、大学や短期大学と比較すると少し選択肢が減ってしまいます。大学と専門学校では卒業年数や学費も変わってくるので、あらゆる面を考慮に入れて、自分に合った進学先を選びましょう。
観光学を学べる学校の選び方
観光学は大学や短期大学、専門学校で学ぶことができますが、学校によって語学に力を入れていたり観光ビジネスに特化していたりと学びのカリキュラムは様々。取得できる資格も異なります。そのため進路を選ぶ際は、観光学を学べる環境が整っていることだけでなく、自分の目的に合うカリキュラムが用意されている学校を探すことが大切です。
観光学を学べる学校を選ぶときには、下記の3点を意識しましょう
- 自分が通える範囲に観光学を学べる学校はあるか
- 大学・短期大学と専門学校のどちらで学ぶか
- 自分が取得したい観光学に関する資格を取得できるか
どんなことに注意すれば良いのか、それぞれ詳しく解説します。
1. 自分が通える範囲に観光学を学べる学校はあるか
進学先を探すにあたり、自分の行きたい学校が通学可能範囲にあるとは限りません。そのため、まずは自分が通える範囲にある観光学を学べる学校をピックアップしてみると良いでしょう。下宿を考えている場合も、自分が一人暮らし可能な地域にある学校に絞って探しましょう。あらかじめ通学範囲を絞って探すことで、ある程度選択肢が絞れるので、進学先を決めやすくなります。
2. 大学・短期大学と専門学校のどちらで学ぶか
観光学を学べる学校には大学・短期大学と専門学校の2種類があり、どちらで学ぶかを決める必要があります。大学・短期大学と専門学校の主な違いは、選べる学科・コースやカリキュラムの内容です。学校にもよりますが、一般的に大学では経営や政策、産業など様々な視点から観光について幅広く学ぶことができます。専門学校では観光業界に就職した際に即戦力として働けるよう、実践的なスキルを養うカリキュラムが組まれている傾向があります。通う年数や学費も異なるので、様々な点を考慮に入れながら自分の目的に合う学校を選びましょう。
3. 自分が取得したい観光学に関する資格を取得できるか
観光学に関する資格はいろいろありますが、学校によって取得できる資格は異なります。そのため進路を選ぶ際には、どんな資格を取得できるカリキュラムがあるのかを確認しておきましょう。一般的に大学・短期大学は資格取得のためのカリキュラムが少ない傾向にあるため、資格取得を目指す場合は自主的に勉強することも重要です。
自分の目指す学校でどんな資格が取得できるのか気になった場合は、「進路ナビ」で検索が可能です。資格名を選択するだけで、その資格を取得できる学校が一覧できます。ぜひチェックしてみてください。
総合旅行業務取扱管理者の資格取得が目指せる
大学・短期大学(短大)・専門学校一覧 [全国]
観光学を学べる学校を探すなら進路ナビの利用がおすすめ
地域活性化やビジネス、歴史、文化、語学など様々な観点から観光という現象を分析していく観光学。興味のある分野から観光について研究する中で、幅広い教養・知識を身に付けることができるでしょう。
「進路ナビ」検索機能を利用すると、観光学について学べる学校やカリキュラムなどが掲載されている資料を請求できます。また興味のある分野や通学希望エリアを選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。
「進路ナビ」では、観光学を学べる大学や専門学校を紹介しています。
観光学を専門的に学ぶため、以下のページから大学や専門学校を探してみましょう。