私たちの生活に身近な「経済活動」。これはモノを生産や購入、消費する活動のサイクルのことを指します。この経済について、高校卒業後、大学や短大、専門学校で学びたいと考えている方もいるのではないでしょうか。経済学を専攻することで、経済の歴史や仕組みをさまざまな視点から学ぶことができます。この記事では、実際に経済学を学びたい方へ向けて、通った方がいい大学・学部についてもまとめましたので参考にしてみてください。
経済学とはどんな学問?
経済学とは、人が暮らしていく上で欠かせない経済活動を多角的な視点で研究する学問のことです。具体的には、個人や企業、政府などの意思決定や社会全体の動きのデータを使って分析していきます。経済学にはマクロ経済学とミクロ経済学の視点があります。マクロ経済学は、国レベルでの景気動向や経済成長について研究する学問です。一方、ミクロ経済学では個人消費や企業活動について分析します。
経済学では、経済活動を行う個人や企業だけでなく、経済活動が行われる場所・ジャンルごとに専門性のある分野に分けられます。発展論、財政学、金融論、貿易論、産業組織論、厚生経済学、環境経済学、都市経済学など、幅広い分野に細分化されています。
実際に経済学を学びたい方へ向けて、通った方がいい大学・学部についてもまとめましたので参考にしてみてください。
経済学では何を学ぶの?
経済学では、私たちの生活がどのような仕組みで成り立っているのか、経済を通じて社会全体が形作られていく過程を踏まえながら学んでいきます。学問としての経済学を大きく分けると、「理論経済学」「応用経済学」「経済にまつわる思想や歴史」の3つがあります。それぞれどのようなことを学ぶのか、見ていきましょう。
理論経済学
理論経済学とは、経済活動をモデル化し、経済の現象や仕組み、法則性などを分析していく学問です。モデル化することによって、確率やデータ化できない人の気持ちを伴う活動や非合理的な動きも分析できるようになります。理論経済学は「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」に分けられます。
ミクロ経済学では、個人や企業など個々の行動や意思決定が経済の仕組みや法則性にどのように影響するのかを分析します。例えば、商品の価格がどのように決められるか、モノやサービスがどのように企業や家計に行き渡るかなど、個々の経済行動に焦点を当てて研究を行います。
一方、マクロ経済学では、国や経済社会全体といった広い視点で景気の動向などの経済の仕組みを分析する学問です。物価や消費、生産、金融などが研究対象になります。普段ニュースや新聞で耳にする景気動向や為替変動、失業率などもマクロ経済学の要素です。マクロ経済学を学ぶことで、視野を広く経済活動を分析できるようになります。
応用経済学
応用経済学とは、理論経済学で学んだことを実際の経済に合わせて考える学問です。応用経済学には、労働経済学や国際経済学、公共経済学などが含まれます。例えば、労働経済学では労働市場における問題点を分析し、給与や失業率の改善、雇用形態など労働問題の解決につなげます。
経済にまつわる思想と歴史
経済学には、経済活動の分析だけではなく、経済学そのものの思想や歴史を学ぶ学問があります。経済史や経済思想、政治経済学などが含まれます。例えば、経済史は、過去の記録や文献の情報をもとに、経済社会がどう発展してきたか、何が変わったのかを読み解いていく学問です。研究分野は日本や中国、アジア、欧米など、対象となる地域によって分けられます。また、経済思想では、経済学者が提唱していた思想を読み、現代の経済学に活かしていきます。
どのような人が経済学を学んでいるの?
