救急看護師になるには?仕事内容や就職先、進路の選び方を解説

急病や事故など救命救急の現場で働く「救急看護師」。将来の進路を考えている学生さんの中には救急看護師として働きたいと思っている方もいるのではないでしょうか。救急看護師とは具体的にどんなことをする職業なのか、看護師資格以外にも必要な資格があるのかなど、気になりますよね。この記事では救急看護師に興味を持っている学生さんに向けて、救急看護師の仕事内容や就職先、必要資格、給料などを紹介します。ぜひ進路を選ぶ際の参考にしてみてくださいね。

救急看護師は国家資格があれば誰でも目指せる

救急看護師になるには、看護師免許以外に特別な資格はいりません。看護師の国家資格があれば誰でも救急看護師を目指すことができます。高校卒業後に看護師免許を取得するまでのイメージを下記の図にまとめました。

高校卒業後に看護師免許を取得するまでのイメージ図

看護師の国家資格受験資格を得るためには、高校卒業後、大学や短大、専門学校など看護師の指定養成施設に進学する必要があります。専門的な知識と技術を学んだあと、看護師試験を受験し、合格すれば看護師免許を取得できます。高校卒業後に准看護師養成学校に進学して准看護師になることもできますが、救急看護師は高い知識と看護技術が求められるので正看護師免許は必須と言えるでしょう。

看護師免許取得後は、救急以外の科で経験を積んでから救急看護師を目指すことが一般的です。救急看護では様々な症状、疾患を扱う上、緊急度や重症度も高い患者に対応しないといけないため、迅速な判断力、幅広い知識やスキルが必要です。そのため新卒の看護師など未経験者がいきなり救急看護を行う部署に配属されることは少ないでしょう。まずは一般病棟などで一定の看護経験を積んでから、異動や転職で救急看護師を目指しましょう。

救急看護師が専門性を高めるために取得する資格

救急看護師になるために特別な資格は必要ありませんが、看護師としての専門性を高める下記のような資格を取得することで業務の幅が広がります。

資格の種類資格の内容
認定看護師特定の看護分野について熟練した技術と知識があることの証明。他の看護師に対する指導や、相談相手になれる。
専門看護師患者やその家族に対して質の高いケアを行うため、専門分野の知識や技術を備えていることの証明。患者本人だけでなく家族や地域と連携してケアを行うことができる。
BLS心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置のスキルを習得できる。
ACLS病院など医療施設において医療従事者のチームによって行われる高度な二次心肺蘇生法スキルを習得できる。
JPTEC外傷病院前救護ガイドラインの略で、外傷現場において適切かつ迅速な観察を行い、「防ぎえた外傷死」を防ぐための病院前外傷教育プログラム。

「認定看護師」と「専門看護師」は日本看護協会に認定された看護資格です。認定看護師は、特定分野において深い知識と技術を持ち、患者へ質の高いケアを実践するほか、他の看護師へ指導をしたり相談相手になったりします。看護師免許を取得後、実務経験5年以上(うち3年以上は認定看護分野での実務研修)を行うことで、認定看護師認定審査の受験資格を得ることが可能です。
専門看護師は認定看護師よりも専門性が高く、患者のケアだけではなくその家族に対しての看護の質の向上を図る役割があります。また現場の人材育成や調整などにも携わります。専門看護師になるには看護系の大学院を修了している必要があります。「BLS」「ACLS」「JPTEC」は、心肺蘇生や救急外傷に関する知識を学べる資格です。質の高い救急看護を提供できるよう、救急看護師を目指す人は取得しておくことをおすすめします。

救急看護師の主な仕事3つ

救急看護師は看護師免許があれば目指せる職業ですが、具体的にどんな仕事をするのでしょうか。そもそも救急看護とは、「さまざまな状況において突然に生じた傷害または急激な疾病の発症や急性増悪等によって、医療を必要とする人々に対する迅速かつ適切な看護実践をいう」(日本救急看護学会 2022年)と定義されています。このように、救急看護師は急な交通事故や病気など突発的な傷害や症状に対する看護を行います。基本は救急外来で対応しますが、場合によっては災害現場など医療施設以外で看護を行うことも。予期せず発生した様々な症状や傷害に対して迅速に看護を行うという点が、救急看護師の仕事の大きな特徴です。ここからは救急看護師が行う主な仕事を3つ、詳しく紹介します。

初期治療、トリアージ

救急看護師は、事故や病気で救急搬送された患者の初期治療や各検査の補助を行います。意識状態や血圧、心拍数を確認して救急蘇生措置や酸素投与、点滴など適切な対処を施さなければいけません。また初期治療とともにトリアージも行います。トリアージとは、病院に到着した救急患者の容態を確認し、処置の優先順位を決めることを指します。患者の命に関わる判断を下すため、医師や救急救命士が行うことが多いですが、救急医療施設では経験を積んだ看護師が行うこともあります。

