精神的な障がいを抱えた人の生活をサポートする「精神保健福祉士」。将来の進路について考えている学生さんの中には、精神保健福祉士の仕事に興味を持っている人もいるでしょう。しかし「精神保健福祉士になるには何を勉強するべき?」「進学先はどうやって選べば良いの?」と悩んでいる人もいるかもしれません。本記事では、精神保健福祉士に関心を持つ学生さんに向けて、精神保健福祉士の仕事内容や就職先、向いている人の特徴、精神保健福祉士を目指せる学校の選び方について詳しく紹介します。ぜひ、高校卒業後の進路選択の参考にしてみてくださいね。
精神保健福祉士を目指す人の進学先3つ
精神保健福祉士になるためには、国家試験を受験し、国家資格を取得する必要があります。精神保健福祉士の国家試験には受験資格が必要なため、高校卒業後すぐに受験することはできません。そのため、まずは大学や養成学校で学び、受験資格を満たすことを目標にすると良いでしょう。
精神保健福祉士になるまでの流れは下記の通りです。
- 福祉系の大学や短大等に入学する
- 指定科目や基礎科目を学ぶ(状況に応じて実務経験や短期養成施設等で学ぶ必要がある)
- 国家試験の受験資格を得る
- 国家試験に合格し採用試験等を受けて就職を目指す
上記は大まかな流れで、実際は進学する学校や履修する科目によって受験資格を得るまでの時間や手順が異なります。
ここでは進学先や履修科目別に、国家試験の受験資格を得る方法を紹介します。
1. 福祉系の大学・短期大学で指定科目を履修する
まずは福祉系の大学・短期大学で指定科目を履修する方法です。指定科目を履修すれば、大学の場合はすぐに受験資格を得られますが、短期大学の場合は数年の実務経験が必要になります。進学先別に、受験資格を得る方法をまとめました。
指定科目を履修する進学先 | 受験資格を得る方法 |
---|---|
福祉系の大学 | 卒業時に受験資格がもらえる |
福祉系の短期大学(3年) | 卒業後に1年以上の実務経験を積む |
福祉系の短期大学(2年) | 卒業後に2年以上の実務経験を積む |
福祉系の大学で指定科目を履修・修得する場合、実務経験なしで国家試験の受験資格が得られます。一方福祉系の短期大学で指定科目を履修する場合は、卒業年数に応じて1〜2年の実務経験を積むことで、受験資格が得られます。
2. 福祉系の大学・短期大学で基礎科目を履修する
次に、福祉系の大学・短期大学で基礎科目を履修する方法です。基礎科目だけ履修した場合は、卒業後に短期養成施設等でさらに勉強する必要があります。国家試験の受験資格を得るまでの方法を進学先別にまとめました。
基礎科目を履修する進学先 | 受験資格を得る方法 |
---|---|
福祉系の大学 | 卒業後に短期養成施設等で6ヶ月以上学ぶ |
福祉系の短期大学(3年) | 卒業後に1年以上指定施設で実務経験+短期養成施設等で6ヶ月以上学ぶ |
福祉系の短期大学(2年) | 卒業後に1年以上指定施設で実務経験+短期養成施設等で6ヶ月以上学ぶ |
福祉系の大学で基礎科目を履修した場合は、短期養成施設等で6ヶ月以上学ぶことで受験資格を得られます。一方福祉系の短期大学で基礎科目を履修した場合は、卒業年数に応じて1〜2年の実務経験を積み、短期養成施設等で6ヶ月以上学ぶ必要があります。
3. 一般の大学や短大を卒業して一般養成施設などで学ぶ
最後に、福祉系ではない一般の大学や短大を卒業して一般養成施設などで学ぶ方法です。一般の大学や短期大学を卒業した後は、一般養成施設等で学ぶことで受験資格を得ることができます。福祉系以外の学校へ進学した場合の受験資格を得る方法を表にまとめました。
進学先 | 受験資格を得る方法 |
---|---|
4年制大学 | 卒業後に一般養成施設等で1年以上学ぶ |
短期大学(3年) | 卒業後に1年以上の実務経験+一般養成施設等で1年以上学ぶ |
短期大学(2年) | 卒業後に2年以上の実務経験+一般養成施設等で1年以上学ぶ |
一般の4年制大学に通う場合は、卒業後に一般養成施設等で1年以上学ぶことで受験資格を得られます。一方短期大学に通う場合は、卒業年数に応じて1~2年の実務経験を積み、一般養成施設等で1年以上学ぶ必要があります。
精神保健福祉士の主な仕事内容
精神保健福祉士に興味があるけど、実際にどんな仕事をするのかは詳しく知らない学生さんも多いかと思います。
精神保健福祉士の主な仕事は、精神的な障がいを抱えた人に対して、生活や社会復帰の支援を行うことです。具体的には、障がい者本人が利用できる公的な支援制度を紹介したり、日常生活を送るために必要な訓練や会話の練習をしたりすることで、精神障がいのある人の生活を支えます。
精神保健福祉士の詳しい仕事内容は就職先によっても異なります。例えば、精神科などの病院に勤務する精神保健福祉士は現場での直接支援がメイン。受診理由や生活の様子を把握するための面談、学校や職場との調整、退院後のサポートなどを担当します。
