ケアマネージャーとは、介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるようにサポートを行う人のことです。将来の進路を考えている学生さんの中には、ケアマネージャーの仕事に興味をもっている人もいるでしょう。この記事では、ケアマネージャーになる方法や必要資格、具体的な仕事内容、就職先などについて詳しく紹介します。ぜひ、今後の進路選びの参考にしてくださいね。
ケアマネージャーになる方法とは?
介護サービスを受ける人が適切な施設や支援につながれるようにサポートするケアマネージャー。介護保険と介護サービスに関する詳しい知識と、利用者の身体状態や生活環境などを見極めるスキルが必要な専門職です。
ケアマネージャーになるためには、年1回実施される「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネージャー試験)」に合格する必要があります。資格試験に合格した後は、実務研修終了後に各都道府県に登録することで、ケアマネージャーとして働くことができます。
受験資格について
以前は介護の実務経験があれば、保有資格に関係なく受験資格がありました。しかし2018年度の試験から受験資格の条件が厳しくなり、下記のいずれかを満たす人のみが対象になりました。
- 特定の国家資格を持っている人
- 相談援助業務に従事している人
各受験資格について、詳しく解説します。
特定の国家資格を持っている人
特定の国家資格とは、下記のとおりです。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士含む)、精神保健福祉士
上記いずれかの国家資格をもっており、これらの資格にもとづく実務経験が通算5年以上かつ、従業日数が900日以上であれば、ケアマネージャー試験の受験資格を得られます。
相談援助業務に従事している人
相談援助業務とは、下記の職業を指します。
- 生活相談員…介護福祉施設で利用者の相談に乗り、施設や関係者との調整を行う
- 支援相談員…施設の入所者本人や家族の相談対応を行う
- 相談支援専門員…障がい者の相談に応じ、必要な支援につなぐ
- 主任相談支援員…相談業務全般のマネジメントを行う
上記いずれかの職種に就き、通算して5年以上かつ、従業日数が900日以上行った経験があれば、ケアマネージャー試験の受験資格を得られます。
ケアマネージャー試験合格後にやること
ケアマネージャー試験に合格しただけでは、ケアマネージャーとして働くことはできません。
試験合格後は、下記の流れで手続きを行う必要があります。
- 「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネージャー試験)」に合格する
- 「介護支援専門員実務研修」を受講する
- 各都道府県の「介護支援専門員資格登録簿」へ登録申請する
- 各都道府県の「介護支援専門員証」へ交付申請する
- 「介護支援専門員証」が交付される
- ケアマネージャーとして働く
「介護支援専門員実務研修」は各都道府県で年に数回実施されています。研修内容は15日間の講習(87時間以上)+3日間の居宅介護支援事業所での実務の研修です。全ての日程に出席し、修了する必要があります。
研修修了後は3ヶ月以内に各都道府県に「介護支援専門員資格登録簿」への登録申請を行います。「介護支援専門員証」が交付されると、晴れてケアマネージャーとして働くことができます。
ケアマネージャーの仕事とは
ケアマネージャーという職業名は聞いたことがあるけど、具体的にどんな仕事をしているかまでは分からないという学生さんもいるでしょう。
ケアマネージャーとは、介護が必要な方やその家族の相談に応じ、必要な介護サービスを利用できるように支援する専門職です。利用者とサービス事業者をつなぐ存在として、重要な役割を担っています。ここでは、ケアマネージャーの仕事内容について詳しく見ていきましょう。
主な仕事内容
ケアマネージャーの主な仕事内容は下記の5つです。
- ケアプランの作成
- サービス事業者との調整
- 定期的なモニタリング
- 関係機関との連携
- 介護に関する情報提供
それぞれどんなことをするのか、具体的な業務内容を解説します。
ケアプランの作成
