高校生やその親御さんの中には、「理学療法士（PT）と作業療法士（OT）では何が違うの？」と疑問に思う方も多いでしょう。どちらもリハビリテーションの専門職ですが、 目的やアプローチ方法、対象となる患者さん、活躍する場所 などに明確な違いがあります。
この記事では、厚生労働省や日本理学療法士協会・日本作業療法士協会といった公式情報をもとに、理学療法士（PT：Physical Therapist）と作業療法士（OT：Occupational Therapist）の違いを詳しく解説します。
理学療法士（PT）と作業療法士（OT）の違いを一目でチェック
まずは理学療法士（PT）と作業療法士（OT）の違いを一覧で比較してみましょう。両者とも国家資格が必要な医療系専門職ですが、リハビリの目的や手法、関わる分野に違いがあります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 理学療法士（PT） | 作業療法士（OT） |
|---|---|---|
| 主な目的 | 病気・ケガ・高齢などで低下した基本的な身体機能（座る・立つ・歩く等）の回復・維持と障害悪化の予防。運動機能を高め、自立した生活を送れるよう支援する | 日常生活動作や応用的動作能力、社会適応能力の維持・改善。身体や認知機能・精神面に障害のある人が日常・社会生活に復帰できるよう支援する |
| 仕事内容・手法 | 運動療法（筋力強化訓練や歩行訓練など）や物理療法（温熱・電気刺激など）によって身体機能の回復訓練を行う。関節可動域の拡大や痛みの軽減など、直接的に運動機能へアプローチするリハビリが中心 | 食事・着替え・家事など日常動作の訓練や、手芸・工作など「作業」を用いたリハビリを行う。記憶力など認知機能の訓練や精神面のサポートも含め、生活行為全般を改善するリハビリが中心 |
| 主な対象者 | 脳卒中や骨折などで身体に障害がある人、高齢による筋力低下や関節障害がある人。痛みや麻痺、歩行困難など「基本動作」に支障がある患者が中心 | 身体障害に加え、認知症やうつ病などの精神障害、発達障害のある子ども、高次脳機能障害のある人など幅広い。日常生活に支障をきたしている全ての年代（子供〜高齢者）が対象 |
| 活躍の場 | 病院（急性期病棟・回復期リハ病棟など）、クリニック、介護老人保健施設、デイサービス、訪問リハビリテーションなど医療・介護分野が中心。近年はスポーツチームや地域の健康増進施設、企業の健康管理部門などにも活躍の場が拡大 | 総合病院やリハビリセンターに加え、精神科病院や障害者支援施設、特別支援学校、介護老人保健施設、地域のデイサービス、就労支援施設など多岐にわたる。医療・福祉・教育・職業分野まで幅広い現場でリハビリを提供 |
それでは、職種ごとに詳しく見ていきましょう。
理学療法士（PT）とは？
理学療法士（Physical Therapist： PT）は、ケガ・病気・加齢などによって身体に障害を負った人、あるいは今後障害が発生する恐れのある人に対し、基本的な動作能力の回復や維持をサポートするリハビリの専門職です。具体的には、座る・立つ・歩くといった日常生活の基本動作ができるようにすることを目指します。理学療法士自身が医学的・社会的視点から一人ひとりの身体能力や生活環境を評価し、その人に合った目標とリハビリ計画を立てて支援します。
理学療法士（PT）は一言でいうと「身体を動かす専門家」です。関節の可動域を広げる、筋力を強化する、麻痺した部分の機能回復を促す、痛みを和らげる、といった身体機能そのものに直接働きかける治療を得意としています。こうしたアプローチによって基本動作能力を高め、最終的には患者さんが自立した日常生活を送れるように支援することが理学療法士（PT）の役割です。
理学療法士（PT）の主なリハビリ方法（手法）
理学療法士（PT）が用いるリハビリ手法の中心は運動療法と物理療法です。
