電車運転士になるには?必要資格や仕事内容、進路の選び方を解説

普通列車や特急列車、モノレールなど様々な列車の運転を行う「電車運転士」。いつの時代も子どもたちの憧れの仕事として、トップの人気を誇っている職業です。
2022年に第一生命保険株式会社が全国の小学生・中学生・高校生計3,000人を対象に行った、第 34 回「大人になったらなりたいもの」のアンケート調査結果によると、「会社員としてどんな仕事がしてみたいか」の項目で、「鉄道」は小学生男子では1位、小学生女子では3位、中学生男子では4位、高校生男子では5位と、トップ5にランクインしました。特に男の子から人気があり、小さい頃から「電車の運転手さんになりたい」と夢を抱いている子どもが多いようです。
将来の進路を考える学生さんの中にも、子どもの頃から電車や鉄道が好きで、電車運転士の仕事に興味を持っているという人も多いのではないでしょうか。電車運転士になるためには、高校卒業後にどんな学校へ進学すれば良いのか、どんな資格が必要なのか気になりますよね。この記事では電車運転士を目指す学生さんに向けて、電車運転士になる方法や必要資格、進路の選び方、給料、やりがいなどを詳しく紹介します。ぜひ、将来の進路選びの参考にしてみてくださいね。
参考:第34回「大人になったらなりたいもの」アンケート結果

電車運転士(鉄道運転士)になるには?

電車運転士とは、決められた運転時刻に合わせて列車を運転し、旅客や貨物を安全に目的地まで輸送する仕事です。たくさんの人の命を預かる仕事なので高い運転技術が求められるのはもちろん、ダイヤ通りに駅に到着する正確さも必要になります。
電車運転士になるためには、「動力車操縦者運転免許」と呼ばれる国家資格を取得する必要があります。

動力車操縦者運転免許の取得が必須

動力車操縦者運転免許は、電車運転士に必須の国家資格です。動力車操縦者運転免許の受験資格は、「20歳以上であること」と「心身の障がいがないこと」の2つです。動力車操縦者運転免許の試験には、身体検査、適性検査、筆記試験、実技試験があります。それぞれどんな試験を行うのか、下記の表にまとめました。

身体検査・視力・聴力が既定のレベルを満たしているか
・動力車の運転に支障を及ぼす病気や障がいがないか
・動力車の運転に支障を及ぼす中毒がないか
適性検査・クレペリン検査(簡単な足し算の結果から能力や性格を測るテスト)
・反応速度検査(反射神経を測定するテスト)
筆記試験・動力車の操縦に関する法令に関する科目
・動力車の構造および機能に関する科目
実技試験・速度観測
・距離目測
・制動機(ブレーキ)操作
・制動機(ブレーキ)以外の機器の取り扱い
・定時運転、非常の場合の措置

身体検査、適性検査、筆記試験に合格すると、実技試験を受験することができます。
動力車操縦者運転免許の国家試験は20歳以上の健康な人であれば誰でも受験することができます。しかし、実技試験は動力車操縦者養成所で専門的なトレーニングを受けていないと合格することは困難です。そのため、まずは鉄道会社に就職して経験を積み、専門技術・知識を身につけてから受験する必要があります。

進路ナビでは、進路にまつわる相談に進路アドバイザーがお答えします。「東海道新幹線の運転士にはどのようにすればなれるのでしょうか?」「蒸気機関車の運転士になるための資格はありますか?」など、電車運転士にまつわる相談と回答も掲載しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

東海道新幹線の運転士にはどのようにすればなれるのでしょうか。

蒸気機関車の運転士になるための資格はありますか?

電車運転士になるまでの流れ

電車運転士になるためには、以下の2つの方法があります。

  • 鉄道会社に就職する
  • 独立行政法人鉄道職員総合研修センターの採用試験を受けて合格する

それぞれについて、詳しく紹介していきます。

鉄道会社に就職する

最も一般的な方法が鉄道会社に就職後に電車運転士の養成機関に入所するというものです。養成機関では、電車の運転に関する知識や技術を学びます。
高校卒業後から電車運転士になるまでの一般的な流れを下記の図にしてみました。


電車運転士になるには、高校や大学、専門学校を卒業後に鉄道会社に入社するルートが一般的です。鉄道会社に入社後2〜3年は駅員として窓口業務ホームでの案内業務、清掃業務などを2〜3年行います。その後、社内試験を受け、車掌としての車掌業務を2〜3年経験します。駅員も車掌も電車運転士と連携を取りながら仕事をするため、電車運転士を目指すためには両方の業務を経験しておくことが必要です。
駅員業務と車掌業務を経験した後は社内で行われる電車運転士になるための選抜試験を受験します。ここを突破できれば、独立行政法人鉄道職員総合研修センターの動力車操縦者養成所に入り、8~9ヶ月の訓練を受講。訓練が終われば動力車操縦者運転免許試験を受験します。晴れて試験に合格すれば、運転士見習いとして運転技能の指導を受け、電車運転士として働くことができます。
このように電車運転士になるには鉄道会社入社後から様々な経験を積み、訓練を受け、試験に合格しないといけません。トータルで7年ほどかかるでしょう。

