宇宙に興味を持つも、好きな生物分野に進路を決定
宇宙に興味を持ったきっかけは、高校1年生の時に毛利衛(まもる)さんがスペースシャトルに乗ったことでした。ただ、宇宙に関する勉強をしたいとまでは考えていませんでした。進路選びに関しては、生物や化学が好きで、特に高校で学んだDNAや遺伝のことがとても興味深く、生物分野へ進もうと決めました。そこで、国立・私立にかかわらず、生物関係の学科がある大学を選んで受験しました。
オールジャパンの力を結集し、 放射線から宇宙飛行士を守る
2001年、宇宙開発事業団(現:宇宙航空研究開発機構)入社。現在は、地球観測衛星を使った事業に関わっている。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)
宇宙に関する仕事を幅広く手がけている宇宙航空研究開発機構(JAXA)。矢部志津さんは、衛星から観測した雨の量を洪水予測に使うなど、衛星技術をアジアの途上国の人々に使ってもらおうという仕事をしています。現在の仕事に携わる前は、宇宙飛行士の健康管理を担当していたという矢部さん。どのような経緯で、今の仕事に就いたのかをうかがいました。
宇宙に興味を持ったきっかけは、高校1年生の時に毛利衛(まもる)さんがスペースシャトルに乗ったことでした。ただ、宇宙に関する勉強をしたいとまでは考えていませんでした。進路選びに関しては、生物や化学が好きで、特に高校で学んだDNAや遺伝のことがとても興味深く、生物分野へ進もうと決めました。そこで、国立・私立にかかわらず、生物関係の学科がある大学を選んで受験しました。
中学・高校と女子校で、理系に進む生徒が多かったこともあり、理系を選択することには何の抵抗もありませんでした。もし、共学の学校に通っていたら、理系に進まなかったかもしれません。私は物理や数学が苦手だったので、それらの教科が得意な男子が多かったら、文系を選んでいたかもしれませんね。
就職活動をするまで、JAXA(当時はNASDA)の職員になるのは宇宙工学を学んだ人だけだと思っていました。しかし調べてみると、生物を専門に学んだ私でも募集枠があることがわかりました。自分が好きな生物と興味があった宇宙が一緒に合わさる仕事であったので「面白そう」と思い、第一志望として応募しました。JAXA職員の経歴は多様です。有名大学出身者ばかりではなく、人物や能力重視で、高専出身の方もいます。ただ、系統としては、理系出身者が多いのは確かですね。
入社してから8年間は、宇宙飛行士の健康を守る仕事をしました。宇宙では、地上と違って大気がないため、太陽や超新星爆発からの有害な放射線が宇宙飛行士に直接照射されます。そこで、何日までの滞在なら大丈夫なのかを検討し、ルール決めなどをしました。私が担当したのは、国際宇宙ステーションに日本人で初めて長期滞在した若田光一さんでした。日本の放射線に関する技術は進んでおり、大学の先生や外部の研究所、専門家の方たちと協力し、日本全体で力を合わせて宇宙飛行士の健康管理をするという仕事を組み立てていくのが面白く、醍醐味を感じました。
テレビに映るのは宇宙飛行士ですが、JAXAに入社して、実はその裏で「宇宙飛行士の人数×何千人」という人が支えていることがわかりました。そう考えると、むしろ、テレビには映らない人のほうがメインといってもいいのかもしれません。
自分の好きなことがあれば、それを突き詰めていくのがいいと思います。私が両親や高校の先生に感謝しているのは、好きなことをやれるように、何も言わず見守ってくれたこと。「この分野に進んだほうがいい」などと、押しつけられることなく、純粋に自分の好きな分野に進み、それを仕事にすることができました。そう進んでいくことで後悔も残らないと思います。みなさんが、自分の好きな分野や仕事に出会えることを願っています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)とは…
小惑星「イトカワ」から微粒子を持ち帰った探査機「はやぶさ」や「H-Ⅱロケット」の開発などで知られるJAXA。宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う機関として、宇宙航空に関わるさまざまな活動を行っています。本社は東京都調布市。筑波宇宙センター、相模原キャンパス、種子島宇宙センターなど研究所・関連施設が多数あります。