作業療法士になるには?作業療法士の仕事について徹底解説!

作業療法士は、病気やケガでリハビリテーションが必要な人に対し、日常生活で必要な動作の回復を図るために支援をする仕事です。リハビリテーション職のひとつで、医師の指示のもと患者さんの治療や指導、援助をします。将来、人の健康に関わる仕事に就きたいと考えている方は、作業療法士の道を選ぶ方法もあります。本記事では、実際に作業療法士を目指す方や気になっている方へ向けて、通った方がいい学校・学部についてもまとめましたので参考にしてみてください。

作業療法士になるには・必要な資格

作業療法士を目指すなら国家資格を取得する必要があります。ここでは、作業療法士になるために必要な資格や進学先、試験の難易度などについて紹介します。

作業療法士に必要な資格

作業療法士になるには、作業療法士の国家試験に合格しなければなりません。試験は年に1回2月下旬に実施されています。試験の出題内容は、解剖学や生理学などの一般問題、運動学や臨床心理学などの実地問題です。
また、作業療法士の国家試験には受験資格もあります。指定の大学や専門学校を卒業することが条件です。

作業療法士の養成校とは

指定の大学や専門学校(養成校)とは、作業療法士を養成するためのカリキュラムを提供している学校のことです。作業療法士になるには、高校卒業後に作業療法士を養成する4年制大学や3年制短期大学、専門学校などに通います。

作業療法士の養成校を卒業するまでにかかる費用は、私立学校で大体500万円から750万円が目安です。ただし、卒業までの年数や地域によっても変わってきます。また、国立大学に通う場合は4年間で大体250万円くらいです。

試験の難易度

作業療法士国家試験の合格率は、毎年70~80%台で推移しています。国家資格の中では難易度は高くなく、養成学校でしっかり学び、試験対策をすれば合格できる可能性が十分にあります。

一方で、受験資格となっている養成学校でのカリキュラムについては、2020年の改正により履修が必要な単位数が増えました。試験自体の難易度は変わらないものの、受験に必要な単位数が増えたことで以前より合格までのハードルが高くなったといえます。

作業療法士の仕事内容

作業療法士の仕事内容は、主に基本動作訓練、応用的動作訓練、メンタルケアの3つです。ここでは、それぞれの仕事内容を詳しく解説します。仕事内容だけではなく、作業療法士としてのやりがいも紹介するので、参考にしてみてください。

基本動作訓練

基本動作訓練とは、生活する上で基本となる動作のリハビリテーションを行うことです。人は普段、寝返りをしたり、起き上がったり、歩いたりといった動作をします。基本動作訓練では、そのような動作に関わる運動機能や感覚機能、心肺機能のほか、精神や認知などの心の機能を回復するためのリハビリをします。身体的な動作の回復については理学療法士も行いますが、作業療法士は日常の作業や社会に復帰するまでのサポートもしていきます。

病気やケガにより日常的な動作が困難になった方のサポートをすることは、作業療法士にとってやりがいのある仕事です。患者さんの気持ちに寄り添いながら、少しずつ日常に必要な機能を回復する手助けができます。

応用的動作訓練

応用動作査訓練とは、日常生活に欠かせない食事やトイレ、家事、入浴といった作業が行えるようになるようリハビリテーションを行うことです。応用的動作訓練では動作を補助するための自助具を使用して、食事動作や調理動作のリハビリをします。日常の動作を自分で行えるようになることで、退院後の生活がしやすくなります。さらに、トイレや入浴、着替えなどのほか、身だしなみを整えたり、趣味や娯楽などを楽しんだりするために必要な動作もできるようになるためのリハビリでもあります。

作業療法士は日常生活に関わる作業の回復を通じて、患者さんの生活の質を向上させることができます。応用動作訓練を行うことで、患者さんが日常生活を取り戻すだけでなく、生きがいを見つけるきっかけをつくることも可能です。

メンタルケア

作業療法士は身体の機能回復だけでなく、患者さんが社会復帰するために必要なメンタルケアを行う役割も担います。患者さんの中には長い入院、闘病生活により、社会とのつながりが途絶えてしまう方も少なくありません。そのため、作業療法士は適切なメンタルケアを行い、患者さんが再び仕事や学校、地域コミュニティに復帰するための手助けをします。例えば、就労に必要なスキルを身に付けるためのサポートをしたり、趣味や娯楽を楽しむための援助をしたりすることも作業療法士の仕事です。

このように、作業療法士は患者さんの生活を支える重要な役割を担っています。身体の回復だけでなくメンタルケアまで行うことで、患者さんの生活をより快適にすることが可能です。