処置・医師の補助

医師のサポート業務はどの診療科でも実施される看護師共通の業務ですが、救急看護師は中でも緊急度・重症度の高い患者に対する処置の補助を行います。そのため医師の指示に従うだけでなく、患者の状態を迅速かつ正確に判断し、必要な看護を実施する必要があります。救急患者の処置では数分の遅れが命取りになることもあるため、容態や状況をよく確認しながら臨機応変に判断していくことが重要です。

患者家族へのケア

患者の家族に対するケアも救急看護師の大切な仕事です。突然の事故や病気で気持ちが追い付かず、パニックに陥ったり情緒不安定になったりする家族も少なくありません。救急看護師には、患者家族の気持ちに寄り添いながら冷静に今の容態や今後の見通しを伝えるといった丁寧なコミュニケーションが求められます。このような業務の他に、救急患者がいない際は一般外来のサポートに入ったり、救急看護に関する研究を行ったりと救急看護師の業務は多岐に渡ります。

救急看護師の就職先3つ

救急看護師の仕事内容については分かったものの、実際にどのような場所で働くのか気になっている人に向けて、救急看護師の主な就職先を3つ紹介します。

初期救急医療施設

初期救急医療施設とは、比較的軽症の救急患者への夜間や休日の外来診療を行う「休日夜間急患センター」などの、入院や手術を伴わない医療を行う施設です。自力で医療機関を受診することができる患者を対象としていて、初期救急医療施設では、対象者の健康状態に応じた適切な救急医療を提供します。軽症患者が中心ですが、中には急を要する症状、傷害もあるため、迅速かつ適切な対応が必要です。

二次救急医療施設

二次救急医療施設は、入院や手術が必要な重症患者を24時間体制で受け入れている施設です。救急患者への初期治療や応急処置を実施し、施設内で対応できる範囲で高度な専門診療も行います。施設内で対応が難しい患者の場合は、速やかに救命救急医療を行う医療機関へ紹介・転送することも。二次救急医療施設では、初期救急医療施設や救急患者の搬送機関と連携しながら、重症患者の医療を確保し、高度な医療を提供します。

三次救急医療施設

三次救急医療施設は、生命に関わる重症患者に対応する「救命救急センター」などの施設を指します。緊急性・専門性が高い、もしくは複数の診療科にわたる幅広い疾患の患者を24時間体制で受け入れ、最も高度な救急救命医療を提供します。第三次救急医療施設は、他の医療機関で対応できない重篤な患者を担当し、地域の救急患者を最終的に受け入れるという役割があります。

救急看護師として働くには、まずは一般病棟などで数年間実務経験を経てから、救命救急センターに配属されるという流れが一般的です。救命救急センターが設置されている関連病院を持つ大学や専門学校の場合は、就職に有利になる可能性もあります。詳しくはこちらの質問をご覧ください。

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救急看護師は病院以外でも活躍できる場所が多い

救急看護師の仕事に興味のある学生さんの中には、「救急看護師に将来性はある?」と気になっている方もいるでしょう。医療は人が生きていく上で必要不可欠であり、看護師の需要がなくなることは考えづらいでしょう。さらに近年、新型コロナウイルスの流行や歴史的な物価高、少子高齢化による労働人口の減少など様々な要因で、看護師は慢性的に不足しています。中には看護師が見つからないために、入院病床を一部閉鎖する病院も出てきています。

また看護師免許があれば、以下のように病院以外でも働ける場所は多数あります。それぞれどのような職場なのか、紹介していきます。

企業の産業看護師

看護師免許があれば、一般企業の産業看護師として勤務することができます。産業看護師の主な業務は働く人々の心と体の健康管理、職場環境の改善などの提案です。

介護・福祉施設の看護師

看護師は介護・福祉施設で働くことも可能です。介護・福祉施設で働く看護師には、お年寄りの健康管理やリハビリ・看護・介護等を行い、療養生活を支える重要な役割があります。

教育機関での看護師

保育園や特別養護学校などの教育機関も看護師が活躍できる場の一つです。看護師免許取得後、養護教諭指定の保険学校または大学の別科で1年間学ぶと小・中・高等学校の養護教諭の免許を取得できます。

美容クリニック

看護師は、美容皮膚科や美容外科など美容クリニックで働くこともできます。美容クリニックの看護師は、レーザー照射や美容注射などの施術をしたり手術におけるオペ介助をしたりします。

健診・検診センター

看護師免許があれば、健康診断を行う健診センターや特定の疾患の早期発見を行う検診センターでも勤務できます。時間外勤務や夜勤がないためプライベートを充実させたい人に人気の就職先です。

献血センター

献血ルームや献血センターも看護師免許を活かして働ける場です。主な仕事は採血業務ですが、献血後に気分が悪くなった人への救護対応も献血看護師の重要な役割です。

救急看護師を目指して勉強したことや救急看護師として働いた経験はどの職場に行っても活かすことができるはずです。看護師は、病院以外にも活躍の場は多数あり、今後も引き続き高いニーズが見込まれる職業だと言えるでしょう。

