4月26日、財務省の財政制度等審議会が、
2040年には私立大学の少なくとも250校を削減する必要がある
という資料を提出して、話題になった。文書の名称は、
「人口減少社会の中での総合的な国力の強化(財政各論1)」である。
ん? 「国力」の強化のために大学を削減するというのは?
18歳人口の減少が念頭にあることはもちろんわかるが、
それにしても強引な議論ではなかろうか。
どうせ定員を埋めることなどできないのだから、
役にも立たない教育をしている私立大学などはさっさと退却してほしい、
そのほうが財政的にも助かる、という声が聞こえてきそうである。
日本の大学の数は、本当に多すぎるのか。
18歳人口だけを念頭において議論していていいのか。
リカレント教育やリスキリングをさんざん強調してきたのは、いったい誰だったのか。
そして、生涯学習の時代における、
ユニバーサル段階に達した大学の役割をどう考えればよいか。
本来、論ずべき点は多いが、ここはその場所ではないので、諦める。
ただ、覚えておきたいのは、2040年の大学教育のあり方が、
臆面もなく国力の強化という視点から論じられ、
そこには、若者の大学進学意欲や将来希望、その地域格差や男女差といった話は、
いっさい登場してこないという事実である。関連して言うと、
財務省の上記の文書も参照している経済産業省の産業構造審議会の資料
「2040年の就業構造推計」(3月5日、改訂版)も、大いに注目されている。
ここには、さすがに大学を何校減らす必要があるとか、
高校をこう再編すべきといったことは、直接的には記されていない。
しかし、2040年の就業構造の推計値として、職種別には、
理系の専門職人材がどれだけ不足し、事務職や文系人材がどれだけ余るのか、
学歴別には、工業高校卒や大卒理系が何万人不足し、
普通科高校卒と大卒文系が何万人の余剰となるのかが、
具体的な数字入りで明記されている。
何のことはない。直接的には書かれていないいが、
要は、こうした労働力需要の将来予測に合わせて、
大学や高校の再編を進めろと言いたいのであろう。
実際、文部科学省の高等教育政策は、すでにこうした方向に舵を切っており、
高校政策に関しても、現在進行中の「ネクスト・ハイスクール構想」などが、
理系人材重視の方向性を追随していることはまちがいない。
ここでも覚えておきたいのは、2040年の教育のあり方は、
将来の労働力需要を充足するという観点から論じられ、
若者の側の視点が登場しないということである。
「国力」か「労働力」かは、どちらでもいい。
ただ、こんな議論ばかり聞かされていると、
溜息とともに愚痴の一つも言いたくなる。こんな前提認識に立ったうえで、
そもそも若者のキャリア支援なんてできるのだろうか、と。
【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。
