臨床検査技師は、医療現場で活躍する専門職。あまり聞き慣れない職業かもしれませんが、将来医療分野で働きたいと考えている学生さんは、ぜひ臨床検査技師について調べてみることをおすすめします。臨床検査技師の仕事は、医師の指示のもと、細菌、免疫、血液、病理などの様々な検査を行い、病気の原因や状態を調べることです。医師は、これらの検査結果をもとに診断や治療方針を決定するため、臨床検査技師は医療現場に欠かすことのできない重要な職業です。本記事では、臨床検査技師に必要な資格や仕事内容、向いている人、就職先などについて解説します。臨床検査技師の仕事について知り、将来の進路選択の参考にしてみてくださいね。
参考:進路ナビ
臨床検査技師になるために必要な資格
臨床検査技師になるには、臨床検査技師国家試験に合格し、国家資格を取得する必要があります。臨床検査技師国家試験を受験するためには、高校卒業後に大学や短期大学、専門学校に進学して決められた過程を修了しないといけません。高校卒業後から臨床検査技師になるまでの流れを下記の図にまとめました。
大学に進学する場合は、医学・歯学の正規課程修了または、獣医学・薬学・保健衛生学いずれかの正規課程と臨床生理学などの指定科目を修了する必要があります。短期大学進学する場合は3年制の臨床検査学科、専門学校へ進学する場合は臨床検査技師養成所で所定の過程を修了することで、国家試験の受験資格が得られます。臨床検査技師養成所や大学に入学するためには、数学・生物・化学・物理などが必要になるため(選択科目含む)、高校時代に履修しておきましょう。なお、臨床検査技師の国家資格の合格率は2023年が77.6%、2022年が75.4%、 2021年が80.2%と7〜8割となっています。幅広い専門知識が必要ではありますが、試験の難易度は高くありません。真面目に勉強し対策を行えば、十分合格を目指せるでしょう。
参考:臨床検査技師国家試験の合格率
「進路ナビ」では臨床検査技師の仕事内容や臨床検査技師を目指すための進学先を紹介しています。進路について悩んでいる人はぜひチェックしてみてください。
臨床検査技師の仕事内容
臨床検査技師は医師や看護師と違い、あまり馴染みのない職業ですよね。「具体的にどんな業務をするの?」と疑問に思っている学生さんもいるでしょう。ここでは臨床検査技師の仕事内容について、詳しく解説します。
臨床検査技師とは
そもそも臨床検査技師とは、どんな職業なのでしょうか。臨床検査技師は、医師や歯科医師の指示のもとに医療機関で患者の臨床検査と呼ばれる検査を行う人のことです。血液や尿などといった患者の検体を取り出して検査したり、脳波や心電図などの身体の内部を検査したりします。規模が大きく、たくさんの臨床検査技師が働いている病院では、検査の部門が細分化されていますが、規模の小さな病院では、一人の検査技師が複数の種類の検査を掛け持ちで行っているところもあります。
臨床検査技師の具体的な仕事内容
臨床検査技師の仕事には、検体検査と生理機能検査(生体検査)の2種類があります。それぞれどんな検査を行うのか、詳しく解説します。
検体検査
検体検査とは、患者の血液や尿などの検体を用いて、それらの成分を調べる検査のことです。検体検査には、下記のようなものがあります。
検査名 | 検査の内容 |
---|---|
血液学的検査 | 血液中の成分を分析し、病気の診断や治療効果の判定を行う |
一般検査 | 尿や便、体腔液の成分を分析し、腎臓や肝臓などの機能を調べる |
生化学的検査 | 血清や尿に含まれる成分を調べる |
微生物学的検査 | 患者の体から採取した細菌やウイルスを培養・検査し、感染症の診断を行う |
輸血・造血幹細胞移植関連検査 | 輸血を行うため、輸血する血液が患者の血液と適合するかを調べる |
免疫血清学的検査 | 血液を調べて、免疫に関する病気を診断する |
病理・細胞診検査 | 患者の体から採取した臓器・組織・細胞を調べ、病気の診断をする |
遺伝子・染色体検査 | DNAを分析し、生まれ持った体質や病気の診断を行う |
精度の高い検査結果を医師に提供するため、臨床検査技師は血液などの採取、検査、結果報告全ての工程を一貫して行います。検査について説明したり、相談に乗ったりすることも臨床検査技師の大切な役割です。
生理機能検査(生体検査)
生理機能検査(生体検査)とは、医療機器を使って患者の身体の表面や内部を調べる検査のことです。生体検査には、下記のようなものがあります。
検査名 | 検査の内容 |
---|---|
超音波(エコー)検査 | 超音波(エコー)を用いて体内の組織を画像化し、異常がないかを調べる |
心電図(循環器系)検査 | 心拍や心音を記録し、心臓や血管など全身の血液循環を調べる |
脳波検査 | 脳が出している電気信号を記録し、病気の診断を行う |
熱画像(サーモグラフィ)検査 | 皮膚の表面温度を測り、疾患や周辺部との温度差を調べる |
MRI検査 | 病的変化が起こっている箇所を見つけるため、磁気の力を用いて臓器や血管を撮影する |
