「昭和ブーム」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

「若いあんたから見れば、頭の下げ方だの座敷の歩き方だのは、
どうでもいいことのように思えるだろうね。けれど、どうせなら覚えておきなさい。
礼儀の正しい人が嫌われることはないよ。
上の人からも可愛がってもらえるし……世の中って、そういうもんなんだ」
これは直木賞作家・朱川湊人さんの『春の悪魔』の中にある言葉です。

最近「Z世代の若者はマナーや礼儀がなっていない」等と言われることがあります。
しかし、常識をわきまえているはずの大人だって、
挨拶すらできない人がいるのも事実です。
そういえば、20年ほど前(2006年)に速水敏彦『他人を見下す若者たち』という本が
ベストセラーになりました。内容は、
「現代人は自分の体面を保つために、周囲の見知らぬ他者の能力や実力を、
いとも簡単に否定する。……このように、現代人の多くが他者を否定したり
軽視することで、無意識的に自分の価値や能力を保持したり、高めようとしている」
というもので、これは令和の若者にも当てはまっているように思います。
つまり「20年の間、若者気質は変わっていない」ということでしょう。
というより、かつては他人を見下す若者だった大人たちに育てられた今の若者が
礼儀やマナーを知らないのは、当たり前のことかもしれません。

ある調査によると、今の若者は「つきあいたくない人の特徴」として
こんなことを考えているようです。
 ○他人をバカにしていて、それを共有し同意させようとする。
 ○同意しないと不機嫌になる。
 ○小さいことでマウントを取ろうとする。
 ○話の内容のほとんどが愚痴か悪口。
 ○他人の意見は反射的に否定する。
若者たちだってイヤだと思っているんです、こんな人たちのことを。
しかし、自分だって知らないんですよ、礼儀やマナー、そして他人とのつきあい方を。
なぜなら、教えられたことがないのですから。
ならば、自分が「自分の嫌いなヤツ」にならないために、
どうすればいいかを考えてみたらどうでしょう。そのために、学校でも
「何が正しくて何が正しくないのか」、そして「礼儀やマナー、相手を慮る心」を
きちんと教えることが必要なのではないでしょうか。

昨今は「昭和ブーム」だそうです。昭和中期に流行した文化・デザイン、
レトロなファッション、雑貨やインテリアなど温かみのある雰囲気が、
Z世代を中心に注目を集めています。
しかし、昭和30年代生まれの私にとって昭和中期の一番は
「人と人とのつながりの豊かさ」です。
そして、その豊かさを支えていたのが、冒頭の朱川さんの言葉なのです。
そこで、私は願っています。空前の昭和ブームの今だからこそ、
モノやカタチばかりではない昭和の豊かさがブームになってほしいと。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/