作業療法士の就職先・活躍の場

作業療法士は病院やリハビリ施設のほか、障がい者雇用支援や教育の分野でも活躍しています。作業療法士がそれぞれの現場でどのように活躍しているのか紹介します。

病院

作業療法士の就職先として最も多いのが病院です。作業療法士の約半数が病院で活躍しています。作業療法士が多く活躍しているのは、一般病院やクリニック、精神病院などです。一般病院では主に病気の回復期において、患者さんが退院後に社会復帰できるようにリハビリを行います。病床数が少ないクリニックでは、入院患者さんだけでなく外来の患者さんのリハビリを行うこともあります。また、精神病院では、総合失調症やうつ病などを抱えている患者さんに対して支援をするのが主な仕事です。

介護施設

介護施設で活躍する作業療法士も少なくありません。特に、近年では高齢化に伴い、介護施設でリハビリを行う作業療法士が多くなっています。介護施設の中では、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどが、作業療法士の主な就職先です。介護老人保健施設では、機能訓練やのほか、日常生活動作訓練介護士に対して介助法の指導を行うこともあります。特別養護老人ホームでは、利用者の生活全般を支援することが作業療法士の仕事です。また、デイサービスセンターでは、食事や掃除など日常生活に必要な動作のリハビリを行います。

障がい者雇用支援

障がい者施設などで、障がい者の雇用支援に携わる作業療法士もいます。利用者が就労を維持しやすいように、さまざまなサポートを行うことが作業療法士の仕事です。例えば、障がい者が就労する上での困りごとを解決したり、働きやすい環境を整えたりします。リハビリを通じて、できる仕事を増やせることもあります。

教育の分野(特別支援学校など)

特別支援学校や児童発達支援センター、障がい児入所施設などで、障がいのある子供たちの支援をする仕事に携わる作業療法士もいます。教育の分野では、障がいのある子供のご家族に対してアドバイスをしたり、講習会を開いたりすることもあります。周囲の人たちに、障がいのある子供に対する理解を深めてもらうことも作業療法士の大事な仕事です。

作業療法士の将来性について

将来、作業療法士になることを考えている方にとって、作業療法士の将来性は気になるポイントでしょう。作業療法士の数は年々増えているものの、職場によっては人手不足となっており、依然として需要が高い状態が続いています。
例えば、病院やクリニックなどの医療機関へ就職する人は多くいますが、介護や福祉施設で働く作業療法士は、人員が不足しています。超高齢化社会を迎えるにあたり、介護や福祉施設における作業療法士の需要は今後増えていく可能性が高いでしょう。

活躍できる作業療法士になるには、求められる知識やスキルを身に付けることが重要です。例えば、介護施設では高齢者の介助や認知症に対する知識が豊富な作業療法士が求められています。また、身体的な訓練だけでなく、精神面も含めたリハビリを行える作業療法士も需要が高まっています。今後は、医師や看護師、介護士などと連携しながら、患者さんのケアを総合的に行っていける作業療法士が求められるでしょう。

作業療法士の給料・年収相場

厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士や理学療法士などのリハビリ従事者の平均月給は30万円でした。また、平均年間賞与は69.8万円となっています。この調査データから作業療法士などのリハビリ従事者の平均年収は429万円ということがわかります。日本の全職種の月給は平均が31.1万円となっているため、作業療法士の給料は平均よりもやや低めであることがわかります。

また、男女別では、男性の平均月給は31.3万円、平均年間賞与は71.3万円、女性の平均月給は28.6万円、平均年間賞与は68.2万円でした。平均年収では、男性が446.9万円、女性が411.4万円となり、女性のほうがやや低い傾向となっています。

さらに、年齢別では、最も給料が低いのが20~24歳で平均月給は25.2万円、平均年間賞与は33万円、平均年収は335.4万円でした。一方、55~59歳が最も給料が高く、平均月給は38.8万円、平均年間賞与は104.4万円、平均年収は570万円となっています。

就労先の規模によっても給料は変わってきます。施設の規模が大きいほど給料は高く、1,000人以上の施設では平均月給が31.9万円、平均年間賞与が90万円、平均年収は472.8万円でした。

作業療法士に向いている人

作業療法士の仕事にあこがれているものの、そもそも自分は向いているのか気になっている方も多いのではないでしょうか。ここでは、作業療法士に向いている人はどんな人なのか紹介します。

コミュニケーション能力が高い

作業療法士は患者さんとのコミュニケーションを通じて、患者さんが社会復帰できるように支援していく仕事です。患者さんの中にはご年配の方もいれば、小さな子供もいます。また、リハビリを受けることや今後の生活に対して不安を抱えている人も多くいます。性格やバックグランドも患者さんによってさまざまです。そのため、どんな人とでもうまくコミュニケーションが取れる人が向いているといえるでしょう。