眼底写真検査 | 瞳孔の奥にある眼底を観察し、目の病気を調べる |
呼吸機能検査 | 呼吸が上手くできているかを調べ、肺の病気の診断を行う |
聴力検査 | 高い音から低い音まで様々な音を聞いて、どれくらい聞こえているかを調べる |
味覚・嗅覚検査 | 味覚や嗅覚の感度を測定する |
臨床検査技師が行う検査結果に基づいて、医師は病気の診断を下したり治療方針を決定したりします。そのため、臨床検査技師は医療現場に欠かせない重要な存在です。
臨床検査技師の魅力
様々な検査を行い患者の病気を見つける臨床検査技師は、人の命を助けるやりがいのある仕事です。ここでは臨床検査技師の魅力について解説します。
人の命を救うことができる
臨床検査技師の仕事は、間接的に患者の命を救うことにつながっています。なぜなら、医師は臨床検査技師が行った検査データをもとに治療を行うからです。臨床検査技師の技術を活かして患者の病気を早期発見し、適切な医療につなげることができたときには、大きなやりがいと達成感を感じられるでしょう。
専門知識や技術を身に付けられる
臨床検査技師の検査内容は多岐にわたり、必要な知識や技術も膨大です。医療は進化し続けているため、常に学び続けなければいけません。しかし逆に考えれば、常にスキルアップし、成長していける仕事でもあります。検査のプロとして技術を極めることで周囲からの信頼も厚くなり、充実感ややりがいを得られるでしょう。
臨床検査技師に向いている人
「臨床検査技師の仕事に興味があるけど、自分には向いているの?」と気になっている学生さんもいるかと思います。ここでは、臨床検査技師と医療従事者を対象とした「将来の臨床検査技師像を見据えたアンケート」調査をもとに、臨床検査技師に向いている人の特徴を解説していきます。
アンケート内で、将来の検査技師像について自由回答で設問を行った結果、「医療現場で必要とされる臨床検査技師」との回答が最多でした。他には「認定資格を含めた専門性の取得」「医師へ助言ができる臨床検査技師」「一つの部門の知識にとらわれないマルチな知識を有する臨床検査技師」「検査室の外で活躍できるための業務の拡大」などの回答が見られました。これらの結果から、臨床検査技師に向いている人の特徴として、下記の3つが挙げられます。
- 探求心がある人
- コミュニケーション能力がある人
- マルチタスクに抵抗がない人
どんな点が臨床検査技師に向いているのか、それぞれ詳しく解説します。
参考:将来の臨床検査技師像を見据えたアンケート
探究心がある人
臨床検査技師は非常に専門性の高い職種のため、常に向上心をもって新しい技術、知識を習得していく必要があります。そのため、生物や人体に興味があり、勉強し続けることを楽しめる人が臨床検査技師に向いているといえます。日々努力を欠かさずレベルアップしていくことで、医療分野で活躍し続けることができるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
臨床検査技師は、医師や看護師、患者などのたくさんの人と関わりながら仕事をします。医師や看護師と正確で円滑なコミュニケーションをとることは適切な医療につながりますし、患者の気持ちに寄り添うことは信頼関係に大きく影響します。そのため、周囲の人と正確に意思疎通ができるコミュニケーション能力のある人は臨床検査技師の適性があるといえるでしょう。
マルチタスクに抵抗がない人
マルチタスクに抵抗がない人も臨床検査技師に向いているでしょう。臨床検査技師の仕事は、検体の受付から検査の実施、分析、検査結果の報告までの全てを一人で行います。さらに業務の合間には患者の対応をしたり、医師、看護師と連携をとったりする必要もあります。このように複数の業務を同時にこなす必要があるため、何が起きても常に落ち着いて柔軟に業務をこなしていく能力が求められます。
臨床検査技師の就職先・活躍の場
臨床検査技師の就職先は、病院やクリニックだけではなく、他にも活躍の場は多岐にわたります。ここでは臨床検査技師の就職先や活躍の場について紹介します。
大学附属病院・総合病院
大学附属病院や総合病院など、規模の大きな病院では、たくさんの臨床検査技師が勤務しています。検査領域が細かく分けられているため、知識や技術を深く専門的に伸ばして働くことができます。
病院・クリニック
小規模な病院やクリニックも臨床検査技師の主な就職先の一つです。小さなクリニックでは臨床検査技師が少ないため、一人で複数の検査業務をこなします。
検査機関
臨床検査技師は、臨床検査センターや血液検査センターなどの検査機関で働くこともできます。検体検査を中心に行うため、検体検査の専門的技術や知識を向上させることが可能です。病院とは違い、患者と直接コミュニケーションをとったり、生体検査を行ったりする機会はほとんどありません。
研究機関
大学の研究室や研究所など、研究機関で働く場合もあります。医療系の研究職として研究・開発を行ったり学生に指導したりと業務は多岐にわたります。大学の研究室や研究所で働く場合は理系分野の博士号が必要です。
治験関連機関