ケアプランとは、介護サービス計画のことを指し、利用者の介護度や生活環境と利用者が理想とする生活をすり合わせ、介護サービスの内容や利用頻度、料金を具体的にまとめた計画書のこと。ケアマネージャーは、利用者の状況に応じた介護サービスを受けられるようケアプランを作成します。ケアプラン作成後は利用者本人や家族、医療関係者、介護関係者と話し合い、必要があれば修正を行った後に正式決定します。利用者が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアプラン交付後も定期的な見直しが必要です。
サービス事業者との調整
介護サービス事業者と利用者の間に入り、問題なくサービスが提供されるよう連携や調整を図ることもケアマネージャーの重要な役割です。日ごろから介護サービス施設と連絡を取り、利用者の困りごとや悩み、体調面での不安などを事業所へ共有することで、スムーズかつ適切なサービスの提供につながります。ケアマネージャーは「縁の下の力持ち」として、利用者や家族と事業者の橋渡しを行い、継続的に支援します。
定期的なモニタリング
介護サービスがスタートしたら、ケアマネージャーは定期的に利用者の自宅に訪問し、提供している介護サービスが利用者に合っているかを確認します。利用者の健康状態や取り巻く環境は日々変化していくため、コンスタントな状況把握だけではなく、利用者本人や家族との話し合いが重要です。必要なサービス内容に変更があればケアプランを作成し直すこともあります。利用者が常に適切な介護サービスを受けられるよう、ケアマネージャーは臨機応変に対応します。
関係機関との連携
ケアマネージャーは利用者の健康状態を適切に把握し、必要に応じて病院などの関係機関と連携しながらサポートを行います。利用者が入院することになれば、入院時の様子や病状について情報収集を行ったり、退院前カンファレンスに参加して医師や看護師と意見交換をしたり、退院前訪問指導へ同行したりすることもケアマネージャーの重要な役割です。また退院後に利用者が安心して生活ができるよう、医療機関と連携しながらケアプランの調整も行います。
介護に関する情報提供
利用者や家族に向けて、介護に関する情報提供を行うのもケアマネージャーの大切な仕事です。介護サービスには訪問介護やデイサービスなど様々な形態があり、利用者が自力で自分に合った施設を探すことは困難です。そのためケアマネージャーは、利用者や家族に向けて多種多様な介護サービスについての情報提供を行い、必要なサービスを受けられるようサポートしていきます。適切な情報提供ができるよう、ケアマネージャーは地域の介護サービスについて把握し、各事業所の特徴や強みを知っておく必要があります。
ケアマネージャーの就職先・活躍の場
ケアマネージャーの就職先や活躍の場にはどのようなものがあるのでしょうか?下記の3つを紹介します。
- 居宅介護支援事業所
- 入居介護施設
- 市区町村役所
それぞれの職場の特徴と仕事内容について解説します。
居宅介護支援事業所
ケアマネージャーの就職先の中でも多いのが居宅介護支援事業所です。
居宅介護支援事業所は、在宅で介護を受ける利用者が適切な介護サービスを受けられるようケアプランを作成したり、サービス事業者との連携・調整を行ったりする事業所です。居宅介護支援事業所で働くケアマネージャーは「居宅ケアマネ」と呼ばれ、利用者が必要な在宅介護サービスを受けられるようマネジメントします。
入居介護施設
入居介護施設とは、介護認定を受けた高齢者が入居して生活支援を受ける施設のことです。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護付有料老人ホームなど様々な種類があります。入居介護施設で活躍するケアマネージャーは「施設ケアマネ」と呼ばれ、入居している人のケアプランを作ることが主な仕事です。ケアマネージャーとしての仕事以外にも、介護や相談対応をしたり、夜勤に入ったりすることもあります。
市区町村
ケアマネージャーは公務員・準公務員として、市役所、区役所、町村役場などで働くこともできます。自治体で働くケアマネージャーは、社会福祉課、福祉保健課、地域保健課などに所属し、介護サービスの事業所や区民からの問い合わせ・相談などに対応し、書類作成を行います。役所で働きたい場合は、公務員試験を受験するか、各自治体が出している臨時職員・嘱託職員募集に応募すると良いでしょう。役所以外にも、各市区町村が運営している病院や施設、居宅介護支援事業所などでケアマネージャーを募集しているケースもあります。
ケアマネージャーに将来性はある?
