法律の専門家として刑事事件や交通事故のトラブル、相続問題、離婚問題など様々な問題を解決する弁護士。法律や行政に関わる仕事に就きたいと考えている学生さんの中には、弁護士の仕事に興味を持っている人もいるでしょう。ドラマや映画をきっかけに、弁護士に憧れを抱いた人もいるかもしれません。この記事では弁護士の仕事内容や就職先、向いている人、弁護士になるための学校の選び方を紹介します。ぜひ将来の進路を考える際の参考にしてみてくださいね。
弁護士になるための必要な資格
弁護士になるには、司法試験に合格する必要があります。弁護士になるまでの流れは以下の通りです。
①法科大学院に通う
法律を基礎から学ぶ人は3年、基礎的な法律知識のある人は2年学ぶ
(法科大学院に進学しない場合、予備試験に合格することで司法試験の受験資格が得られる)
②司法試験を受験
法科大学院修了または予備試験に合格後、司法試験を受験する
③司法修習を受ける
1年間、法律事務所、裁判所、検察庁、司法研修所等で、研修(司法修習)を受ける
④弁護士資格を取得
研修終了後、試験に合格すれば法曹(弁護士、裁判官、検察官)になる資格が与えられ、弁護士として活動ができる
弁護士になるには法科大学院に入学して法律についてしっかり学び、司法試験を受験するコースが一般的です。司法試験合格後は現場で研修を受け、研修所での試験に合格すれば弁護士として働くことができます。弁護士に必須の司法試験ですが、合格率はどのくらいなのでしょうか。法務省のデータをもとに、平成27年~令和4年までの司法試験の合格率をグラフにまとめました。
司法試験の合格率は平成28年以降毎年上がっており、令和4年は45.5%でした。数字だけで見ると合格率は高いのでは?と感じられるかもしれません。しかし司法試験を受験するには、「法科大学院を修了」または「予備試験に合格」する必要があり、そもそも受験資格を得るまでが大変です。独学で目指すことも不可能ではありませんが、難易度が高いため、高校卒業後は専門分野をしっかり学べる大学・短大・専門学校へ進学することをおすすめします。
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弁護士の仕事内容
専門知識を使って様々な法的トラブルを解決する弁護士ですが、具体的にどんな仕事をしているのか詳しくは知らない人も多いでしょう。ここでは弁護士の仕事内容を紹介します。
法律相談
弁護士の仕事は、法律相談から始まることが多いです。法律相談では相談者が抱えている悩みを聞き取り、問題を整理したり解決策を提示したりします。限られた時間内で、トラブル解決までの道筋を相談者に分かりやすく伝えることが大切で、もし法律相談だけでトラブルが解決しそうにない場合は、本格的な事件解決への依頼に繋がるケースもあります。法律相談は法律事務所をはじめ、各地の弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)、市区町村役場・区役所などでも実施しています。
民事事件の代理人
交通事故の損害賠償問題や相続トラブルなど民事事件の訴訟における代理人も弁護士の仕事です。代理人とは、依頼者の代わりに交渉や手続きを行う人のことを指します。弁護士は依頼者からの相談に専門家としてアドバイスしたり、書面を作成したり、トラブル相手と交渉したりします。トラブルの内容や問題点についてしっかり把握し、適切な判断を行いながら問題解決に向かって動くことが大切です。
刑事事件の弁護人
傷害や窃盗など刑事事件で弁護人を務めることも弁護士の仕事の一つです。弁護人とは、被疑者(犯人として疑われている人)の権利を守る人のことで、刑事事件の弁護人になった弁護士は、逮捕・拘留中の被疑者と面会してアドバイスを行ったり、被害者と交渉したり、裁判で弁護活動を行ったりします。刑事事件の被疑者の中には「冤罪」と言って、無罪にも関わらず逮捕・起訴されてしまう人もいます。弁護人は冤罪を防ぐためにも、被疑者の立場に寄り添い、さまざまな可能性を追及することが大切です。
企業の顧問
弁護士は、契約書の作成や労働問題の相談など企業の顧問も行います。時には企業の合併や破産手続きのサポートをすることも。企業顧問として働くには、法的知識だけでなく業界ルールや財務関係の知識も必要になります。
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弁護士の就職先・活躍の場
弁護士の就職先は法律事務所や一般企業、行政など様々です。ここからは弁護士の就職先・活躍の場を紹介します。
法律事務所