CRO(医薬品開発業務受託機関)やSMO(治験施設支援機関)などの、治験関連機関も臨床検査技師が活躍できる場の一つです。治験関連機関で働く臨床検査技師は、検査技術だけでなく企業や医療機関のスタッフの間に入って調整したりサポートしたりするスキルも求められます。
医療機器メーカー
臨床検査技師は医療機器メーカーでも働くことができます。医療機器メーカーに勤務する臨床検査技師は主に「アプリケーションスペシャリスト」と呼ばれる営業サポートを担当し、医療機器の導入を検討している医療機関で自社製品の説明を行います。自社製品についての知識と顧客に分かりやすく説明するスキルが必要です。
臨床検査技師の将来性
働き方改革や物価の高騰、少子高齢化など、様々な環境が劇的に変化している現在。医療を取り巻く環境も日々変化していますが、現場を支える臨床検査技師の需要は今後も高まっていくと考えられます。その理由とともに、臨床検査技師の将来性について解説します。
高まる検査需要と医療技術の進歩
日本は2007年に超高齢社会に突入し、現在も高齢者人口は増え続けています。高齢者が増えることで医療を必要とする人も増加し、臨床検査技師の需要は今後も高くなると予想されます。また医療技術は日々進歩しており、より高度で精密な検査が求められるように。適切な医療を提供するためにも、専門的な検査技術や知識をもつ臨床検査技師の役割はこれからますます重要になっていくと考えられるでしょう。
検査機器の自動化とAIの活用
AI技術の発展に伴い、検査機器の自動化など、医療現場では様々な作業で機械化が進んでいます。少子高齢化に伴い、今後も労働人口が減少するため、人の手に代わる自動化や機械化はさらに進んでいくでしょう。そのため臨床検査技師の業務の中でも単純作業は、将来的に機械に代わる可能性も考えられます。しかし、高度な専門知識をベースとした判断力や観察力、患者一人ひとりに寄り添ったコミュニケーション能力など、人間にしかできない臨床検査技師の仕事が全くなくなってしまうということは考えられません。これからの医療現場では、人間とAIそれぞれが得意な業務を担いながら働くことが求められていくと考えられます。
臨床検査技師の給料・年収相場
これまで臨床検査技師になるために必要な資格や仕事内容、就職先について紹介してきました。次に臨床検査技師の給料や年収相場について紹介していきます。厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査の結果によると、臨床検査技師の平均年収は508.5万円でした。令和5年の給与所得者全体の平均年収は458万円なので、臨床検査技師の年収は平均より高いことが分かります。ただ、これはあくまで平均値で、勤務先や年齢によって平均年収は異なることに注意が必要です。一般的に臨床検査技師の給料は年齢とともに上がっていく傾向があります。一例として、年齢別に臨床検査技師の年収を下記の表にまとめました。
年齢 | 男性の平均年収 | 女性の平均年収 |
---|---|---|
20~24歳 | 約329.8万円 | 約317.1万円 |
25~29歳 | 約439.1万円 | 約403.3万円 |
30~34歳 | 約501.3万円 | 約443.2万円 |
35~39歳 | 約589.3万円 | 約482.4万円 |
40~44歳 | 約546.4万円 | 約491.9万円 |
45~49歳 | 約654.6万円 | 約548.9万円 |
50~54歳 | 約923.59万円 | 約587.2万円 |
55~59歳 | 約807.7万円 | 約659.4万円 |
臨床検査技師の年収は20代から少しずつ上がり続け、男女ともに50代でピークを迎えます。女性の平均年収が男性より低くなっているのは、体力のある男性の方がより施設の当直・オンコール対応している場合が多く、その分の夜勤手当が上乗せされていることが考えられます。また、女性の場合は産休・育休・時短勤務を利用する人が多く、平均年収に差が出ているようです。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査
参考:令和4年分 民間給与実態統計調査
臨床検査技師を目指す学校の選び方
医師の指示のもと、適切な医療を行うために必要な検査を行う臨床検査技師。病気の早期発見・治療に貢献するためやりがいが大きく、専門性が高いので活躍の場も広い職業です。医療現場に欠かせない臨床検査技師は、超高齢社会を迎えた日本では今後も需要が高まっていくでしょう。進路に関するお役立ち情報が豊富に掲載している「進路ナビ」では、臨床検査技師を目指せる大学や専門学校を紹介しています。しかし実際にどんなことを学べるのかは、各学校のカリキュラムを調べてみないと分かりません。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うと、各学校のパンフレットを取り寄せることが可能です。
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