- 運動療法：治療体操や筋力トレーニング、ストレッチ、歩行練習など、身体を動かすことで機能回復を図る方法です。麻痺した手足を動かす訓練、ベッド上での起き上がり動作の練習、平行棒を使った歩行訓練など、患者さんの状態に合わせた運動プログラムを行います。
- 物理療法：温熱や電気刺激、水浴、光線など物理的なエネルギーを利用した治療法です。温熱パックで筋肉のこわばりを緩和したり、低周波電気刺激で痛みの軽減や筋力維持を図ったりします。また、牽引療法や水中運動なども物理療法に含まれます。
これらに加えて、関節の可動域訓練（硬くなった関節をほぐす運動）やバランス訓練、呼吸訓練など、患者さんの必要に応じた専門的な身体機能訓練を行うのも理学療法士（PT）の重要な仕事です。例えば、歩行能力の改善が目標であれば歩行補助具を使った歩行練習を集中的に行うなど、基本動作そのものを反復練習する「動作訓練」も行います。
理学療法士（PT）の活躍の場
理学療法士（PT）は主に医療・介護分野で広く活躍しています。具体的な就職先や職場の例としては、以下のようなものがあります。
- 病院・クリニック：総合病院のリハビリテーション科、整形外科病院、リハビリ専門病院、クリニック（診療所）など。急性期から回復期、維持期まで幅広い病期の患者にリハビリを提供します。特に脳卒中や骨折後のリハビリ、術後リハビリなどで理学療法士（PT）がチーム医療の一員として活動します。
- 介護関連施設：介護老人保健施設（老健）や介護医療院、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなど高齢者向け施設。高齢者の介護予防や生活動作の維持向上を目的にリハビリを行います。
- 訪問リハビリテーション：利用者の自宅に訪問してリハビリを提供する仕事です。在宅生活を送る高齢者や障害者に対し、自宅の環境に合わせた動作訓練や住宅改修のアドバイスなどを行います。介護保険や医療保険のサービスとして提供されます。
- スポーツ分野：プロスポーツチームのトレーナーや地域スポーツ施設のリハビリスタッフとして、アスリートのケガのリハビリやコンディショニング指導を行う理学療法士（PT）も増えています。スポーツ整形領域では、理学療法士（PT）が選手のリハビリ計画を立て復帰をサポートします。
- 企業・産業分野：最近では企業の健康管理部門や産業医科大学関連のリハビリ研究所など、働く人の健康増進や職場復帰支援に理学療法士（PT）が関わるケースもあります。職場での腰痛予防指導や従業員のフィットネス指導など、予防的リハビリの分野にも活躍の場が広がっています。
作業療法士（OT）とは？
作業療法士（Occupational Therapist： OT）は、心身に障害がある人が日常生活を再び営めるよう支援するリハビリ専門職です。理学療法士（PT）が基本的な身体機能の回復を担うのに対し、作業療法士（OT）は応用的な動作能力（食事・排泄・着替え・家事など）や社会適応能力（学校や職場への復帰、人との交流など）に焦点を当てたリハビリを担当します。
作業療法士（OT）は日常生活で行う様々な「作業（Activity）」を治療手段として用いるのが特徴です。「作業」とは、本人にとって目的や価値のある生活行為全般を指し、例えば食事動作、整容（身だしなみ）、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流などが含まれます。作業療法士（OT）は、そうした日々の生活行為が障害によって難しくなった人に対し、それらを再び「できるようになる」ための訓練や支援を行う専門職です。
具体的には、身体機能面だけでなく精神面にも目を向けてリハビリを行う点が作業療法士（OT）の役割の大きな特徴です。
例えば
- 病気やケガで身体が不自由になった人には、食事や入浴、着替えなど日常生活動作（ADL）の訓練を行います。必要に応じて福祉用具（箸やスプーンの自助具、手すり等）の導入支援もします。