独立行政法人鉄道職員総合研修センターの採用試験を受けて合格する

もう一つは独立行政法人鉄道職員総合研修センターで採用試験を受けて合格する方法です。養成機関で約9ヶ月の訓練を受け、訓練を修了すると、鉄道会社への就職が内定になります。

どちらの道に進むにしても、体力や健康、運転に対する適性などが求められます。また、鉄道会社によっては、大学卒業以上を条件としている場合もあります。

電車運転士の免許の種類

動力車操縦者運転免許は運転する動力車の種類で分類されており、全部で下記の12種あります。

  • 蒸気機関車運転免許(甲種/乙種)
  • 電気車運転免許(甲種=電気機関車と電車/乙種)
  • 内燃車運転免許(甲種=内燃機関車と内燃動車/乙種)
  • 新幹線電気車運転免許
  • 磁気誘導式電気車運転免許(第一種/第二種)
  • 磁気誘導式内燃車運転免許(第一種/第二種)
  • 無軌条電車運転免許

種類に応じて運転できる列車の範囲が異なります。
上記の中で、電車運転士に必要な免許は「甲種電気車運転免許」。電車や貨物列車・客車列車をけん引する電気機関車、モノレールなどを運転できる免許で、各種免許の中で最も取得者が多くなっています。

電車運転士の仕事内容

電車運転士に興味があるけど、具体的な仕事内容までは知らないという学生さんもいるかもしれませんね。
電車運転士の仕事内容は、大きく「準備・点検」「運転」「事故対応」の3つに分けられます。
1つめの「準備・点検」は、電車を運転する前に行う業務。所属する電車区・運転区で点呼を受け、キーと時刻表を受け取ります。担当車両のブレーキやパンタグラフ(集電装置)などの点検を行い、車庫から電車を出して駅のホームまで移動させます。
2つめの「運転」は、列車の運転業務。ダイヤに沿って車両を駅から駅まで運転し、乗客を安全かつ正確に輸送します。運転する車両数、車両の型、混み具合、天候などによってブレーキや加速の具合が変わるので、運転技術と共に臨機応変さも大切です。十分に配慮しながら安全運転に努めます。
万が一事故が起きた際は3つめの「事故対応」を行います。被害を最小限に抑えるため、迅速かつ適切な措置をとることが必要です。車掌と連携しながら乗客の安全を守ります。
このように、電車運転士は電車の運転以外にも様々な業務を行っています。

電車運転士の給料・年収相場

将来の職業を考える際には給料事情も気になりますよね。厚生労働省が公表している令和4年賃金構造基本統計調査によると、電車運転士の平均年収は約590万円となっています。令和4年の給与所得者全体の平均年収は約458万円だったので、電車運転士の給料は平均より高い傾向にあることが分かります。基本的に鉄道会社は勤続年数と役職に応じて給料が上がっていくので、長く働き続けることで高年収を期待することができるでしょう。
また鉄道は、人々が便利に生活するために欠かせない交通インフラの一つ。そのため将来的に仕事がなくなる心配もありません。電車運転士は、将来にわたって安定的な収入を得られる職業だと言えるでしょう。
参考:電車運転士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
参考:令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁

電車運転士のやりがい・魅力

電車運転士は多くの人々の命を預かる責任重大な仕事ですが、その分やりがいや魅力も大きい職業です。ここでは電車運転士のやりがい・魅力を紹介します。

自分で電車を運転できる

電車運転士を目指す人の中には、子どもの頃から鉄道が好きだったり運転士に憧れていたりする人も多くいます。そんな人にとっては「自分で電車を運転できること」自体が大きな魅力になるでしょう。鉄道会社によっては多種多様な車種を運転することができるため、電車が好きな人にとっては、車種ごとの特徴を覚えたり運転技術を身につけたりする作業も面白く感じられるはず。運行中にお子さんが電車に手を振ってくれるのを見て、子どもの頃の自分を重ね合わせ、夢を叶えられた喜びや感慨深さを覚えることもあるかもしれませんね。電車が好きで、電車を運転することが面白いと感じられる人は、電車運転士として大きなやりがいを感じながら生き生きと働くことができるでしょう。

