行政書士は、様々な種類の書類作成代行や認可申請などを行う専門的な職業です。独立して一人でやっていける職業なので、魅力的に感じる人も多いお仕事ですよね。この記事では、どんな資格を取れば行政書士になれるのか、目指すにはどのようなルートを進めばいいのかなどの「行政書士のなり方」や、お仕事の特徴について解説します。
行政書士になるには・必要な資格
行政書士になるには以下の3通りの方法がある。
資格が必ず必要ではないことを説明した上でそれぞれ200文字程度で解説する。
行政書士試験を受験して合格する
行政書士になる方法として一番多くなっているのが、国家試験である行政書士試験を受験して合格することです。日本行政書士連合会が取ったアンケートによると、7割の行政書士が試験受験・合格のルートを通っています。試験は毎年11月に行われており、合格発表は1月下旬になっています。試験内容では「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」が問われ、例年の合格率は10〜15%程度です。決して簡単な試験ではなく合格までに数回かかる人もいますが、効率よく学習すれば一発合格も充分に狙える資格と言えるでしょう。
公務員として行政事務を一定年数経験する
行政書士試験に合格する以外では、公務員としての特認制度を使う方法もあります。公務員として行政事務を一定年数経験すれば、申請によって行政書士資格を得られるという制度です。「国又は地方公共団体の公務員」、「行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員」として、行政事務を高卒で17年・中卒で20年以上経験すると試験を受けることなく行政書士登録ができます。
弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を持っている
初めから行政書士のみを目指す人にはあまり現実性のないルートですが、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を取得すると、自動的に行政書士の資格を持って業務をすることが可能です。これらの資格を取った上で行政書士登録をする人は、メインではなく関連業務の一部として行政書士の仕事をするケースが多くなっています。なお、これらの資格は行政書士より難易度が高いものとなっているため、行政書士の仕事だけをやりたい人の進路には不向きかもしれません。
行政書士の仕事内容
行政書士の主な仕事内容は、様々な種類の書類作成代行や申請代行、またそれにまつわる相談業務などが挙げられます。行政書士が取り扱う書類の種類はとても多く、それぞれの申請に対する知識が必要になってきます。ここでは、行政書士の仕事内容について解説します。
官公署に提出する書類の作成とその代理、相談業務
行政書士の仕事内容として主に挙げられるのは、各都道府県庁や市・区役所など官公署に提出する書類の作成及び手続きを代行することやその相談に乗ることです。作成や手続きを代理で行う書類は認許可申請に関するものがほとんどを占めますが、その書類の種類は1万を超えると言われています。例えば、事業を始める際の許認可申請などにおいて、会社の設立をはじめ飲食店や運送業など業種に合わせて様々な申請が必要になります。さらに、その許認可の申請に対しての聴聞などを代行することも業務のひとつです。
権利義務に関する書類の作成とその代理、相談業務
官公署への提出書類代行の以外にも、権利義務にまつわる相談や書類作成・手続きの代行なども行政書士の仕事です。権利義務とは、例えば遺言や遺産などの相続に関することや、商取引や契約にまつわるものなどがあります。書類を作成し申請することで、権利や義務の発生、存続や変更、消滅などに関する意思表示の法的な効果を得ることができますが、行政書士はそれらを業務として代行可能です。
事実証明に関する書類の作成とその代理、相談業務
権利義務にまつわる書類と同じく、事実証明に関係する書類作成・手続きの代行も行います。また、それにまつわる依頼者からの相談も業務内容のひとつです。事実証明にまつわる書類とは、会計帳簿や財務諸表、議事録など、社会的に証明が必要となる事項を証明するための書類を言います。種類は様々なものがあり、行政書士はその書類作成・手続きの代行は行えますが、他の法律で制限されているものに関しては業務を行うことはできません。