- 認知症の高齢者に対しては、料理や買い物など日常動作の練習を通じて認知機能の維持・向上を図ります。記憶力や注意力を刺激するゲームや手工芸などを取り入れることもあります。
- うつ病や統合失調症など精神疾患のある方には、生活リズムの確立や社会参加に向けたトレーニングを行います。趣味活動やグループ活動への参加を促し、自己表現や対人関係のリハビリも担います。
- 発達障害の子どもには、遊びや学習活動を通じて発達支援を行います。感覚統合療法という遊具などを使い感覚刺激を与える手法や、学校生活に適応するための動作練習なども行います。
作業療法士（OT）の主なリハビリ方法（手法）
作業療法士（OT）は、名前の通り様々な「作業」（活動）を治療手段として用います。
- 日常生活動作（ADL）の訓練：食事動作、更衣動作、整容（洗面・歯磨き）、トイレ動作、入浴動作など、生活に欠かせない動きを繰り返し練習します。例えば食事動作では、実際に食器を使って食べる練習をするほか、麻痺がある場合は利き手を変える練習なども行います。
- 手工芸や趣味活動を用いた訓練：編み物・刺しゅう・革細工・陶芸・絵画などの手工芸、園芸、音楽演奏、ゲームなど、本人が興味を持てる活動をリハビリに取り入れます。楽しみながら手先の精密さや注意持続力、記憶力の向上を図れます。「作業療法」の語源通り、手芸や工作などの作業を行わせること自体が治療になるという考え方です。
- 認知機能訓練：パズル、計算問題、買い物の練習、日記を書くなど、頭を使う課題に取り組んでもらい、記憶力・注意力・判断力などを鍛えます。高次脳機能障害（例：脳卒中後遺症で記憶障害が残った場合など）のリハビリでは、問題解決課題やパソコンを使ったトレーニングも活用します。
- 社会適応訓練：地域への外出練習、公共交通機関の利用練習、模擬的な買い物や就労訓練なども行います。精神障害領域ではデイケアでの集団活動を通じ、対人コミュニケーションの練習や就労準備訓練を実施することも多いです。
作業療法ではこのようにその人にとって意味のある活動を繰り返すことで、心身機能の回復と「できること」の獲得を目指します。
作業療法士（OT）の活躍の場
作業療法士（OT）の活躍の場は非常に幅広く、医療・福祉・教育・地域など多岐にわたります。主な就職先・フィールドとしては、
- 病院（一般病院・リハビリ専門病院）：脳卒中や整形外科疾患のリハビリテーション病棟、回復期リハビリ病棟などで理学療法士（PT）と協働しつつ、ADL訓練や高次脳機能訓練を担当します。精神科病院では、精神科デイケアや作業療法室で患者さんの社会復帰支援を行います。
- 介護老人保健施設・介護医療院：入所者の身の回り動作の維持向上やレクリエーション活動の企画を担当します。認知症の方の残存能力を活かすケアや、在宅復帰に向けた訓練を行います。
- 障害者支援施設：身体障害者更生施設や障害者デイサービスセンターなどで、障害のある方の日常生活活動を支援します。また、地域活動支援センター等で創作的活動や生産活動（軽作業）を通じたリハビリを提供する作業療法士（OT）もいます。
- 小児領域（発達障害分野）：児童発達支援センターや肢体不自由児施設、特別支援学校などで、発達障害や肢体不自由のある子どもの発達支援を行います。遊びを通したリハビリや学習動作の訓練、保護者への支援が中心です。
- 福祉・行政機関：保健所や地域包括支援センター、障害者職業センターなど公的機関で相談員的な立場で働く作業療法士（OT）もいます。地域リハビリテーション活動支援や就労支援など、地域住民の生活を支える役割です。
- 訪問リハビリテーション：理学療法士（PT）と同様に、利用者の自宅で日常生活動作の訓練や住宅改修助言などを行います。在宅で趣味活動を再開する支援や家族指導も作業療法士（OT）ならではの視点で実施します。
国家資格と試験の違い
理学療法士（PT）・作業療法士（OT）になるには、ともに国家資格を取得する必要があります。ここでは資格取得までの流れや国家試験について、両者の違いがあるのか見てみましょう。