一方精神保健福祉センターなど行政機関で働く場合は、現場支援だけでなく公的なサポートも行います。相談対応に加え、福祉教育や啓発運動など知識を身につけてもらうための活動をしたり、認知症などの相談や援助をしたりと業務は多岐にわたるでしょう。
病院と行政機関での仕事内容は少し異なるため、自分は精神保健福祉士になってどんな仕事をしたいのかを考えておくと良いでしょう。
精神保健福祉士の主な就職先
精神保健福祉士を目指す場合、大学や養成所の卒業後にどんな就職先があるのでしょうか。精神保健福祉士の就職先は複数あるため、主な就職先をまとめました。
就職先 | 仕事内容 |
---|---|
精神科病院や心療内科クリニック | 医師や多職種と連携しながら患者や家族のサポートをする |
精神保健福祉センター | 精神保健福祉相談員として相談対応や偏見をなくすための啓蒙活動や福祉教育などを行う |
保健所 | 地域の精神障がい者を医療に繋げたり、住民からの相談に対応したり、といった地域に密着した業務を行う |
相談支援事業所 | 障がいを抱える人が地域で暮らし続けるための総合的な支援を行う |
精神保健福祉士の就職先は、病院や行政機関など様々です。精神科病院は令和3年時点で全国に1,000施設以上あり、病院とひとことで言っても幅広い選択肢があります。勤務先によって仕事内容も変わってくるため、「自分は精神保健福祉士になってどんなことをしたいのか」「どんなサポートを行いたいのか」をじっくりと考えて、就職先を選ぶことが大切です。
参考:厚生労働省
精神保健福祉士の将来性
次に、精神保健福祉士の仕事には将来性について解説します。
精神障がい者への支援は平成16年より「入院医療中心から地域生活中心へ」シフトし、精神保健福祉士の需要は高まっています。また、実際に精神保健福祉士になる人は年々増加傾向にあります。
年度 | 平成31年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
---|---|---|---|---|---|
登録者数 | 89,121 | 93,544 | 97,339 | 102,069 | 106,962 |
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター
公益財団法人社会福祉振興・試験センターによると、直近5年だけでも精神保健福祉士の登録者は17,841人も増えています。
ストレス社会と言われる現代ではメンタルヘルスケアへの取り組みが進んでいるため、今後はさらなる活躍が期待されるでしょう。さらに高齢化社会が進むにつれ精神疾患に悩む人も増えると予想されています。そのため、これからも精神保健福祉士の需要は高まると考えられます。また精神保健福祉士は生涯有効な国家資格なので、安定して働くことができます。このような理由から、精神保健福祉士には将来性があるといえるでしょう。
精神保健福祉士の給料の相場
精神保健福祉士になると、お給料がどれくらいもらえるのか気になっている学生さんもいるでしょう。
精神保健福祉士就労状況調査結果の実施概要によると、精神保健福祉士の平均年収は350万円程度でした。正社員・非正規職員といった雇用形態や性別、年齢によっても平均年収は異なるため、それぞれの平均年収を表にまとめました。
平均年収(万円) | |||
---|---|---|---|
全体 | 347 | ||
性別 | 男性 | 正規職員 | 426 |
非正規職員(常勤) | 274 | ||
女性 | 正規職員 | 368 | |
非正規職員(常勤) | 239 | ||
年齢 | 20代 | 255 | |
30代 | 319 | ||
40代 | 380 | ||
50代 | 468 | ||
60代以上 | 262 |
参考:厚生労働省
男性・女性ともに、正規職員のほうが非正規職員よりも年収が高くなっています。また平均年収は年齢を重ねるにつれ上がっており、平成26年においては50代の年収が最も高くなっていました。
精神保健福祉士に向いている人の特徴4つ
精神保健福祉士になるためには、国家試験合格まで長い期間かかります。目指すのであれば、自分が精神保健福祉士の適性があるのかどうかを見極めることが大切です。自分は精神保健福祉士に向いているの?とお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
精神保健福祉士に向いている人の特徴は下記の4つです。
- 日常的に人と関わるのが好きな人
- 長期的に物事に取り組むのが得意な人
- 相手の気持ちに寄り添える人
- 客観的に物事を考えられる人
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
