歯科衛生士は、歯科医師と患者の間に立って歯の治療を補佐する職業。近年では、歯や口の健康が全身の健康と関係していることが様々な研究から明らかになり、歯科衛生士の役割に関心が高まっています。歯科衛生士の活躍の場は、歯科診療所や病院を中心に、幼稚園や学校、保健所、老人介護施設など、地域に大きく広がっています。ここでは、歯科衛生士を目指す方に向けて、歯科衛生士の専門学校の基本情報、短大・大学との違い、歯科衛生士になるまでの流れ、就職先、就職活動の進め方などをご紹介します。
歯科衛生士になるには、高校を卒業後、歯科衛生士養成施設(専門学校、短期大学、大学)で、必要な知識や技術を習得し、歯科衛生士国家試験を受験し合格しなければなりません。歯科衛生士養成施設は、専門学校と短期大学は3年制、大学は4年制となります。専門学校は、歯科衛生士や医療に特化したカリキュラムで歯科分野の授業が中心になります。
一方で、短期大学は、歯科分野以外に心理学や哲学、経済学などの一般教養科目も学びます。資格も、歯科衛生士の資格以外に、「ヘルパー2級」や「養護教員免許」などを取得できる短大もあります。大学でも、歯科分野以外に一般教養科目で英語やドイツ語、韓国語などを学ぶことができたり、社会福祉士や医療事務、教員免許など、他の資格を取得できたりする大学もあります。
歯科衛生士になるには「歯科衛生士国家資格」が必要になり、受験資格は文部科学大臣指定・都道府県知事指定の歯科衛生士養成所などで必要課程を修了後することで得られます。歯科衛生士になりたい人は、歯科衛生士養成所への入学を目指しましょう。具体的にどのような学校があるのか知りたい場合は、こちらの「進路ナビ:学校検索 歯科衛生士」のページをご覧ください。
進路を選ぶ時は、その学校で何が学べるのか、費用はいくらぐらいかかるかは重要なポイントです。東京都の歯科衛生士専門学校の場合、昼間のコースは、初年度納付金の平均額が118.9万円になります。短大は、初年度納入金額の平均は約158.6万円(※1)大学は約135.6万円(※2)になります。これらの納入金額には、教科書、被服費、研修・実習費などは含まれておらず別途費用がかかるため、詳しくは、各学校のパンフレット等やウェブサイト等でご確認ください。
進路ナビでは歯科衛生士を目指せる学校を検索し、資料請求をすることができます。詳しくはこちらの「職業から進路や進学先を考えよう!!歯科衛生士」のページをご覧ください。
入学金 | 228,000円 |
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授業料 | 669,000円 |
実習費 | 190,000円 |
設備費 | 39,000円 |
その他 | 64,000円 |
合計 | 1,190,000円 |
※その他にかかる費用として教科書、被服費、研修・実習費などがあります。
入学金 | 280,000円 |
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授業料 | 700,000円 |
実習費 | 145,000円 |
設備費 | 200,000円 |
その他 | 25,000円 |
合計 | 1,350,000円 |
入学金 | 281,889円~321,111円 |
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授業料 | 1,031,729円 |
実習費 | 180,556円 |
設備費 | 184,444円 |
その他 | 84,272円 |
合計 | 1,762,890円~1,802,112円 |
就職活動は、国家試験までに就職を決める方法と、国家試験が終わってから就職活動を行う方法があります。どちらの方法でも計画的にスケジュールを立てることが重要です。就職活動をいつまでに終わらせたいかを決め、そこから逆算して就職活動を始める時期を決めましょう。
歯科衛生士の国家試験は、毎年2月下旬~3月上旬に行われます。歯科衛生士の就職活動期間は3ヶ月程かかるため、国家試験前に就職を決めるには、多くの歯科医院は9月頃に来年の新卒採用の募集を開始するため、9月頃から開始するのがおすすめです。7~8月の夏休み期間中に歯科衛生士に向けた就職説明会が始まるので、それをきっかけに就活に備えるのがいいでしょう。歯科衛生士の資格が採用の条件になっているクリニックや会社などは、試験に合格できないと内定が取り消されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