養成校と受験資格の違い
理学療法士（PT）も作業療法士（OT）も、厚生労働省指定の養成校で所定のカリキュラムを修了することが国家試験の受験資格となります。養成校には3年制の専門学校・短期大学や4年制の大学などがあり、どちらの職種も解剖学・生理学などの基礎医学から専門領域の知識・技術まで幅広く学びます。基本的な流れに大きな違いはありませんが、専門科目には次のような特徴があります。
- 理学療法士（PT）養成課程では、運動学や生体力学、運動療法学、物理療法学など身体の構造と機能回復に関する科目が充実しています。実習では整形外科領域や神経疾患領域でのリハビリ評価・訓練を中心に経験します。
- 作業療法士（OT）養成課程では、上記に加えて精神医学や心理学、作業療法技法学（手工芸やレクリエーション等）、発達障害学など心理社会的アプローチに関する科目が多い傾向にあります。実習も身体障害領域だけでなく精神科病院や小児施設での経験が求められることがあります。
養成校卒業時に国家試験の受験資格を得て、年に1回行われる国家試験に臨みます。近年は理学療法士養成校の数が非常に増え、全国で理学療法士（PT）は279校、作業療法士（OT）は205校（2024年時点）となります。自分に合った進学先を選び、十分な知識と技術を身につけてから国家試験合格を目指す点は両者共通です。
参照：
理学療法士（PT）養成校一覧｜公益社団法人 日本理学療法士協会
作業療法士（OT）養成校一覧｜一般社団法人 日本作業療法士協会
国家試験と合格率の違い
理学療法士（PT）・作業療法士（OT）の国家試験は毎年1回、例年2月下旬～3月上旬にかけて実施されます。試験形式は筆記試験のみで、全国の受験者が一斉に同じ問題に挑みます。試験内容は医学的基礎知識、リハビリテーション各論、専門領域別の知識、関連法規など多岐にわたり、合格には幅広い勉強が必要です。
例えば令和6年（2024年）に行われた第59回国家試験では、理学療法士（PT）が約89％、作業療法士（OT）が約84％の合格率でした。毎年若干の上下はありますが、理学療法士（PT）の方が作業療法士（OT）よりやや高めの合格率で推移する傾向があります。いずれにせよ8～9割程度の受験者が合格する試験ではありますが、これは裏を返せば残り1～2割程度は不合格となることを意味します。しっかりと学校で学び実力をつけておくことが重要です。
試験自体の難易度や内容に大きな差異はありません。理学療法士（PT）だから特別難しい、または作業療法士（OT）だから易しいということはなく、それぞれ専門分野の知識を問われる国家試験です。ただし問題の一部に重複があるため、理学療法士（PT）と作業療法士（OT）で共通の基礎問題も出題されます。そのため養成校在学中には他職種の領域も含めた包括的な知識習得が求められます。
なお、国家試験に合格すると厚生労働大臣から免許が交付され、「理学療法士（PT）」「作業療法士（OT）」を名乗ることができるようになります。
参考：国家試験合格者状況一覧
理学療法士（PT）・作業療法士（OT）の年収と将来性
ここでは、年収と将来性の切り口から、理学療法士（PT）と作業療法士（OT）を比較してみましょう。
年収の違い
気になる給料・年収ですが、理学療法士（PT）と作業療法士（OT）の間で大きな差はありません。厚生労働省の調査でも、両者の給与は一括りで集計されています。例えば令和4年度「介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、理学療法士（PT）・作業療法士（OT）の平均月給は約35万円というデータが出ています。ボーナス等を含めた平均年収に換算するとおよそ430万～440万円程度となり、医療系専門職種の中では看護師に次いで高い水準です。
別の統計（令和5年賃金構造基本統計調査）でも、理学療法士（PT）・作業療法士（OT）ともに平均年収は430万円前後と報告されています。内訳は平均月収が約30万円、年間賞与が70万円強という数字です。新人時の初任給はおおむね月給20～23万円程度からのスタートが多く、経験年数や勤務先の規模に応じて収入は上がっていきます。