1. 日常的に人と関わるのが好きな人
人と関わることが好きな人は精神保健福祉士に向いていると言えるでしょう。精神保健福祉士の仕事は精神的な障がいを抱えた人の相談対応や生活サポートです。障がいの特性や程度、生活の様子、年齢、性別など、患者によって置かれている状況は様々。正確にサポートするためには、一人ひとりの悩みを真摯に聞くことが必要です。人と関わるのが好きということは精神保健福祉士に欠かせないでしょう。また支援を行う中で、医師や看護師など多職種と連携する機会が多々あります。協調性やコミュニケーション力がある人は、精神保健福祉士として活躍していけるでしょう。
2. 長期的に物事に取り組むのが得意な人
長期的な視点に立ち、粘り強く物事に取り組める人も精神保健福祉士の適性があります。精神保健福祉士は、精神的な障がいのある人が抱えている問題を解消し、自立した生活や社会復帰ができるようにサポートしていくことが仕事です。長期間障がいや病気に苦しんでいた人は、回復するまでにも同じように長い時間がかかります。ときにはサポートが思うようにできず、悩んだり辛い思いをしたりすることもあるでしょう。そういった壁を乗り越えることが必要です。サポートを続ける精神保健福祉士には長期的に根気強く物事に取り組む姿勢が求められます。
3. 相手の気持ちに寄り添える人
精神保健福祉士に相談に訪れる人の悩みは様々で、年齢や性別なども幅広いです。相談に乗るためには、まずは相手の気持ちに寄り添いながら悩みを聞くことが大切。一方的なコミュニケーションにならないよう、悩みを聞くこととアドバイスすることのバランスを保つ必要があります。相談者一人ひとりの状況を理解し、相手の立場で考え、同じ目線で最善の道を探っていける人は、信頼される精神保健福祉士になれるでしょう。
4. 客観的に物事を考えられる人
自分では適切だと思った提案やサポートを行っても、相談者にとっては最善ではないケースもあります。自分の考えを押し付けたり、独りよがりな提案にならないよう、客観的な視点を持つことが重要です。ときには相談者の悩みに共感しすぎて、自分も辛くなってしまうこともあるかもしれません。しかし精神保健福祉士の仕事は悩みへ共感することではなく、精神障がいを抱えた人の生活支援や社会復帰のサポートをすること。一歩引いた視点から冷静に物事を判断し、最善の支援を模索していくことが大切です。
精神保健福祉士を目指せる学校の選び方3つ
最後に、精神保健福祉士になるために、どんな進路を選べば良いかを紹介します。精神保健福祉士を目指せる学校の選び方は以下の3つです。
- 最短で受験資格を得るなら福祉系の大学を探す
- 精神保健福祉士の養成課程があるか確認する
- 社会福祉士の養成課程がある大学を探す
ぜひ進学先選びの参考にしてみてくださいね。
1. 最短で受験資格を得るなら福祉系の大学を探す
最短で精神保健福祉士の国家試験を受けるためには、福祉系の大学を探すと良いでしょう。福祉系の4年制大学に進学して「指定科目」を履修すれば、卒業と同時に受験資格を得られます。また2年制の福祉系短期大学に進学する場合は2年の実務経験、3年制の福祉系短期大学に進学する場合は1年の実務経験を積むことで、受験資格を得られます。
2. 精神保健福祉士の養成課程があるか確認する
福祉系の大学に進学する際は、「指定科目」を履修できるかを必ず確認しましょう。「指定科目」を履修していない場合は、卒業後に短期養成施設へ編入し受験資格を得る必要があり、時間がかかります。福祉系大学の中には、社会福祉士のみを養成しているなど、精神保健福祉士になる環境が整っていない学校もあります。精神保健福祉士を目指すのであれば、事前に精神保健福祉士の養成課程があるか大学の公式ホームページやパンフレットで確かめておきましょう。
3. 社会福祉士の養成課程がある大学を探す
精神保健福祉士になるための環境が整っている大学が、自分の通える範囲にあるとは限りません。ただ、社会福祉士の養成課程がある大学であれば「基礎科目」を履修することができます。「基礎科目」を履修しておくことで、卒業後に短期養成施設等で学び、受験資格を得られます。最短ルートではないものの、通える範囲に精神保健福祉士の養成課程が整っている大学がない場合は検討してみると良いでしょう。
精神保健福祉士を目指すなら進路ナビの活用がおすすめ
精神保健福祉士は、精神的な障がいを抱える人の生活支援や社会復帰のサポートを行う専門職。精神障がい者への支援が「入院医療中心から地域生活中心へ」シフトしている現在、社会的ニーズが高まっています。精神保健福祉士を目指す学生さんは、まずは国家資格の受験資格を得ることを目標に進路を選ぶと良いでしょう。
「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという人もぜひご活用ください。