高校から面接指導を依頼されることがある。
近年の学校現場の多忙化もあって、
一対一が基本の模擬面接では教員の手が足らないことも多い。
また、生徒にとって練習相手が顔なじみの教員ばかりでは、
緊張感が無くなったり、奇妙な「照れ」が出たりして効果的な練習が難しいこともある。
そこで我々「外部講師」の出番となる。
初対面の講師による面接練習は生徒に緊張感を持たせる効果が期待できるし、
複数の講師を確保できれば効率的な練習ができる。しかし、講師の目から見ると、
確かに緊張感の中での「面接」を経験させることはできるが、
それ以上の成果が得られるかどうかには疑問が残ることもある。
だいぶ前のことだがこのような事例があった。
就職希望者の指導が多い私だが、この時はクラスに1名の講師が必要ということでの応援だった。
50分2コマで1クラス35名程度の模擬面接を行うというかなりタイトな時間設定である。
学校からは志望理由を答えさせて、という要望。
そこで挨拶もそこそこに生徒たちに
「面接練習では志望理由を質問するように頼まれていますが、皆さん準備できていますか」
と尋ねた。生徒たちはお互いに顔を見合わせている。
そこで「志望校を決めている人、大学は未定でも志望学部は決めた人は手を挙げて」
と言うと数人が自信なさげに手を挙げた。これでは志望理由を質問できない。
やむなく質問を「高校生活で努力したことや印象深い出来事」に変更した。
ところが問題はこれでは済まない。
生徒たちの回答は部活、文化祭、体育祭、委員会とさまざまではあるが、
そのほとんどが「思い出」と「感想」なのだ。
これでは自己の能力、特性等のアピールにつながる回答を組み立てることは難しい。
その時の彼らに必要だった指導は「模擬面接」ではなく、
高校時代の活動や経験をどのように話せば自分の能力、特性のアピールにつなげられるか、
を組み立てるための「カウンセリング」だったと思う。
面接選考では学校生活における経験や活動に関する質問が出ることはほぼ間違いない。
場合によってはその経験、活動が志望理由につながることもある。
したがって、どの話題をどのように展開して自分の能力や特性を
面接官にアピールするかを考えておくことは面接対策として大切だ。
そして面接試験では質問に対する第一声も大切だが、
その回答を聞いた試験官から出される「再質問」にどう対応するかはさらに重要だ。
この準備ができていると外部講師の面接練習が一層効果的に実施できる。
その準備指導に手が足らなければそこで講師の力を借りることもできる。
実際に他校の模擬面接でこのような準備をしていたと思われる生徒を担当したことがある。
20分程度の模擬面接だったがその生徒がアピールしたい点は十分に伝わってきた。
私にとっても勉強になり、楽しくもあった経験である。
【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。