弁護士として働き始める際、まずは法律事務所に就職して経験を積むケースが一般的です。法律事務所の先輩弁護士から、自身で作成した書面の添削を受けたり尋問技術を学んだりしながら、弁護士としてのスキルを磨いていきます。経験を積んだあとは、事務所の共同経営者になったり独立したりと次のステップに進む人も多数です。事務所によって経験できる仕事内容が異なるので、将来どんな弁護士になりたいかを考えて就職先を選ぶことが大切です。
一般企業(企業内弁護士等)
一般企業の法務部に就職し、企業内弁護士として活躍する人もいます。企業内弁護士は、取引先と交わす契約書の作成や事業ノウハウなど知的財産の管理、人事・労務業務の監督などを行います。法律事務所で働く弁護士は対応する事件ごとにクライアントが変わりますが、企業内弁護士のクライアントは常に所属する企業です。一般企業の法務部は倍率が高い傾向にありますが、弁護士として働いた経験のある人は優遇される可能性が高いでしょう。
検事・裁判官
司法試験に合格すれば、検事や裁判官を目指すこともできます。検事になるためには司法試験に合格後、検事の採用試験を受験します。検事の仕事は警察と共に事件の捜査をしたり、裁判の指揮官等をしたりすることです。採用後は数年かけてキャリアを積み、一人前の検事を目指します。司法試験の順位が良く、修習中の試験も上位であるなど優秀な人材には、裁判官への道も開けます。裁判官の主な仕事は裁判所で訴訟の判決を下すことです。ただし、裁判官は一握りの優秀な人しかなれないため、非常に狭き門です。
官公庁や国際機関の職員
弁護士の中には、金融庁や法務省など官公庁で働く人もいます。官公庁で働く弁護士の仕事は所属する省庁によっても異なり、大手銀行の金融検査や事務ガイドラインの改定作業、国会想定問答の作成など多岐に渡ります。また弁護士は、国際機関の職員としてグローバルに活躍することも可能です。国際機関の人事部や法務部に所属して働くほか、人権・難民・貿易など特定分野の知識と経験を持つ法律専門家として働く弁護士もいます。
国会議員
法律や条例を作る議員の仕事は法律家との相性が良く、弁護士の活躍の場の一つです。実際、弁護士として働く中で様々な規制に限界を感じ、法律を作る立場に回るべく国会議員や地方議員を目指す人も少なくありません。アメリカでは、連邦議会に所属する議員の約半数が弁護士出身者です。弁護士の肩書は人々からの信頼も得られやすいので、選挙でも有利になるでしょう。
弁護士の将来性について
法律のスペシャリストである弁護士。専門性の高い仕事ではありますが、定年がないことや他の士業の業務範囲が拡大していることなどから、弁護士には将来性がないと言われることもあります。しかし弁護士の独占業務はまだまだ幅広く、弁護士にしかできない仕事がたくさんあります。またコンプライアンス意識の高まりや海外との取引が増えたことによる企業内弁護士のニーズの増加、テクノロジーの発展による法的問題の多様化など、弁護士の活躍の場は時代の変化と共に広がっています。人間同士のコミュニケーションが欠かせない仕事のため、AIに取って替わられる心配も少なく、弁護士はこれからも社会に必要とされる、将来性の高い仕事と言えるでしょう。
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弁護士の給料・年収相場
弁護士の給料は比較的高いといったイメージを持っている人も多いでしょう。厚生労働省「職業情報提供サイト jobtag」によると、弁護士の平均年収は971.4万円でした。「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、労働者全体の平均賃金は約311万円。弁護士の平均年収は労働者一般よりかなり高いことが分かります。弁護士は専門職のため、経験やスキルによって年収も変化します。年齢別の平均年収について、下記のグラフにまとめました。
20代前半の平均年収は300万円前後ですが、30代に入ると一気に上がり、40〜50代前半では1000万円を超えます。また弁護士は定年がないため、60代後半でも830万円と高い水準をキープしています。弁護士の平均年収は年齢を重ねるにつれ上がっていき、生涯現役でしっかり稼げる職業であることが分かります。弁護士の働き方は幅広く、会社員として働く人もいれば法律事務所を開業する人まで様々です。そのため年齢だけでなく、どんな働き方をするかによっても年収は変わってくるということを押さえておきましょう。
弁護士に向いている人
弁護士の仕事に興味があるけど、自分は弁護士に向いてる?と気になっている学生さんもいますよね。ここでは弁護士に向いている人の特徴を紹介します。
正義感が強い