救急看護師に向いている人の特徴5つ

緊急性・専門性の高い患者のケアを行う救急看護師ですが、自分に救急看護師の適性があるのかどうか気になりますよね。ここからは救急看護師に向いている人の特徴を5つ紹介します。

体力がある人

体力やスタミナのある人は救急看護師に向いていると言えます。救急看護師は365日24時間体制で複数の患者対応をするため、昼夜問わず全力で動ける体力が必要です。また突然の病気や怪我で情緒不安定になる患者や患者家族も多く、救急看護師は患者やその家族のメンタルケアやクレーム対応などでもストレスを抱えやすいため、心身ともにタフな人が向いているでしょう。

テキパキと動ける人

テキパキと手早く、要領よく動ける人は救急看護師の適性があるでしょう。救急看護の現場は一刻を争う容態の患者も多く、常に時間との戦いです。常に冷静さを保ち、的確な判断を下しながらスピーディーに対応していくスキルが求められます。

コミュニケーション力がある人

救急看護師は医師や他の看護師など多くの人と関わるため、コミュニケーション力が必須です。特に緊急性の高い救命救急の現場ではスムーズなコミュニケーションをとれるチームワークが重要になってきます。また救急看護師は患者やその家族と信頼関係を築くことも大切です。相手の気持ちに寄り添いながら適切なケアを行なえる人が理想です。

気持ちの切り替えができる人

救急看護師は生死と向き合う仕事。どんなに力を尽くしても助からない命もあり、悲しみに暮れる家族の姿を見るのは非常に辛いものがあります。しかしそんな中でも救急看護師はすぐに次の患者対応をしないといけません。救急看護師になるには、すぐに気持ちを切り替えられるマインドを持っていることが大切です。

向上心がある人

常に向上心を持って仕事や勉強ができる人は救急看護師に向いています。救急看護師は幅広い疾患への知識や処置スキル、看護技術、医療機器の使用方法などを学び続けていく必要があります。また医療は常に進歩しているため、知識のアップデートも欠かせません。救急看護師になった後も医療について日々勉強していく姿勢が必要です。

救急看護師の年収相場は約500万円

看護師は専門職のため比較的給料が良いイメージを持つ方も多いかもしれません。では、救急看護師の平均年収はいくらくらいなのでしょうか。令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師全体の平均年収は508万円でした。一方、救急外来看護師の求人を見てみると、年収相場は約5,024,338円となっています(2024年1月16日時点)。
参考:看護師給料検索結果|ナースなワタシのお給料

看護師の給与は、同じ職場でも本人のスキル、夜勤手当、休日手当などによって変動します。救急看護師は一般的に支給される手当に加えて、特殊勤務手当やオンコール手当などが支給されるため、看護師の中でも少し給与が高くなりやすいでしょう。

救急看護師を目指す人の学校の選び方

救急看護師になるには、看護師免許を取得できる大学や短大、専門学校に進学しましょう。どの学校を選んだとしても、新卒でいきなり救命救急の現場で働ける可能性はほとんどありません。まずは一般病棟などで経験を経てから救命救急センターなどへ配属されることが一般的です。そのため進学先は、自分が目指すキャリアをベースに考えてみましょう。例えば、看護師資格を取得できる短大や専門学校は就学期間が3年と短いため、少しでも早く社会に出て働きたい、学費を抑えたいと思っている人におすすめです。一方、看護や医療についてじっくりと学びたい人は大学へ進学することをおすすめします。大学によっては助産師や保健師の資格を取得できる場合もあるため、興味のある人は確認しておきましょう。
進学先を選ぶ際には「附属病院の有無」「国家試験の合格率」についてもチェックしておくことで、看護師になれる確率が高まります。また、救命救急に関連しそうな科目(急性期看護学など)を積極的に選び、入職後に救命救急科への配属を希望すると、将来的に救命救急センターに配属されやすくなるかもしれません。自分が学びたい分野、学ぶ期間や学費との兼ね合いも考慮に入れて進学先を選択しましょう。

看護師免許を取得できる学校を探そう

新型コロナの影響や労働人口の減少など様々な社会問題によって慢性的な人手不足に陥っている看護師ですが、救急看護師も例外ではなく、今後も社会から必要とされる職業です。看護師免許があることで病院以外の就職先の幅も広がります。

進路ナビでは救急看護師を目指せる大学や専門学校を紹介しています。救急看護師になるためには、看護科のある専門学校を卒業するか、大学や短期大学の看護学部を卒業し、看護師の国家資格を取得する必要があります。実際の学科については各校の情報を調べてみないと分からないため、まずは「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求をして、各校のパンフレットを取り寄せてみましょうす。他にも、「進路ナビ」でLINE登録をすると、「お役立ち情報」や「適性・適職診断」が出来るため、是非登録し活用してみてください。