なお、勤務先による違いもあります。一般に病院勤務の理学療法士（PT）・作業療法士（OT）は公務員や大病院では安定した収入が見込め、介護施設勤務の場合は介護職の処遇改善に伴い給与が手厚くなりつつあります。一方、非常勤（パート）や契約社員だと収入は低くなる傾向があります。とはいえ平均すれば両職種とも大きな差はなく、「リハビリ職」としてほぼ同水準と考えてよいでしょう。
参考：
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」（厚生労働省）より加工して作成
「令和５年賃金構造基本統計調査 結果の概況」（厚生労働省）より加工して作成
高齢化社会での需要とキャリアパス
日本は超高齢社会を迎えており、今後もリハビリ専門職の需要は高まると予想されています。実際、毎年1万人前後の理学療法士（PT）が新たに誕生していますが（作業療法士（OT）も同様に多数が国家資格を取得しています）、それでもなお介護・医療現場で必要とされる人手は不足しています。
特に在宅医療や介護分野ではリハビリを必要とする高齢者が増えており、老人保健施設・通所リハ・訪問リハビリといった領域で理学療法士（PT）・作業療法士（OT）の求人は年々増加しています。
ただ一方で、「将来的に理学療法士（PT）が飽和するのでは」「作業療法士（OT）が余るのでは」といった声があるのも事実です。養成校の乱立で供給が増えたことが背景にありますが、実際にはリハビリを必要とする人（潜在的ニーズ）は非常に多く、まだまだセラピストは足りないとも言われます。
こうした中、キャリアパスの多様化も進んでいます。経験を積んだ後、専門分野で認定理学療法士（PT）・認定作業療法士などの資格を取得してスペシャリストになる道があります（例：スポーツ専門理学療法士（PT）、摂食嚥下領域の作業療法士（OT）など）。また、管理職としてリハビリ部門のマネジメントに携わったり、教育者として後進の指導に当たったりするケースもあります。大学院に進学して研究者になる道や、起業して地域リハビリテーション事業を立ち上げる人も出てきています。
特に近年注目されるのは、地域リハビリテーションや予防分野での活躍です。介護予防事業で高齢者に運動指導を行ったり、自治体の健康教室で講師を務めたりといった活動は、理学療法士（PT）・作業療法士（OT）ならではの専門知識を活かせる場です。小児や精神科領域では、福祉や教育との連携が求められるなど、従来の医療の枠を超えて活躍できるフィールドが広がっています。
総じて、理学療法士（PT）・作業療法士（OT）ともに高齢化社会を支える上で将来性の高い職業であると言えるでしょう。
理学療法士（PT）と作業療法士（OT）、どちらを選ぶ？
「理学療法士（PT）と作業療法士（OT）、自分にはどちらが向いているのだろう？」と迷う高校生も少なくありません。それぞれ魅力的な職業ですが、興味関心や適性によって向き不向きがあるのも事実です。最後に、職業選択のポイントや進路選択のアドバイスをまとめます。
興味・適性別の適している職業
- 身体の機能回復に強い関心があるなら理学療法士（PT）：スポーツや運動が好きで、自分も体を動かしながら患者さんをサポートしたい人、人体の構造や筋力トレーニングに興味がある人は理学療法士（PT）に適性が高いでしょう。リハビリの中でも歩行訓練や筋力増強訓練といったダイナミックな運動系リハビリが得意なのが理学療法士（PT）です。例えば「将来アスリートのリハビリに関わりたい」「整形外科分野に興味がある」という場合は理学療法士（PT）の道がマッチしやすいです。