達成感・充実感を味わえる

電車運転士は大きな達成感・充実感を味わえる仕事です。朝のラッシュ時など、一日の中でも大勢のお客様を乗せて運転する際は、特に大きな緊張感があります。しかし、そんな中でも時間通りに運行できたときやダイヤが乱れても無事に運行できた際には、大きな達成感・充実感を得られるでしょう。お客様を目的地まで安全かつ正確に運ぶためには、仕事に対する向上心や車掌との連携が大切です。そのため電車運転士には、スムーズな運行をするため常に技術や知識を高める努力を行い、周囲と協力して働く姿勢が求められます。

社会に貢献できる

電車は公共交通機関として社会になくてはならないものです。「たくさんの人々の何事もない日常、当たり前の日常を支えている」という事実は電車運転士として働く上で大きなやりがいになるでしょう。将来は何か人の役に立つ仕事がしたいと考えている人にもぴったりです。また電車は公共性が高いため、民間企業の中でも比較的安定しています。将来性があり、安心して働き続けられるという点も電車運転士の仕事の魅力の一つです。

電車運転士はトラブル対応力とストレス耐性が必要

電車運転士の仕事には大きなやりがいや魅力がある一方、電車運転士ならではの大変さも存在します。ここでは電車運転士を目指す上で知っておきたい大変なことを紹介します。

予期せぬトラブルが起こる

電車運転士の仕事では、地震や大雪、車両故障、人身事故、線路内への立ち入りなど様々な予期せぬトラブルが起こります。トラブル時の対処については訓練で繰り返し学びますが、現場の状況は毎回異なります。そのため、被害を最小限に抑えるには運転士のとっさの判断にかかっていると言っても過言ではありません。電車運転士には、予期せぬトラブルが起こっても落ち着いて冷静な判断を下し、適切に対応できるスキルが求められます。

秒刻みで仕事をしないといけない

電車には必ずダイヤが設定されているため、電車運転士の仕事は秒刻みです。数秒遅れるだけで前後の電車に影響を与えてしまうので、常に秒単位で時間を気にしながら仕事をしなければなりません。日本の電車は定時運行が当たり前で、遅延が発生すると運転士に対して怒りをぶつける人もいます。完璧な運行を維持するプレッシャーの中で働かないといけないため、電車運転士として働くためにはストレスへの耐性や適切な自己管理スキルも必要です。

電車運転士の活躍の場

電車運転士は鉄道会社に所属して勤務することが一般的ですが、電車運転士としての経験・キャリアを活かして活躍の場を広げることも可能です。ここでは電車運転士の活躍の場を紹介します。

鉄道会社

電車運転士のキャリアプランとしては、鉄道会社で勤務を続けることが一般的です。鉄道会社では電車運転士を続けるだけでなく、他のキャリアステップを辿ることも可能。
鉄道会社では車両の整備を行う「整備担当」や、ダイヤ改正・人事・教育などを行う「本社勤務」、乗務経験を活かせる「駅長」など様々なポストが用意されています。また、年功序列で給料が上がっていくため、長く勤務することで自然と年収もアップしていくでしょう。
転職する場合はJR各社、私鉄、第三セクター鉄道など他の鉄道会社に入り、これまでの経験やスキルを活かすこともできます。

鉄道関連の企業

電車運転士は鉄道関連の企業で、経験を活かして働くことも可能です。例えば、鉄道関連のコンサルティング会社では、鉄道の運行や安全に関するコンサルティングを行っています。電車運転士としての経験があれば、現場のことが理解できているのでより有益なコンサルティングができるでしょう。また鉄道の設備の設計や開発を行う鉄道関連の設備メーカーでも、電車運転士としての経験を活かすことができます。
電車運転士だけでなく鉄道関連の仕事全般に興味がある場合は、鉄道関連の企業をキャリアプランの選択肢として考えてみても良いかもしれません。

進路ナビで電車運転士になるための情報収集を!

電車運転士に興味のある学生さんに向けて、電車運転士になる方法や必要資格、仕事内容を紹介してきました。電車運転士は人々の日常を支える、大きなやりがいのある仕事です。現代社会に欠かせない交通インフラなので、将来性もあり、安定して働くことができます。
電車運転士になるには、鉄道会社に入社して国家資格を取得する必要があります。高卒で就職することも可能ですが、鉄道系の専門学校へ進学することで、鉄道について詳しく学ぶことができるでしょう。大学に進学して幅広い知識を身につけたあと、鉄道会社に就職する方法もあります。

「進路ナビ」では電車運転士を目指せる大学や専門学校を紹介しています。しかし、実際にどんなことを学べるかは各校の専攻やカリキュラムを調べてみないと分かりません。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うと、各校の詳しいパンフレットを取り寄せることが可能です。
他にも「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという人も是非ご活用ください。
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