正義感が強い人は弁護士に向いていると言えるでしょう。弁護士の使命は、弁護士法という法律で「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」と定められています。依頼者が置かれた立場や抱える悩みに寄り添い、依頼者の正当な利益のために動くことが大切です。弁護士の仕事は依頼者の人生に大きな影響を与えるため、誠実さや責任感なども欠かせません。
人の話をじっくり聞ける
人の話をじっくり聞けることは、弁護士にとって重要なスキルです。弁護士は、依頼者の話を聞き、どんなことで困っているのか、どんな助けが必要なのかを導き出した上で解決に向かって交渉や訴訟といった様々な行動に移します。依頼者の抱えている問題点を探して適切な対応をするためにも、まずは依頼者に興味を持ち、上手く話を聞き出すことが大切です。
コミュニケーション力が高い
依頼者は様々なため、性格や心理状況を察しながら相手に適したコミュニケーションをとる必要があります。コミュニケーション力は依頼者との信頼関係の構築にも大きく関係してきます。また交渉や訴訟の場面では、利害が一致しない相手に対して、こちら側の提案を受け入れてもらえるよう働きかけなければなりません。相手や場面に応じて寄り添ったり駆け引きをしたりできる高度なコミュニケーション力がある人は、弁護士として働く上で有利でしょう。
トラブルに動じない
弁護士の仕事にはトラブルがつきものです。真面目に仕事をしていても、結果によっては依頼者や相手方から恨みを買うことも珍しくありません。そもそも弁護士の業務は人と人との揉め事の間に立つことなので、いくら誠実に仕事をしていても何かしらのトラブルに巻き込まれてしまう可能性はあります。トラブルが起こっても動じず、すぐに気持ちを切り替えられる人は弁護士に向いているでしょう。
弁護士を目指す学校の選び方
弁護士になるためには司法試験に合格する必要があります。司法試験には受験資格があり、法科大学院修了者または予備試験合格者しか受験できません。そのためまずは司法試験の受験資格を得ることを目標に、卒業後の進路を選びましょう。ここでは弁護士を目指す学校の選び方を紹介します。
四年制大学・短期大学へ進学する
弁護士になるには、四年制大学または短期大学へ進学する方法があります。四年制大学の場合は、法学部へ進むのが王道。他の学部から目指すことも可能ですが、法学部では法学について専門的に勉強できるため、法科大学院入学試験でも有利になるでしょう。法学を履修しておくことで、法科大学院の2年コースに進むことができ、短期間で弁護士を目指すことができます。短大の場合は卒業後、法科大学院で3年勉強するか、予備試験に合格することで司法試験の受験資格を得られます。
専門学校へ進学する
専門学校から弁護士を目指すこともできます。学校によって様々な学科、コースがありますが、法律科や法律情報科、司法試験コース、大学編入コースなどを選ぶことで、弁護士への道が開けるでしょう。法学を専門的に学べる学校へ進学することで、法科大学院への進学対策も受けられます。
予備校・通信教育で学ぶ
予備校や通信教育を利用して弁護士を目指す場合は、予備試験に合格して司法試験の受験資格を得るコースになります。予備校や通信教育は大学・短大・専門学校に通うよりも、時間や費用を節約して弁護士を目指すことが可能です。ただし予備試験の合格率は3〜4%とかなり難関になっています。
司法試験の受験資格を得ることを目標に進路を選ぼう
ここまで、弁護士の仕事内容や就職先、給料、向いている人、進路の選び方を紹介してきました。法律事務所だけでなく、一般企業や官公庁など弁護士が活躍できる場は幅広いです。コンプライアンス意識の高まりやテクノロジーの発展など時代の変化と共に弁護士のニーズも多様化しており、今後の将来性も高い仕事だと言えるでしょう。
弁護士になるには司法試験に合格することが必須です。司法試験には受験資格があり、「法科大学修了者」または「予備試験合格者」しか受験できません。そのため弁護士を目指す人は、まずは司法試験の受験資格を得ることを目標に進路を選びましょう。
弁護士を目指すための学科や専攻があるかどうかは、各大学のカリキュラムを調べて確認しておきましょう。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うと、各校の詳しいパンフレットを取り寄せることができます。
他にも、「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという人も是非ご活用ください。
進路ナビでは、さまざまな大学や専門学校を紹介しています。司法試験の受験資格を得られる学科を探すため、以下のページから弁護士を目指せる大学や専門学校を探してみましょう。