「コンパクト・シティにおける学校配置と学校の『地域拠点性』(4)──地域特性を生かした学校配置」筆者・葉養正明

前回(2026年7月1日掲載)は、
学校再配置に際して「規模」に拘泥することの問題点に触れ、稿を閉じた。
論点として提起したのは、自治体内の設置学校数が1小学校、1中学校で、
かつ児童生徒数の減少が大きい場合の学校の持続の問題である。

小中学校の規模の「標準」を12~18学級とし、
それに拘泥して学校配置を検討する場合には、
自治体によっては子どもの就学を危うくする可能性が出てくる。
小中学校就学については、適正通学距離の縛りがあるからである。
一つの事例を取り上げると、東京都青ヶ島村の小学校、中学校の場合には、
村内の学校は小中併設校として1校のみになっているが、
2025年度の小学校児童数は5人、中学校生徒数4人である。
隣接する島と学校統合を考えるにしても、
最も近い島は八丈島であるが海上約60キロの距離がある。

文部科学省は、小中学校の適正配置、適正規模に関する手引き改訂で、
通学条件の縛りを緩和するために、通学距離に加え通学時間の要因を付加しているが、
青ヶ島のような事例では、さらに通学方法の問題が浮上する。
青ヶ島村の場合では、海上の通学が保障されない限り就学担保は困難である。
それ以外では、ICT活用などの教育方法の情報化以外には手立てはない。
こうした極端な事例はいまだ限定的だとしても、徐々に増え続けており、
法令上の学校規模の「標準」の一律適用を困難にしている。

文科省の淵上孝氏による発表資料では、
公立小学校の2023年の「標準」規模の学校は29.4%(5410校)にとどまり、
標準規模に満たない2023年の小学校は41.9%(6315校)に及ぶ。
学校統廃合により標準規模の学校を増やす政策は進められているが、
1989年から2023年まで34年間の「標準」規模の小学校割合は、
28.5%(1989年)⇒31.9%(1998年)⇒29.6%(2008年)
⇒30.4%(2018年)⇒29.4%(2023年)となっており、
学校統廃合は「標準」規模校を増やすよりは、
「標準」規模校の減少を食い止めることに重きが置かれているように見える。

就学人口の減少がそれだけ大きいということであるが、
今後もその推移が継続すると仮定すると、学校規模の「標準」を維持できるのは、
小学校の中の約30%にとどまるというのが現状である。
実態としてはすでに学校標準規模の弾力的運用を余儀なくされており、
それは中学校についてもほぼ同様である。
少子高齢化の進行で、小中学校に加え高校段階にも波及する動きとなっている。
以上の状況の打開策としては、
学校の規模「標準」に複数のオプションを設定することが考えられる。
オプションそれぞれについて、教育条件を整えるための教職員配置や
教育経営機構のあり方などの制度的検討を進める道筋である。

ここで、これまで論じてきた「コンパクト・シティ+ネットワーク」における
学校配置問題に立ち返ると、法令上の学校規模の「標準」を生かせるのは
「コンパクト・シティ」内部に限定されると考えるのが自然であろう。
「コンパクト・シティ」周辺部を含めた、「+ネットワーク」を生かした地区の場合には、
学校配置のための「標準」の弾力化が求められよう。
ICTなどを基盤にした、地域創発型の学び拠点ネットワークの構築である。
次回は、引き続き、以上の問題を掘り下げることにしよう。

【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
東京学芸大、国立教育政策研究所、文教大学等を経由し、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
この間、各地の教育委員会の学校づくり等に携わるほか、
教職員対象の各種研修会講師も務める。
詳細は、次のプロフィール参照。
https://bunkyo.repo.nii.ac.jp/records/7687