経済学を学んでいる人とは、どのような人なのでしょうか。ここでは、経済学に向いている人の特徴を紹介します。
人々の経済的な行動や心理に関心がある人
経済活動において、人や企業は最大限の利益を得るために日々行動しています。しかし、私たちが行う経済活動は必ずしも合理的とは限らず、人の心理や感情が大きく影響しています。経済学では、そういった人々の経済行動や心理を分析し、これからの経済活動に活かす方法を研究します。そのため、人々の行動や心理に関心があり、分析することが好きな人や、分析した結果をどう生かすのかを考えることが好きな人は、経済学に向いているといえるでしょう。
経営や起業に興味がある人
経済学を学ぶことで、財政政策やお金の流れ、企業の経営状況の分析、消費者の行動など、経営者になる上で必要な知識を身につけることができます。そのため、経済学は経営や起業に興味がある人にも向いている学問です。将来、国や自治体の財政に関わる業務に就きたい人、企業の経営面に携わりたいと考えている人、自分で起業したいと考えている人などは経済学を学ぶとその知識が役立ちます。
数学的な思考や数式に苦手意識がない人
経済学では、思想や理論を学ぶだけでなく、情報やデータを分析します。分析をする際には、数式やグラフを使用するため、数学的な思考ができる人、数式に苦手意識がない人のほうが向いています。経済学は文系というイメージもありますが、実際には数学的な考え方も必要になるため、高校在学中からしっかり勉強しておくことが大切です。
社会の中での経済活動についてより深く理解したい人
私たちが豊かな生活を送る上では、社会的な経済活動が欠かせません。例えば、多くの人は働き、給料をもらい、手に入れたお金で生活に必要なものを購入します。さらに、納税をしたり、ローンを組んだり、投資をしたりすることで、社会の中でお金が循環していくのです。経済学では、このように日々行われている経済活動について分析していきます。そのため、お金の流れに興味があり、より深く理解したいと考えている人に向いているでしょう。
卒業後の選択肢を限定したくない人
経済学を学んだあとは、さまざまな進路を選択できます。就職先が特定の業種に限定されないため、卒業後の選択肢がはっきり決まっていない人にもおすすめです。金融やメーカー、公務員、商社など、さまざまな業界で活躍できるため、将来の選択肢を広く持っておきたい人におすすめな学問です。
経済学で学んだことを活かせる業界や職種
経済学を学ぶことで、幅広い業界、職種で活躍できます。ここでは、卒業後の進路をイメージしやすいように、経済学で学んだことを活かせるおすすめの業界や業種を紹介します。
おすすめの業界
経済学を学ぶことで、会社で働く上で必要な知識が身につきます。特に、金融業界や商社へ就職する人が多くいますが、経済学の知識は基本的にどんな業界でも重宝されます。企業が事業を進める上で、経済や財務に関係することは欠かせない要素だからです。ここでは、経済学を学びたいと考えている方におすすめの業界を紹介します。
金融業界
経済学を学んだ人に人気の就職先として金融業界が挙げられます。銀行や証券、保険などの業界は、経済学で学んだ知識を活かせる場面が多い業界といえるでしょう。特に、メガバンクと呼ばれる大手銀行は経済学部の学生に人気の就職先です。また、地方銀行や証券会社、政府関係金融機関のほか、外資系の金融機関で活躍する人もいます。
商社
商社とは、国内や海外の商品・サービスを取り扱う、卸売業です。さまざまな原料や素材、製品などを調達して販売するのが商社の役割です。海外から原料を調達している企業も少なくないため、経済学だけでなく貿易や流通の知識がある人に向いています。商社には特定の分野に限定せずに商品やサービスを取り扱う総合商社と、特定の商品やサービスを取り扱う専門商社があります。
メーカー
メーカーとは、自社で製品を生産・販売している会社のことです。ひとことでメーカーと言っても、扱っている製品は食品や電子機器、文房具、自動車など多岐にわたります。また、商品の企画から製造まで一貫して担当するところもあれば、特定の製品を加工・組み立てするところもあり、メーカーによって担当する工程はさまざまです。経済学を学んだ人がメーカーに就職した場合、財務や経理のほか、企画やマーケティングなど、さまざまな分野で活躍できます。
情報通信・IT業界
情報通信やITは人々の暮らしに欠かせないサービスです。ハードウェアやソフトウェア・アプリケーションの開発、情報処理、Webサービスなど、さまざまなサービスを提供しています。システムエンジニアやプログラマーなど、技術職が多く活躍する業界です。ベンチャー企業や成長中の企業であれば、経営者に近い目線で経済学の内容を活かすことができます。
コンサルティング業界
企業の経営戦略やマーケティングなどに関するコンサルティングを行う業界でも、経営学で学んだ知識が活かせます。コンサルティング業界には、経営戦略系や財務・会計系のほか、IT系、シンクタンク系、監査法人系、総合系など、数多くの分野に分かれています。経済に関する知識だけではなく、分析をするために必要な考え方や戦略の立て方が役立ちます。
公務員
経済学部を卒業して公務員になる人も少なくありません。国や地方自治体でも経理や財務に携わる業務があるため、そういった部門で経済学の学びが役立ちます。また、教員や税務職員、警察官などに就く人もいます。
おすすめの職種