国家試験までに就職を決めるスケジュール例
国家試験までは試験勉強に集中し、その後に就職活動を行う方も毎年一定数はいます。試験後から就職活動を初める方は4月1日入社は難しくなるので、4月を就職活動に充てて、5月からの就職を目指す方が多いようです。
国家試験が終わってから就活を行うスケジュール例
歯科衛生士は、学歴よりも仕事に対する適性を求められるので、専門卒と短大卒、大卒で仕事内容の差はなく、新卒の場合は給与の差もほとんどありません。
歯科衛生士の仕事は、狭い口の中の歯石をとったり、薬を塗ったりするなど細かい作業が多いので、細かい仕事も丁寧に続けられる根気強さが必要になってきます。その他にも、お客様に治療の流れを分かりやすく説明する能力や治療に不安を感じている人に安心感を与えるコミュニケーション能力、医師やスタッフと連携して円滑に仕事を進めるための協調性などが必要になります。
これらの適性があって、患者さんに信頼してもらえたり、職場で安心して仕事を任せてもらえたりすれば、能力給が上がる可能性も出てきます。
専門学校と短大・大学どちらがいいかというより、学んだことが職場でどれだけ活かせるかが重要になります。ただし、歯科衛生士資格を活かせる一般企業に就職した場合は、短大卒や大卒の初任給が高くなる可能性があります。
学校ごとの特徴は、専門学校は、歯科衛生士や医療に特化したカリキュラムの授業が中心になります。大学は、歯科衛生士を目指しつつも、仕事を選ぶ際の選択肢が広げられるよう、一般教養の講義も学ぶことができます。歯科衛生士を目指せる専門学校や大学の詳しい情報を知りたい方は「進路ナビ:学校検索 歯科衛生士」のページをご覧ください。
歯科衛生士の勤務先は、歯科診療所が最も多く、次いで病院、市区町村の保健所、介護老人保健施設の順に多くなっています。(※4)
以下、考えられる主な就職先です。
歯科衛生士の資格取得者のおよそ9割は、歯科医院や歯科診療所などで働いています。主な仕事は医師の診療のサポートや患者さんの口腔内のクリーニングなどです。他に、患者さんに歯の磨き方や口腔内の健康を保つため方法をアドバイスを行ったりします。
大学・総合病院では、一般の歯科治療に加えて口腔外科治療や、歯科以外の治療で入院している患者さんの口腔管理を行います。
歯科衛生士学校または養成所では、教員として歯科衛生士を募集している学校もあります。応募するには、歯科衛生士の資格を取得してから4年以上の実務経験が必要です。歯科衛生士の技術や知識を活かして、専門の授業、実習指導などを行います。
保健所では、歯の健康や疾病の予防を知らない人にどのように教えていくのか考え、企画を立てて実行することです。たとえば、学校や幼稚園で生徒に直接歯磨き指導をしたり、歯科保健を担当している方に研修会を行ったり、社会福祉施設で保護者・家族などを対象に歯科保健に関する講習会を行ったりします。
介護老人保健施設では、施設の利用者に対する歯磨き指導や、歯磨きの介助、お口の中の状態の観察、異常があった場合はかかりつけの歯科医に連絡するなどの業務を行います。口腔を清潔に保つことは、口の中だけでなく体全体の健康を保つことにもつながるため、近年は介護施設での歯科衛生士のニーズが高まっています。
歯ブラシ、液体歯磨き、デンタルフロスなど、オーラルケア製品を扱っている企業の中には、商品の研究開発職に歯科衛生士の資格取得見込み者を募集している会社もあります。他に企業で求められる歯科衛生士の役割は、営業や商品開発、所属企業が行うセミナーの講師、歯科医師や歯科衛生士向けのメディアの制作などがあります。
歯科衛生士の資格は国家資格であり、歯科治療におけるスキルや知識をもっているとされ将来性が高く、安定した職業と言われています。日本では歯科医院の数がコンビニの数より多いと言われており、歯科衛生士の求人数も多くあるので、資格を持っていればよい待遇の職場に巡り合えたり、結婚や出産で離職しても、再就職しやすいと言われています。また、高齢化が進む中で高齢者の健康維持に欠かせないものとしてて口腔ケアの重要性が高まっています。歯科衛生士は、口腔ケアを通して、健康づくりのサポートをすることができるので、介護老人保健施設における歯科衛生士のニーズが高まるなど将来性のある職業と言えます。
進路ナビでは、進路アドバイザー検定合格認定スタッフが、進路の関する相談にお答えしています。歯科衛生士の就活についてお悩みなどありましたら、こちらの「みんなの進路相談:歯科衛生士」のページをご覧ください。