学生さんの中には、ケアマネージャーの仕事に将来性があるのか不安に感じている人もいるかもしれません。
超高齢社会を迎えた日本は、2023年に総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が29.1%と過去最高を更新しました。さらに国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇し続けると予想されています。高齢者が増えることで介護を必要とする人も増加するため、ケアマネージャーの需要は今後も高くなると考えられます。またケアマネージャーの仕事は、利用者に寄り添う力や臨機応変に対応していくスキルなど、人間にしかできない業務が多くを占めています。そのため将来的にAIに仕事を奪われる可能性は低いでしょう。
ケアマネージャーは、高齢化が進むこれからの日本社会に欠かせない重要な職業です。
ケアマネージャーの給料や年収相場について
これまでは、ケアマネージャーになる方法や仕事内容、就職先や将来性について解説してきました。ここでは、ケアマネージャーの給料について解説していきます。
厚生労働省が公表している令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、ケアマネージャーの平均年収は約434万(平均月収×12ヶ月)でした。同調査によると、介護職員の平均年収は約381万円、生活相談員・支援相談員の平均年収は約410万円なので、ケアマネージャーの給与は介護業界の中では比較的高い傾向にあります。
ケアマネージャーは、居宅ケアマネと施設ケアマネというように働く施設形態によっても年収に違いがあります。また経験を重ねて役職に就いたり、介護福祉士や社会福祉士の資格を取得したりすることで、年収アップを目指せるでしょう。高齢化が進むにつれ、要介護者は増加していくため、ケアマネージャーの人材不足を補うためにも処遇改善が進むことが期待されます。
参考:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果 | 厚生労働省老健局老人保健課
ケアマネージャーに向いている人
利用者とサービス事業者をつなぐ存在として、重要な役割を担っているケアマネージャー。そんなケアマネージャーに向いている人の特徴として、下記の4点が挙げられます。
- コミュニケーションを大切にできる
- 優先順位を見極めて臨機応変に対応できる
- 行動力がある
- 忍耐力がある
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
コミュニケーションを大切にできる
人とのコミュニケーションを大切にできる人はケアマネージャーに向いているでしょう。ケアマネージャーは利用者本人をはじめ、その家族、事業所の職員、医療関係者など様々な人とコミュニケーションを取りながら仕事をします。おしゃべりが得意なだけではなく、何気ない会話から利用者が抱えている問題点を読み取ったり、自分が必要な情報を引き出したりできるコミュニケーション力が必要です。利用者の課題を解決するために、関連機関との交渉力を求められる場面もあるでしょう。コミュニケーション能力が高い人は、ケアマネージャーとしての素質があるといえます。
優先順位を見極めて臨機応変に対応できる
物事の優先順位を見極めて、臨機応変に対応できる力もケアマネージャーには必要です。ケアマネージャーの役割は、利用者が求める生活を送れるように支援すること。サポートを行う中では様々な問題が発生するため、優先順位を決めて要領よく解決していかなければなりません。自分が今優先するべきことは何なのか、利用者が抱える問題の中で最優先に解決するべきことは何かを見極め、臨機応変に対応することで、利用者からの信頼にもつながるでしょう。
行動力がある
行動力がある人もケアマネージャーに向いているといえます。ケアマネージャーは、利用者の自宅へ訪問したり、役所へ書類を申請したりと行動範囲の広い仕事です。報告書や電話連絡だけで状況を把握しようとすると、詳しい情報が得られない可能性があり、適切な支援につなぐことが困難になります。自ら足を運んで利用者やその家族の様子を見て話を聞くことで、利用者本人を主体としたケアプランが作成できます。利用者のことを第一に考え、フットワーク軽く動ける人はケアマネージャーとして活躍できるでしょう。
忍耐力がある
ケアマネージャーには忍耐力も必須です。ケアマネージャーは利用者から過度な要求をされたり、家族から理不尽なクレームを入れられたりすることも少なくありません。時には利用者家族と事業所との板挟みになってしまうこともあるでしょう。このような場面では、じっくりと時間をかけて説明したり、話し合ったりする必要があります。難しい問題に直面したときにも辛抱強く課題に向き合うことで、利用者や事業所からの信頼感を得られ、頼りにされるケアマネージャーになれるでしょう。
ケアマネージャーになるための学校の選び方
介護が必要な人が必要な支援を受けられるようサポートするケアマネージャー。高齢化が進む日本では、介護支援のスペシャリストとして今後も高いニーズが予想される職業です。
「進路ナビ」では、ケアマネージャーを目指せる大学や専門学校を紹介しています。しかし各学校で具体的にどんなことを学べるのかは、カリキュラムを詳しく調べる必要があります。「進路ナビ」の学校検索機能を使って資料請求すると、各校のパンフレットを取り寄せることが可能です。
また「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという方も、ぜひご活用ください。
進路ナビでは、ケアマネージャーを目指せる大学や専門学校を紹介しています。
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