次に、経済学で学んだ知識を活かせるおすすめの職種を紹介します。新卒の総合職採用では特定の職種に限定した求人は多くありませんが、企業によっては職種別に求人を募集しているケースもあるため参考にしてみてください。
営業職
営業職とは、自社の商品やサービスを顧客に提案し、新しい顧客を獲得したり商品やサービスを売り込んだりする仕事です。経営学では人の経済活動における心理や行動について学べるため、営業職でも身につけた知識を活かせます。営業職ではさらに、コミュニケーション能力やマーケティングの知識のほか、商品やサービスに対する深い知識も必要になります。
会計・経理
会計・経理は、企業の資産や収支を管理し、帳簿付けや税務申告などを行う仕事です。経済学を学んだ人の中には、在学中に簿記や会計士などの資格を取得し、会計や経理の仕事に携わる人も多くいます。また、企業内の会計・経理部門だけでなく、得意な知識を活かして会計士や税理士などの専門家として活躍する人も多くいます。
マーケティング
マーケティングとは、市場の動向や消費者の傾向、広告宣伝の手法などを分析し、商品やサービスを売り込む仕事です。営業職とは異なり、直接顧客と商談するのではなく、データ分析や新しいアイデアにより商品やサービスの認知度を高めていきます。近年ではインターネットを通じたマーケティングが主流です。そのため、Webやデータ解析などの知識も必要になってきます。
商品企画
商品企画とは、既存の商品を改善したり、新しい商品を生み出したりする仕事です。消費者のニーズが多様化する中、他社と差別化できる商品やサービスが求められています。新たな商品やサービスを世に送り出すためには、企画力や発想力、忍耐力が必要です。さらに、製造やマーケティング部門とも連携しながら、アイデアを商品化していく実行力も求められます。
コンサルタント
コンサルタントとは、顧客が抱える課題をヒアリングし、その解決に向けた施策を提案する仕事です。経営や財務、ITなど、分野によってさまざまな種類があります。コンサルタントには高い専門性が求められるため、高度な知識と十分な経験が必要です。
経済学を学ぶとしたらどこがいいの?
経済学は、大学、短大、専門学校などで学べますが、学校によって扱っている学部に違いがあります。経済学部にある主な学科は次の通りです。自身が学んだことを活かせる業界や職種を見据えた上で、希望に合った学科のある学校を選択しましょう。
経済学科
経済学部経済学科では、経済学の基礎的な知識を身につけられるだけでなく、それぞれの学校の特色に合わせたカリキュラムを受講できます。経済学の基礎としては、経済問題や社会課題をテーマとして扱う授業が多くあります。そのほか、観光や地域創生、地域政策など、さまざまな課題をテーマに考察・研究します。また、近年では、基礎的な経済学に加え、データサイエンスやAIについて学べる学校も多くなっている傾向です。学校によって特色が異なるため、ホームページやパンフレットで確認してみましょう。
国際経済学科
国際経済学科では、国際的な経済や産業、金融、地域経済などを学べます。基本的な経済理論や情報処理能力だけでなく、語学に力を入れている学校も少なくありません。英語や中国語など、外国語によるコミュニケーション力を身につけたい人にも向いています。将来の進路・就職先としては、貿易や観光、流通など培った国際感覚を活かせる仕事のほか、企業の海外事業部門、外資系企業など、幅広い選択肢があります。
総合経済政策学科
総合経済政策学科では、国や地方自治体の政策、企業の経営戦略、地方の財政問題など、さまざまな課題をテーマに経済問題を学びます。学校によっては、フィールドワークや実習形式で実際に国や地域が抱える課題を研究することもあります。将来の進路・就職先としては国家公務員や地方公務員、金融、証券、商社などへの就職が人気です。在学中に中小企業診断士や公認会計士、FP技能士などの資格取得を通じて、専門的な知識を身につける学生も多くいます。
産業経済学科
産業経済学科では、基礎的な経済理論や経営のほか、調査や分析、実証などを通じて実践的に経済について学べます。ITやデータ分析など、近年企業からのニーズが高いスキルを習得できることも強みです。また、起業家を育成するカリキュラムや地域イノベーションについて学べるカリキュラムなど、学校によっても特色が異なります。実習やフィールドワークに力を入れている学校もあり、産業界で活躍するための実践的な知識やスキルが身につけられます。
現代経済学科
現代経済学科では、基礎的な経済理論と統計学をもとに、経済問題を分析していく力を身につけられます。現代経済学科で学べる主な専門分野は、経済政策、金融、経済理論、企業産業などです。経済政策では、国や自治体の政策について学び、分析します。金融は、金融システムや金融政策などについて学ぶ分野です。経済理論では、経済理論や統計学を専門的に学びます。また、企業産業では、企業と産業構造について分析していきます。
まとめ
経済学部は、基礎的な経済理論のほか、統計学や経済政策、地域経済、金融、データ分析など、さまざまな分野を幅広く学べる学部です。学科の種類が多く、自分が取り組みたい分野に集中して学べるので、経済学に興味を持ち始めた段階の人も自分に合った学科に出会えるでしょう。
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