その他特定業務
上記3つの書類以外でも、行政書士法で定められた特定業務を行えます。例えば、出入国管理や難民認定にまつわる書類、社会保険に関係する事務などが挙げられます。行政書士は、海外の人が日本で仕事をするための手続きの代行や、許認可申請が通らなかった時の「不服申し立て」を業務として行うことが可能です。この「不服申し立て」は以前は弁護士しか行えませんでしたが、法改正により研修を受けた行政書士であれば業務を行えるようになりました。
行政書士の就職先・活躍の場
行政書士の資格を取ったら、どのような場所で仕事をするのでしょうか。一般的に行政書士は就職先が少ない仕事だとされていますが、仕事が少ないというわけではありません。ここでは、行政書士の就職先や、求人が少ない理由などについて触れてみましょう。
行政書士の就職先①士業事務所
行政書士の就職先としてまずひとつ、法務事務所や法律事務所などの士業事務所が挙げられます。法務事務所は行政書士などの弁護士以外の法務関係者が開いている事務所で、法律事務所は弁護士が所属している事務所です。行政書士会に登録しても自分自身で開業をせずに法務事務所で働く行政書士は、「使用人行政書士」と呼ばれます。行政書士の資格を持っている以上、スタッフとして働く場合であっても行政書士と同様のスキルを業務として発揮することができます。
弁護士が開業している法律事務所で働く場合は、弁護士としてではなくパラリーガル(法律事務員)として勤務するケースが多いです。法律事務所での一般的な事務員は電話の応対や書類の提出代理などの雑務が多くなっています。一方パラリーガルは弁護士の指導のもと法令や判例を調べたり、契約書など法律文書を扱ったりと、法に対する知識を前提とした業務を行うことが多いです。弁護士事務所への就職においては、行政書士の資格を持っていることが法に関する能力があることを証明するアピールポイントになるでしょう。
行政書士の就職先②一般企業
一般企業と言っても、前提として企業内で行政書士として雇われて業務をすることは認められていません。そのため、行政書士の資格を武器にして一般企業に就職する場合は、資格保持はあくまでも自己アピールの材料となります。一般企業が必要とする法律の問題といえば、民法や商法などがメインです。行政書士試験でそれらの分野で高得点だったことなどをアピールすれば、法務部のある企業などでは有利になります。
行政書士の求人は少ない?
行政書士の求人が少ないことは昔から言われていることであり、その理由には行政書士としての仕事内容にあります。まず前提として行政書士はいわゆる独立開業型の仕事であることが挙げられます。独立ありきの資格ということで、どこかに所属して働くというよりは自身で開業することが多い仕事です。また、行政書士として他の行政書士を雇いたがらない傾向にあることも理由の一つと言えます。そのため、仕事がないという訳ではなく就職先としての選択肢が少ないのです。
また先の項目で言った通り、一般企業で行政書士として働くことはできません。行政書士として業務をするためには行政書士会に登録する必要がありますが、登録するには「個人開業」、「行政書士法人の社員」、「行政書士の使用人」、「行政書士法人の使用人」のどれかでなくてはいけないという条件があるからです。
行政書士の資格を活かして仕事をしたい場合は、条件を満たした事務所や企業に就職するか、独立開業かの道を選択できます。法にまつわる知識を活かせる場は多いので、自分に合った仕事の仕方を見つけましょう。
行政書士の将来性について
行政書士の資格を取って働きたいと思っている人にとって、行政書士としての仕事の将来性は気になりますよね。就職先があるのかどうかの不安も合わせて、行政書士が長く続けられる仕事なのか、この先も需要がある職業なのかどうかは重要になってきます。最近ではAI技術の発達もあり「将来なくなる仕事」のひとつとして挙げられていることも不安だと思っている方が多いのではないでしょうか。
結論から言うと、行政書士の将来性はあります。理由のひとつとして、いくらAI技術が発達したとしても、依頼者とのスムーズなコミュニケーションや相談内容に寄り添う姿勢は再現できません。行政書士は法律にまつわる手続きを行う仕事のため、相談内容によっては人間による細かなアドバイスや臨機応変な対応が必要になってきます。そういった内容をコンピューターではなく信頼できる書士さんに任せたい、と言う人は今後もいなくならないことが予想されるので、AIが関係する将来性については心配いらないと言えるでしょう。