- 人の生活を支えることに喜びを感じるなら作業療法士（OT）：工作や創作活動が好き、人の話をじっくり聞くのが得意、福祉や心理にも関心がある、といった人は作業療法士（OT）に向いているかもしれません。作業療法士（OT）は日常生活の作業を支援するプロであり、リハビリ対象は身体面だけでなく精神面にも及びます。「患者さんの心のケアも含めて寄り添いたい」「子どもの発達支援や高齢者の認知症ケアに興味がある」といった想いがあるなら作業療法士（OT）の道が適しているでしょう。
- 対人援助が好きかどうか：理学療法士（PT）・作業療法士（OT）いずれも患者さんとのコミュニケーションは大切ですが、特に作業療法士（OT）は長期にわたり生活全般に関わる支援を行うため、相手に寄り添うコミュニケーション力や忍耐強さが求められます。一方理学療法士（PT）は運動指導の場面が多く、明るく前向きに励ませる人や、トレーナー気質でモチベートできる人に向いています。
- クリエイティブな発想があるか：作業療法士（OT）はリハビリ方法が多岐にわたるため、患者さんに合わせて作業プログラムを工夫する創造性が求められます。「この人にはどんな活動がリハビリになるか？」を考える力です。一方、理学療法士（PT）はエビデンスに基づく定石的な訓練も多く、探究心や分析力が重要になります。自分の得意分野はどちらか考えてみましょう。
進路選択のアドバイス
- 実際に見学や体験をしてみる: 「百聞は一見にしかず」です。興味がある方は、近隣の病院や施設で理学療法士（PT）・作業療法士（OT）の働く様子を見学させてもらったり、大学のオープンキャンパスで模擬授業や説明を受けたりしてみるとよいでしょう。例えばリハビリ病院の見学会では、理学療法士（PT）が患者さんと歩行訓練をしている場面や、作業療法士（OT）が作業療法室で手工芸を指導している場面を見ることができます。自分の目で職場の雰囲気を感じることが大切です。
- 学校のカリキュラムを比較する: 大学や専門学校のパンフレットを取り寄せて、理学療法士（PT）養成課程・作業療法士（OT）養成課程の授業科目や実習内容を見比べてみてください。そこから「自分はどちらの勉強に興味を持てそうか」考えてみるのも有効です。解剖学や運動学にワクワクするなら理学療法士（PT）向き、心理学や福祉に関する科目にも惹かれるなら作業療法士（OT）向き、といった判断材料になります。
- 将来像をイメージする: 自分が将来どんなフィールドで活躍したいか想像してみてください。スポーツ分野や整形外科領域で活躍したいなら理学療法士（PT）の資格が武器になりますし、地域福祉や精神科領域で支援職に就きたいなら作業療法士（OT）の資格が強みになります。もちろん資格を取った後に分野変更も可能ですが、現時点で描く理想像に近い道を選ぶことでモチベーション高く学べるでしょう。
- どちらか決めきれない場合: どうしても一方に決められない場合は、両方を養成する大学に進学して在学中に適性を見極める方法もあります。大学によって、1年次は共通科目を学び、2年次以降に理学療法学専攻か作業療法学専攻か選択できる場合もあります。また、理学療法士（PT）の資格を取った後に作業療法士（OT）の学校に再入学して二資格を持つ人もいますが、学習負担が大きいためレアケースです。できれば最初の進路でどちらかに絞るのが望ましいでしょう。
理学療法士（PT）と作業療法士（OT）の違いと選び方
理学療法士（PT）と作業療法士（OT）は、どちらもリハビリの専門職ですが、理学療法士（PT）は「身体機能の回復」、作業療法士（OT）は「日常生活や社会適応の支援」に重点を置いています。理学療法士（PT）は運動療法や物理療法を用い、歩行や筋力回復をサポートし、病院やスポーツ分野で活躍します。一方、作業療法士（OT）は日常生活動作や精神的サポートを行い、福祉施設や精神科などで活動します。
どちらも国家資格が必要で、年収や将来性に大きな差はありません。「運動機能の回復に興味があるなら理学療法士（PT）」、「生活サポートや心のケアに関心があるなら作業療法士（OT）」がおすすめです。進路を決める際は、病院見学やオープンキャンパスに参加し、実際の現場を見て判断するとよいでしょう。