他者に対して優しくできる

作業療法士のリハビリを受ける患者さんは、体が不自由な方や心に不調を抱える方です。患者さんの中には落ち込みやすかったり、リハビリに前向きに取り組めなかったりする方も少なくありません。そのため、作業療法士には患者さんの不安な気持ちに寄り添い、長期的にサポートしていく姿勢が求められます。たとえリハビリが順調に進まなくても、患者さんのペースに合わせて少しずつ取り組んでいくことが大切です。

新しいものを取り入れることが多い

作業療法士が行うリハビリは、患者さんが日常の動作を取り戻せるようにすることが目的です。そのため、リハビリを行う中でゲームや工作、手芸など、患者さんが積極的に取り組める活動を取り入れることもあります。どんな活動が患者さんの社会復帰をする手助けになるのか、柔軟に考えることが大切です。患者さんがリハビリを通じて楽しいと思えることが見つけられたら、生活の質を向上させることもできます。気持ちも前向きになり、社会復帰するためのきっかけにもなるでしょう。

観察力や洞察力がある

観察力や洞察力も作業療法士に求められるスキルです。患者さんの体や心の状態は毎日同じではありません。順調に進んでいたリハビリも、体や心の不調によりうまく進まない日もあるでしょう。患者さんによっては、作業療法士に自分の状態をうまく伝えられないこともあります。そのため、作業療法士は患者さんの様子をよく観察し、体や心の変化に気づけることが大切です。患者さんの状態を見極めた上でリハビリの内容を調整したり、いつもよりもゆっくり進めたりするなどの柔軟性も求められます。

根気強さ・忍耐力がある

作業療法士が行うリハビリは、常に順調に進むとは限りません。リハビリが予定通りに進まず、患者さんが焦ったり落ち込んだりすることもあるでしょう。しかし、患者さんが社会復帰できるようにするためには、忍耐強く支援を続けていく必要があります。そのため、作業療法士には根気強さと忍耐力も求められます。

このように、作業療法士にはさまざまなスキルが求められます。ただし、現時点では向いていないように思えても、今後作業療法士になるためのカリキュラムを受ける中で、徐々に身に付いていくスキルも多くあります。そのため、自分の成長性も見据えた上で、作業療法士への道を検討することが大切です。

作業療法士を目指す学校の選び方

作業療法士を目指すなら、どのような学校・学科へ進学すれば良いのでしょうか。ここでは、作業療法士を目指す方に向けて、学校選びのポイントを紹介します。

資格取得が可能である

作業療法士になるには国家資格が必要になるため、受験資格を満たせる学校を選ぶ必要があります。高校卒業後、作業療法士を養成する大学や専門学校へ入学するのが一般的です。4年制大学、3年制短大、専門学校の3つの種類から選べます。

カリキュラムが充実している

カリキュラムの内容は進学する学校によって異なります。4年制大学では、作業療法士に求められる専門知識や技術のほか、一般教養や最新の研究などを学ぶことが可能です。3年制短大でも一般教養がカリキュラムに含まれますが、4年制大学よりも期間が短い分、スケジュールがややタイトになります。また、専門学校は4年制か3年制を選択でき、大学や短大よりも実践的な知識や技術を学べることが特徴です。

資格の合格率が高い

作業療法士になるには国家試験に合格する必要があるため、各学校の作業療法士国家試験の合格率は見ておきたいポイントです。作業療法士の養成校では、ホームページやパンフレットで作業療法士国家資格の合格率を公表しているところも多くあります。学校を選ぶ際は、合格率の高いところを選ぶ方法もあります。

作業療法以外に学べる科目がある

作業療法以外に学べる科目が充実している学校もあります。特に、4年制大学や3年制短大では、一般教養や研究内容を学べることが特徴です。将来どんな作業療法士になりたいかを考えて、カリキュラムや作業療法以外の分野にも着目してみましょう。

まとめ

作業療法士になるには、高校卒業後に作業療法士を養成する4年制大学や3年制短大、専門学校に入学して国家試験の受験資格を取得しなければなりません。さらに、国家試験に合格すれば、作業療法士の国家資格を取得できます。国家資格取得後は、病院やクリニック、介護施設などに就職し、多くの方々を支援します。高齢化に伴い、今後さらなる活躍が期待される職種といえます。

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作業療法士を目指せる大学・短大一覧

作業療法士を目指せる専門学校一覧