また、行政書士自体の業務内容が拡大していることも大きいです。これまでは弁護士しか対応できなかったことが法改正により行政書士でも業務のひとつとして実行できる、といった事例も増えており、今後も行政書士が活躍できる場は広がる余地があると言えます。また、法改正自体も行政書士の活動の場で、様々な法改正による手続き代行の仕事は今後も増えることでしょう。
行政書士の給料・年収相場
行政書士として働く人の平均収入は、月収が30万円前後で年収が400万円前後が相場のようです。これは企業に就職した場合の給与平均としての数字で、個人開業した場合にはさらに高い収入を得られる可能性もあります。会社勤務の場合でも業務内容や勤続年数によって個人差があるため、条件次第で変動が大きいと言えるでしょう。
会社員の場合、初任給の平均は約20万円前後で、国家資格を持っていても他の職業と比べて大差はないことが多いようです。アルバイトやパートの場合は999円、派遣社員の場合は1447円が平均の時給とされています。
独立開業した場合、高収入な人とそうでない人の個人差が大きいです。その理由として、業務内容によって報酬の相場が変わることや、どれだけの案件を依頼されるかによることが挙げられます。行政書士として安定して依頼を受けられて、なおかつ単価の高い仕事をこなせば自ずと収入は上がるでしょう。そのため、行政書士としての収入の良し悪しよりも、どういった仕事の受け方をするかで収入が変わってきます。行政書士としての経験と実績を積んで、信頼を得ていくことが大切になるでしょう。
行政書士に向いている人
行政書士は資格を取ればすぐに活動できる仕事ですが、業務内容の特徴から向き不向きがある職業とも言えます。ここでは、行政書士に向いている人の特徴について解説します。
責任感がある人
行政書士が取り扱う書類は個人情報に関わる項目がとても多く、なおかつ法律にもまつわる重要な書類です。そのため、それを取り扱う上での安全面や、不備のない書類を作成して最後まで代行する上での責任感がとても大切になります。依頼人の相談に乗るときもきちんと最後まで寄り添う必要があるので、責任感がある人に向いていると言えるでしょう。
事務処理能力が高い
書類を取り扱う仕事のため、高い事務処理能力が必要になってきます。案件によっては膨大な量の書類をタイトなスケジューリングで作成・申請代行しなくてはいけないこともあるでしょう。不備のない書類をスピーディーに仕上げる能力が求められます。
営業力、コミュニケーション能力が高い
依頼人の相談に乗ったり間違いがないようにヒアリングを行ったりと、行政書士の仕事は人とのコミュニケーション力がとても重要視されます。依頼する側もきちんと話を聞いてくれる人を望んでいることが多いので、円滑にコミュニケーションを取れる人が向いているでしょう。また、独立開業する際の営業にも、コミュニケーションスキルは欠かせません。
行政書士を目指す学校の選び方
行政書士試験の受験資格には、学歴の項目はありません。したがって行政書士になるために絶対に通わなくてはいけない学校というものはありませんが、試験合格はもちろん業務のためには行政法や民法、商法などの各部門の法律知識が必須です。さまざまな法律に関する知識を効率的に身につけていくためには、短大や大学、専門学校などで学ぶことをおすすめします。
現在短大や大学では行政書士を養成するための専門学部や専門学科はありませんが、法学部や法律関連の学部・学科がある大学で学ぶことが一般的です。専門学科がなくても、行政書士試験に応じる内容を学べる課外講座などが設置されている場合もあるので、よく調べておきましょう。
法律系専門学校や法律科のある専門学校では、法律全般の専門的な知識を身につけられます。また、行政書士コースという行政書士を志す人向けのコースがある専門学校もあるため、最短で知識を得たい人にはおすすめです。通学なしで通信・WEB講座で勉強できるコースもあります。自分に合った進路で行政書士になるための知識を学びましょう。
行政書士を目指す人が進む進路に悩んだら、まずは資料請求をしていろいろな学校の特徴を知ることがおすすめです。進路ナビでは学校検索機能やお任せ資料請求機能をご用意しています。進路選びの参考に、ぜひ活用してくださいね。