「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(24終)求人票の見方指導」筆者・小林英明

高校から「求人票の見方」の講演依頼をいただくことがある。
数年前は3年生進級の前後から遅い場合は求人票公開直前もあったが、
近年は2年生の2学期半ばの依頼もある。2年生後半から
3年生用求人票(まだ「前年求人票」とは言えない)を利用した
企業研究を始めるのだろう。
年内入試をにらんで進学希望者の動き出しが早まり、
それに合わせるように就職指導も早まったようだ。
私が現役のころ、3年教室設置の求人票を2年教室に移動したのは2学期末だった。
それでも動き出しは早いほうだったが今ではそれが一般的になりつつあるのだろう。
求人票のデジタル化を利用していれば閲覧場所の準備やコピーの手間がないので、
それが有効な指導であるかどうかは別にして、
3年生の閲覧開始と同時に2年生にも閲覧させることさえ可能だ。
高校生就活日程に対してもさまざまな意見が聞かれる昨今、
求人票の見方に限らず2年生向けの就活支援全体にも変化が起きるかもしれない。

さて、その求人票の見方指導であるが、
私は求人票の見方指導を三段階で考えている。
第一段階は「何がどこに書いてあるか」である。
普通に言えば「どこに何が書いてあるか」だが、
生徒はどこに自分の知りたいことは書いてあるか、から始める。
高校生はまず賃金、休日、仕事の内容に注目し、
次に選考方法や勤務地などが続くと言われる。
多くの高校生は求人票を前にすれば指導がなくても
これらの項目を自分で探して確認できる。しかし生徒は、
「自分が知りたい項目」だけに注目しがちで、
教員が「ここは見ておかなければ」と思う項目を見過ごすことが多い。
この段階で大切なのは生徒が気づきにくい重要な項目を指摘して、
目を向けさせることだ。 

求人票の見方第二段階は用語と記述内容の理解である。
求人票には高校生になじみのない言葉が多い。
例えば「賃金」の項目にある「固定残業代」「賃金形態」「賃金締切日」等は
高校生には分かりにくい。
「仕事の情報」には「派遣」「紹介予定派遣」「無期雇用派遣」「請負」等、
教員でさえ慣れないと正確な説明が難しい言葉が現れる。
求人票の読み解き指導をする場合は使用されている言葉の意味を
まず説明者自身が理解してから
生徒に分かりやすい言葉で解説することを心掛けたい。

ここまででも求人票の見方指導は成り立つが、できればもう一段階進めたい。
それは同一求人票内の別項目や同一企業の他職種求人票、
あるいは他社の求人票や求人票以外の情報を使った、
「求人票情報の比較、対比」である。
特に同一求人票内の項目間での内容の矛盾には注意が必要だ。
場合によっては求人者に説明を求めなければならない。
同業他社との比較も欠かせない。
賃金や休日数、離職率等の数値は高低を評価する前に
ある程度「相場」を知らねばならない。
また、職種名が同じでも仕事の内容かなり異なるケースもある。
このような「比較の着眼点」を生徒に示すことは
求人票の見方指導ではかなり重要なことである。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。